糖尿病ケトアシドーシス
- 糖尿病ケトアシドーシスは糖尿病の急性合併症の一つで、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを自身で作ることのできない1型糖尿病の患者さんに主にみられます。インスリンの不足により生じたケトン体(脂肪の代謝の過程で発生する物質)が蓄積し、通常は弱アルカリ性で保たれている身体が酸性になってしまう「ケトアシドーシス」の状態を引き起こします。 1型糖尿病の発症時や、1型糖尿病の患者さんがなんらかの理由でインスリンの注射(またはインスリンポンプによる注入)を中断した場合に起こることが多いです。また最近では、1型糖尿病の患者さんでSGLT2阻害薬(尿中にブドウ糖を排出することで血糖値を下げる内服薬)を飲んでいる場合に、血糖値は高くないにもかかわらず体内でケトン体が作られケトアシドーシスを起こす「正常血糖ケトアシドーシス」という病態が報告されており、SGLT2阻害薬を服用している患者さんはそのことを念頭に置いておく必要があります。 2型糖尿病の患者さんでも、糖分を多く含む清涼飲料水を多飲すると「ペットボトル症候群」と呼ばれるケトアシドーシスを起こすことがあり注意が必要です。
糖尿病は「自覚症状に乏しい」「自分では気づきにくい」「長い期間放置していると合併症が怖い」といった比較的ゆったりとした経過をたどる印象があります。しかし、糖尿病ケトアシドーシスは緊急性が高く速やかに対応しなければ命に関わる危険があるため注意が必要です。 - 【症状・診断】
- 全身の倦怠感、口渇感、嘔吐・腹痛、意識障害(重篤な場合は昏睡)などの症状がみられます。ケトン体はフルーツのような香りがするため、吐いた息から甘い匂いがすることも特徴です。
糖尿病ケトアシドーシスに特徴的な症状が出ていることと、血液検査で体内にケトン体ができて身体が酸性になっていることを確認します - 【治療法】
- 不足したインスリンの補充を行ない、大量の点滴により脱水状態とアシドーシスを改善(酸性になった身体を弱アルカリ性にする)します。