特定非営利活動法人精神医療サポートセンター

発達障害、統合失調症、アルコール依存症、ベンゾジアゼピン系薬剤の依存等々、精神科医療についての困りごとに対応いたします。

日本の看護改革

2006年02月24日 | 看護論的経営論
 今、ニュースで取り沙汰されているJALの内紛問題をご存知だろうか。世間は、堀江被告のメール問題で国会の紛糾を面白そうに報道しているが、それよりも気になったのがこのJAL内紛問題だ。
 内容は、現場軽視とされる社長ら三名を役員4名が退任要求をしたというもの。経営刷新を求めた動きで、当初は数十人だった署名は数百名にまで及んだ。今現在の最新のニュースでは、一部副社長退任、社長は留任との方針とのこと。これは、見方によれば

※クーデータである

と評論する者もいる。このところJALは、安全管理などで色々と問題が続いた。その影響と原油高も加わり、経営不振を招いた。そこに今まで不満を抱いていた役員4名が一気に行動を起こしたと見られる。

 ここで、看護問題に絡めて考えてみたい。看護は、直接命を預かるという職業であるゆえストライキができない。そして、株式会社でないがゆえに、JAL内紛問題のような署名活動も難しい。個人病院となればなおのことである。日本には日本国憲法に定められている労働三権(団体交渉権・団体行動権・団結権)などがあり、組合活動も認められているが、それが活かされていないのが看護を含む、医療関係の組織である。もちろん、これらが単純に行動に移されては、安定した医療というものを受けることができない。私自身も、それを勧めるわけでもないしそのような容認するわけでもない。しかし、問題はそこには無く、組合がない個人病院も多い中、労働三権を有効活用している、もしくは理解している看護師がどれほどいるかということだ。中には、組合がある病院もあるが、医療関係の日本のその殆どは御用組合である。これは、私が体験した中からの感想も含むが、精神科医療を中心とした労働組合組織の存在も、果たして労働者側に立てているかも疑問を感じるのである。
 こういう状況の中、労働問題が起こっても“長い物には巻かれよ”とばかりにその組織の色に染まり、自分の看護観を低めてまで働いている人間が大半を占めるているのではないだろうか。主張しようものなら、色々な角度から見えない圧力がかかり、泣き寝入りをしてきた人間も少なからずいるだろう。それが、今の医療業界を大きく後退させているのだと私は思う。そこには、利権問題も深く関わっているだろうが、今はそれを探り・追求し・正すという段階ではない。
 看護師の環境がJALのように恵まれていないことはこれまでに述べたとおりだが、少なくともJAL内紛を起こした役員4名のように志の高い人間はどれほどいるものかと興味をもつ。医療全体もそうだが、看護そのものすらまとまりがない現状、少なくとも今よりもまとまった方向へ動こうとする者が現れないだろうか。 
 航空会社のように単純な組織構造ではないため、そう簡単にはいかないだろうが、何か行動を起こす時期に来ていると私は思う。
 最近ブログがはやり、個々の意見を述べるのもすばらしいことだが、残念ながらそこまでにとどまっている。いや、それ以上行動を起こせないのが看護業界なのだろう。
 私のように、精神科看護に関する本「精神科看護師、謀反」を出版しただけでも圧力がかかるのだから、本気で改革をするとなると命がけとなろう。
 日本の看護を改革するどころか、一つの病院すら変えることができないこの社会構造に対してどういう形でか“メス”を入れていく必要があると思っている。
 私は、今回の出版に当たり想定外の誤算はあったが、今回のは、メスを入れるための布石と位置づけたい。もちろん、それに続く今後のビジョンはこの頭の中にたんまりとある。

面倒くさいと思いますが、ブログランキングにクリック(3つあります)をお願いいたします。これは命がけです!!

最新の画像もっと見る

11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
視野が広いなぁ。 (どさんこママチ)
2006-02-25 01:49:22
看護のことを他の職種の事件に絡ませるなんて、言葉での表現では解りやすくて面白いです。私の職場でも、JAL4人衆のような勇気ある行動を起こせる人材が居ると良いのにな・・・。
返信する
Unknown (まーなん)
2006-02-25 04:59:07
私も今の会社で、組合役員を2年間務めましたが・・・

得たものはありませんでした。

組合員の不満・要求をどんなに組合へ上げても、結局何も変わらない。

組合員の意識が既にそんな状態で何年も続いていて、実際の現状もやはり立場の強いのは会社側。労使がなーなーの仲になってしまっているんです。

勿論、委員長だって本気で会社とぶち当たれば将来を棒に振ることは確実ですから・・・

名ばかりの組合。名ばかりの労連。

意味無いです。
返信する
Unknown (もっさん)
2006-02-25 19:09:22
>どさんこママチさん

 私のような直接経営に関わっていない人間が、とやかく言うことではないと言う人もいるかもしれませんが、病院経営のことは知ろうとする努力は必要だと思っております。

 目の前の看護行為のみが、看護だとして一生懸命関わっても限界がある。だからといって、単純に経営問題に目をむけるとすると、看護が十分にできない理由を経営側に転嫁してしまうことも十分ありえます。ですから、今の看護師全体ののインセンティブを考慮しますと、安易に経営問題を学べともいえない現実があります。本当に難しい課題です。
返信する
Unknown (もっさん)
2006-02-25 19:12:48
>まーなんさん

 組合がしっかりしていると思われている一般企業でさえ殆どがそうなのですから、病院関係ではなおの事ですよね。

 今回のJALの内紛は、裏が無いとすれば同じ信念を持った人間達が偶然にも揃ったといえるのではないでしょうか。

 結果はどうあれ、日本国内ではそう多くない動きに私は興味をそそられました。
返信する
改革 (ちる)
2006-02-26 10:17:13
先日のチャットではお話できて光栄でした。

また、ご一緒させてください。

うちの病院では経営者側と組合側とで現在、熾烈な戦いを繰り広げています。

とかく精神科病院では、サービス向上とはかけ離れた時代が長かったために、今現在も、当院経営者は金儲け主義にとらわれ、国の政策の抜け道から、ありえないような事を平気でやっています。私たちは、日々努力でより良い看護サービスを提供しようとしているわけですが、無謀な求職条件や無意味な人事考課によって、職員数は減少し、結果、サービスが低下しているのが現実なんです。個人病院においては労働組合の力は、たやすくねじ伏せられてしまうものなのでしょうか。。。。
返信する
Unknown (もっさん)
2006-02-26 11:19:40
>ちるさん

 個人病院においては、特別の条件が揃っていない限りなかなか難しいのではないでしょうか。交渉が盛り上がっても振り返ってみれば、結果はねじ伏せられていたというようなことが多いのではないでしょうか。せいぜい、自分達の雇用条件を改善するのが常ですからね。

 株式会社のように、退任を迫るというような大胆な行動は不可能ですから、労組でとはいいませんが、なにかそれに近い動きが日本のどこかで起こっても良いはずなんですよね。それを阻んでいるのが、複雑な病院の組織構造にあります。いうまでもなく、組織構造といっても、個人病院の組織図のような単純な話の次元でのことではありませんが。
返信する
Unknown (Oki)
2006-02-26 11:51:12
徒然思うに、経営側のやり方が気に入らないのであれば、自分が経営側に回るか、退職するかしかないのかな、と。

経営側に回るために、その病院にとって不可欠な人材になるための努力と、理想を実現している病院を探す努力。どちらの努力を選ぶのかは、その人の生き方が決める気がします。



若かりし頃、医師と衝突し悩んでいた時に、同じような過程を踏んできたレントゲン技師さんが、「結局、医者の治療方針が気に入らないのなら、医者になるしかないんだよな」と、もらした一言が印象的でした。

望む未来を手にする方法は、努力でしかないのかもしれませんね。

と・・・自分のブログ、ぜんぜん更新できていないのです。

思考が日常に抹殺され分散してるときって、ホントだめだぁ~と、最後は独り言でした。
返信する
Unknown (もっさん)
2006-02-26 13:09:26
そうでしょうねぇ。一般的には、経営側に回るか、退職という道が近道でしょうね。「変えたければ出世しろ」とか、よく言われたものです。しかし、それでは、今の悪い形のみが目立つ世襲制を絶つことができません。なにも、世襲そのものが悪いということではないということはご存知かと思いますが、少なくともそこで意見が活かされやすくなる環境を整えることが重要だと私は思います。

 oKiさんのおっしゃるように、“その病院にとって不可欠な人材になるための努力と理想を実現している病院を探す努力”この二択もあるとは思いますが、これでは、今までの考えとほとんど変わることなく、看護そのものを変えることは難しいと思います。病院にとって不可欠な人材を目指すことは、その本人の人間形成レベルを高めるという観点からも必要かと思いますが管理職に回った瞬間、その力を活かせないことに気づく。看護師として改革をしようとするならば、まずその道では、容易にはできません。また、理想を実現している病院を探す努力というのもかなり大事なことですが、そこを探して自己満足するだけに終わる結果が多いような気もいたします。そこに収まり、本来“自分は何をするべきか”というハングリー精神を忘れてしまうのではないでしょうか。

 

 これは私の持論ですが、医者の方針は、指示という面では絶対的ではありますが、看護サイドや他の医療チームが意見する権利があります。権利というよりも義務でしょう。そこで、医師が自分の方針を貫き通そうとするならするなりのエビデンスを示す必要がると思います。

ですが、okiさんのおっしゃるようなことが、医療の現実であることには変わりありませんよね。私も理想ばかりを追い求めるのではなく、現実を見据えてそこからじっくり行動することを忘れてはならないと思っております。

 深く考えさせられる貴重なご意見。感謝したします。
返信する
 (mai)
2006-02-26 16:56:19
コメント有難うございます。

是非 本 読ませてもらいます。



私はまだ全体像まで把握出来ていませんが



本当の事 現実を話すと 出る杭は打たれる

的な悪い風潮が日本にはしぶとくありますね。

けど 本当の事 現実は 事実であり 今は

色々と気苦労や怒りを感じることが多いと

思いますが いつかきっと結果として出ると

思いますよ。頑張ってください。



読ませていただきましたら 又コメント

します。
返信する
Unknown (もっさん)
2006-02-26 21:21:29
>maiさん

 コメントにまで気を使わせて申し訳ございません。また、本書を読んでくださるということで、大変感謝しております。感想を聞きたい反面、何を言われるかとビクビクする自分があり、第三者的に自分を見ると面白いとも感じており、複雑な心境です。

 たしかに、“出る杭は打たれる”という言葉は、耳にたこができるほど聞きました。そこで、昔色々と考えたことがありました。杭として出るのではなく、建物の骨組みのように中心の材料と化せばうたれることはないのではないかと。それが、今回の出版でもあったわけですが、実は誤算もあったわけです。そこは、自分の若さゆえ、とばかりも言ってられませんが、未熟な部分があったのも確かです。ですから、maiさんのおっしゃってくださるような、気苦労や怒りを乗り越える必要もあると思うのです。実際に、こうして応援してくださる方も多くいるのですから、これほど恵まれた環境はありません。これを期に、大きくなりたいと思っております。そして、日本の看護に貢献できればと思います。

 

 いつも肩に力が入らないように、プライベートでは色々なことをして頭をやわらげたいと思っています。幸い、家族と親友にも恵まれておりますし、人間的に色々と刺激し合い成長していきたいと思っております。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。