(写真は、「日本三大浮世絵コレクション」の
ポスター)
前回の六本木・森美術館に続いて、今回は
”美術館で浮世絵鑑賞”の2回目で、「日本
三大浮世絵コレクション(注)」です。
(The UKIYO-E 2020)
浮世絵の祖である菱川師宣から、歌麿、写楽、
北斎、広重など、浮世絵の歴史を網羅する
総勢60名もの絵師たちの代表作450点が
展示される史上初の贅沢な展覧会です!
(注)「三大浮世絵コレクション」とは下記の
①~③の浮世絵専門の美術館/財団を指します。
①「太田記念美術館」(東京・原宿)
:東邦生命会長の太田清藏が収集。
②「日本浮世絵博物館」(長野・松本)
:松本出身の豪商・酒井家が収集。
③「平木浮世絵財団」
:リッカーミシンの創業者・平木信二が収集
・設立。
今回の「三大浮世絵コレクション」の会場は、
上野公園の「東京都美術館」です。
(料金 1,600円 、期間:~9月22日、館内は写真
撮影禁止、音声ガイドには神田伯山も出演。)
(入場にはインターネットでの事前予約(日時指定
入館券)が必要です。)
JR上野駅で下車して、上野公園内の「東京都
美術館」へ向かいます。
今年3月、JR上野駅の「公園口」改札が、鶯谷
寄りに約100メートル移設され、写真の「公園口
・新駅舎」ビルが出来ました。
以前の公園口は、改札口前が車道で、上野公園
へのアクセスがスムーズではなく、歩きづらい
坂道を上っていました。
上の写真は、「新・公園口」改札の全体の外観
ですが、「旧・公園口」(赤色矢印の辺り)は、
閉鎖されました。
「新改札口」の目の前は、もう、上野公園内の東京
文化会館(コンサートホール)です。
「東京都美術館」に着きました。
未だ空きがあるのに窓口でチケットが買えない
のはおかしいと、係の人に文句を言っている
オジイサンがいました。
確かに、スマホやパソコンがない老人には厳しい
展覧会かもしれません。
しかし、この事前予約制のお陰で、会場は空いて
いて、自分のペースで見て回ることが出来ました。
当日券が窓口販売だったら、多分、炎天下で、
数時間待ちの行列だったでしょう。
それでは、皆さん、ご一緒に、浮世絵の発展の
歴史を順に勉強して参りましょう!
ps.
8/30(日)に、このブログの原稿を書きながら
テレビをみていたら、丁度、BSテレビ東京で、
半沢直樹で活躍中の市川猿之助の案内で
「浮世絵FIVE」をやっていました。
以下、そのTV解説も含めてご案内します。
浮世絵は、時代を追って鑑賞出来る様に、時代順
に展示されています。
「第1章 : 初期浮世絵」⇒菱川師宣、石川豊信等
浮世絵は、最初は、本の挿絵に使われたりした
そうですが、浮世絵のあまりの人気に、絵と
本文の割合が逆転してしまったそうです。
(菱川師宣「よしはらの躰 遊興の図」
:テレビ東京BSTV「浮世絵FIVE」から)
お大尽風の遊客を中心に、遊女や女芸者らが宴席
を囲んでいます。
”浮世絵の始祖”と言われた「菱川師宣」の作品
ですが、初期の浮世絵は、墨一色の版でした。
(菱川師宣「若衆と娘」」
:テレビ東京BSTV「浮世絵FIVE」から)
若い男女の逢引を描いたものですが、注文を
受けた分だけを、工房で部分的に彩色した
そうです。
(石川豊信「花下美人」
:展覧会のパンフレットから)
満開の桜に、恋心を歌にした短冊を結ぶ女性の
着物は、当時の人気役者の佐野川市松が
流行らせた「市松模様」です。
「第2章 : 錦絵の誕生」
⇒ 鈴木晴信、勝川春章 など
このころ、多色摺の版画である「錦絵」が発明
されて、女性の着物を鮮やかに表現出来る様に
なり、これにより「鈴木春信」らの名作の数々が
生まれました。
(鈴木晴信「風流うたひ八景 紅葉狩夕照」
:展覧会のパンフレットから)
この絵の元となる謡曲「紅葉狩」は、高貴な女性
に化けた鬼に、酒を飲まされ眠ってしまった
平維茂が、目覚めて鬼退治をする物語です。
この物語を、鈴木晴信は、平維茂を若衆に、
鬼を振り袖姿の若い女に置き換えて、
微笑ましい浮世絵に仕立て上げています。
(鈴木晴信「本柳屋お藤」
:テレビ東京BSTV「浮世絵FIVE」から)
鈴木晴信は、浅草寺の境内にあった店の看板娘の
お藤(上の絵の左端の女性)という実在する
素人の町娘を主役に描きました。
浮世絵FIVEの解説によると、これが、AKB48
等の現代の””会いに行けるアイドル”ブームの
始まりだそうです。
握手会ではありませんが、言われてみれば、確かに、会いに来たファンが列に並んでいます。
「第3章 : 美人画・役者絵の展開」
⇒ 喜多川歌麿、東洲斎写楽、歌川豊国 など
このあたりになると、おなじみの絵師が
登場します。
(東洲斎写楽「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」
:展覧会のパンフレットから)
世界的にも人気が高い写楽の大首絵です。
大首絵などの役者絵は、当時の有名な歌舞伎役者
の「ブロマイド」として人気がありました。
「半沢直樹」などのドラマに多く出演し、我々も
広く知る様になった各々の歌舞伎役者の「初代」
などが、この役者絵に描かれています!
(喜多川歌麿「歌撰恋之部 物思恋」
:特設ショップで購入したクリアファイルから)
女性の内面を追求した歌麿の傑作です。
過ぎた恋の思い出に耽る既婚女性を描いています。
紅雲母の柔らかな背景に、艶やかな黒髪が映え、
千鳥小紋の着物から覗く白い腕を美しく描いて
います。
浮世絵FIVEの解説によると、驚くことに、
髪の毛の生え際は、1ミリの幅の中に、
7本もの毛を彫ってあるそうです!
(歌川豊広「両画十二候 三月 三枚続」
:特設ショップで購入したクリアファイルから)
「第4章 : 多様化する表現」
⇒ 渓斎栄泉、歌川国安 など
錦絵は、それまでの大らかな雰囲気から、
より細密な描写となり、画面に表す情報量も
飛躍的に増えてゆきました。
(歌川国安「水滸伝豪傑百八人ノ内
浪裡白跳張順」
:特設ショップで購入したクリアファイルから)
国安は次の5章に出てくる国芳の兄弟子で、当時
大人気だった水滸伝の登場人物の格闘場面を
細密に描いています。
(渓斎栄泉「江戸不忍弁天ヨリ東叡山ヲ見ル図」
:展覧会のパンフレットから)
「第5章 : 自然描写と物語の世界」
⇒ 葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳など
(歌川広重「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」
:特設ショップで購入したクリアファイルから)
北斎の「富嶽三十六景」と広重の「東海道
五拾三次」は、単なる風景ではなく、雨、風、
雪といった気象が絵の大きな要素となり、
日本独特の美的感覚が生まれました。
(江戸時代の東海道と中山道の風景については、
ホームページ「中山道を歩く(完全踏破の
一人旅)」を見てね。)
(葛飾北斎「八方睨みの鳳凰」
:テレビ東京BSTV「浮世絵FIVE」から)
(八方睨みの鳳凰については、
「小布施(長野県)の岩松院」を見てね。)
(葛飾北斎「百物語 お岩さん」
:特設ショップで購入した
クリアファイルから)
(お岩さんについては、「甲州街道を歩く」の
「於岩(おいわ)稲荷田宮神社」を見てね。)
(葛飾北斎「富嶽三十六景 凱風快晴」
:展覧会のパンフレットから)
(葛飾北斎については、「すみだ北斎美術館」
を見てね。)
(歌川国芳「通俗水滸伝豪傑百八人之壱人
浪裡白跳張順」:特設ショップで購入した
クリアファイルから)
(歌川国芳「相馬の古内裏」
:テレビ東京BSTV「浮世絵FIVE」から)
歌川国芳は、現代の漫画やアニメの生みの親と
言われ、上の絵の様に、全く古さを感じさせ
ません。
展覧会を見終わって、お昼は、この美術館の
2階のMUSE(上野精養軒の支店)で
「ハヤシライス」(1,080円)を食べました。