(写真は、「明治錦絵」展のポスター)
江戸時代の浮世絵は、世界に誇る日本の美術だと
言われ、西洋の印象派の多くの画家たちが浮世絵
から多大な影響を受けました。
そして、江戸時代の終わりと共に、浮世絵/錦絵
(多色擦りの木版画)が終わってしまったと
思われていますが、実は、江戸時代が終わり
近代になっても、浮世絵は継続されました。
この展覧会では、明治時代に、世界へ発信した
近代の浮世絵を、その版元として送り出した
「大倉孫兵衛」と共に紹介しています。
「大倉孫兵衛」は、天保14年(1843年)、絵草紙
屋の跡取り息子として江戸の四谷に生まれました。
そして、江戸時代から明治時代になると、孫兵衛
は、横浜に進出して、アメリカを相手に雑貨の
輸出商を始めました。
その雑貨の輸出の中心となる商品が、「輸出用に
描かれた錦絵」でした!
孫兵衛は、この錦絵と陶磁器の輸出で得た莫大な
利益をもとに、ノリタケカンパニー、TOTO、
日本ガイシ等の現在の一流企業を創業しました。
また、孫兵衛の孫の大倉邦彦は、文化面での社会
貢献のために、東横線の駅前に「大倉山記念館」
を建てました。
この記念館建設の際、東急は、大倉氏に因んで、
東横線のこれまでの駅名の「太尾駅」を「大倉山
駅」に改めました。
(大倉山の観光スポットについては、「大倉山」
を見てね。)
東横線の横浜駅から3駅目の「馬車道」で下車
して、会場の「神奈川県立歴史博物館」へ
向かいます。
馬車道駅の改札は、写真の様に、高い天井に広い
フロアなので驚きます。
馬車道駅の出口の目の前は、写真の「旧横浜正金
銀行本店」(重要文化財)ですが、現在は
「神奈川県立歴史博物館」として使われて
います。
(馬車道の観光スポットについては、
「横浜・馬車道」を見てね。)
「明治錦絵×大正新版画ー世界が愛した近代の
木版画」展(900円)
(会期:~9月22日、特別展は全て撮影禁止)
今回の展覧会は、明治から大正にかけての浮世絵、
つまり近代の新木版画で、それを一堂に会する
という企画です。
以下の輸出用の錦絵は、花鳥や美人をモチーフに
していますが、絵の構成は、江戸時代の浮世絵の
構成を真似ただけの様な感じです。
全体的な印象としては、西洋人受けするように、
西洋人の好みを模索しながら、極度に華美な色彩
の錦絵になっていく傾向がある様に感じました。
従って、明治期としての独創性はほとんどなく、
また、絵師の名前もなくて、版元の大倉孫兵衛の
名前が記されているだけです。
しかし、彫りと擦りの技術は、江戸時代の高い
水準を引き継いでおり、爛熟した明治の最高品質
が感じられました。
(以下の写真は全て、特設ショップで購入した
本展覧会の図録(2,000円)から。)
以下の輸出用の錦絵は、明治初期の色彩豊かで
鮮やかな「美人画」です。
以下の輸出用の錦絵は、「役者絵」をモチーフ
にしたものですが、良質な錦絵が量産されて
いたことが伺えます。
以下は、輸出用ではなくて、急速に西洋化が進む
日本を誇示するために描かれた、明治初期の活気
を示す「開花絵」です。
以下は、輸出用ではなくて、明治時代の天皇制を
支えるために描かれた「歴史画」です。
また、大倉孫兵衛が創業したノリタケカンパニー
の前身の日本陶器合名会社の陶磁器の絵付け
にも下の写真の様に錦絵が活用されています。
お昼は、館内のカフェで、写真のビーフカレー(910円)を食べました。