山を歩いたりさまよったり

山歩きなど記憶から消え去らないように書き留めます。

小川洋子の作り方

2021-10-05 17:16:18 | 読書

小川洋子の作り方」田畑書店

2021.10.5

 小川洋子の作り方という本が出たと知ってすぐに注文、久しぶりにワクワクしながらの読書になった。
小川洋子はプチ赤毛のアンがそのまま大人になった人のように思う。明るい語り口、まっすぐな姿勢、明晰な分析、どれもまぶしい。東京FM、毎週日曜日に名作を紹介する番組を持っているが、本の読み方も素晴らしい。
小川洋子ファンになったのは、「博士の愛した数式」がきっかけだったかと思う。素数の深淵が小説になる、この不思議!なんということか。小説のきっかけをもらった藤原正彦という数学者との対談本も早速読んだ。「小川洋子・対話集」では小川洋子の不思議の秘密を垣間見た気持ちになって、河合隼雄との対談では小川洋子の誠実さに感心し、ますます好感度を上げた。何冊か小説を読んだ。ジョーシキ的な人間は一人も出てこない。読んだ範囲でフツーっぽい登場人物は「博士の愛した数式」に登場するが、読んだ範囲内ではほかには登場しない。ジョーシキ的な私には、多くの小説が良く理解できない。よくわからないなりに読み進めて、結局自分でどう消化したかわからないままに、なんとなく良かったなぁと思うのだ。小川洋子の作り方を読むと自分の読みの浅さが恥ずかしくなる。しかし、浅くても好きなんだからいいのじゃないかという思いもある。
 博士以外で、私が特に好きなのは
「猫を抱いて象と泳ぐ」「人質の朗読会」だ。
「猫を抱いて象と泳ぐ」主人公はチェスの天才だが、チェスというゲームの面白さが、伝わってくるのだ。博士では素数・数学の世界で発見された法則がいかに素晴らしくワクワクさせるものなのかを教えてくれたのと同様に。学生時代に何年間もこんな驚きを感じたことがなかったなぁとか思いつつ。小説の可能性というか偉大さを改めて感じさせてくれたうれしい小説だった。
「人質の朗読会」はテロ組織によって人質になった人が、一人ひとり語るという設定だ。出てくる話はどれも、ちょっと異常な話しで、感動的な話などは一個も出てこない。しかし、変な人がそこに確かに存在していた、登場する変な行動は妙に愛おしさを感じさせる。この人質たちが解放されたのかは書いてなかったと思うが、変な人・変な行動が、世の中から抹消されるかもしれないと考えざるを得ない状況で読み終えた時、人が消える、消されることの哀しさと嫌悪感が残のだ。
 前の土曜日に女優?の押切もえがこの本の書評を朝日新聞に載っていた。押切もえの文章は「解説」ではなく、小川洋子へのラブレターそのものだった。ラブレターの書評は爽やかでいいなぁ、これから押切の書評は注目しようとか考えた次第。
 以上のようなことを書き残す意味はあるのか?意味なんかないなぁと思っていたら、押切もえの文章に出合って、まあ取り合えず書いておこうかとupする次第だ。

小川洋子、ノーベル賞受賞して欲しいなぁ。


タンボ平

2021-10-05 15:38:51 | 山歩き

2021.9.28 #568 タンボ平(立山室堂→一の越→黒部平→ロープウエイと電気バスで室堂に戻る)

 いつも見る立山の裏側の黒部湖側に回るコース。山の会のYさんから、紅葉が見事だから是非にとリクエストがあったが、私は行ったことがないので100名山を登った橋本さんに案内を頼んだ。富山県では小学生の立山登山が恒例になっていたこともあり、富山県民にとって立山は特別な存在だ。石川県民にとっての白山より少しテンションが高い。富山県人は白山に足が向かない。この傾向はものすごく強く、笑ってしまう。(石川県民も白山愛は深いが、富山には負ける。)私は「お金がかかる」という理由だけで立山ではなく白山派だ。花の宝庫で、里から見る山の形の美しいのは白山で、山の雄大さを感じるという点では断然立山、紅葉の美しさも、立山の方に軍配が上がるだろう。

ふもとの立山駅からロープウエイとバスで室堂へ、室堂から立山にトンネルでバスとロープウエイを乗り継いで黒部湖まで、立山黒部アルペンルートと名付けて立山を一大観光資源としている。近年は日本人より韓国など外人の方が多いくらいだ。だから、コロナで海外旅行者がいなくなって、大打撃を受けている。そこで富山県民は半額で利用でき、しかも買い物に使えるクーポン券付きで行かなきゃ損!状態だ。たまたま富山県のコロナはアラートレベルが引き下げられたタイミングがピタリ合って、この大型割引が使える!ラッキーこの上ないタイミングでの山行となった。
富山県民でも、富山市街から見て立山の裏側に回るコースを歩く人は少ない。車も通れる?くらいの表側の道から、裏に回り込む道は途端に狭くなるが、山はこうでなくては。登山者もほとんどいないコース。歩きにくい岩ゴロゴロの道に女性陣は難儀していたが、百名山踏破のHさんは細い体で重いカメラを抱えて軽々と飛び跳ねて下って行くように見えた。さすが百名山踏破者!

紅葉盛りまでは少し早かったが迫ってくるような立山の岩壁の紅葉には満足した。
立山のどてっぱらに穴を明けたトンネルを電気自動車で通るとあっという間に室堂に戻る。疲れた体にとってはありがたいが穴を明けられた立山には大変申し訳ない気持ちだ。

朝焼けのなか車を走らせる。

観光客で一杯になる立山・雄山に至る表側の道。

雄山に登る人。

黒部湖が見える。ここから下りのつらい道。

振り返ると立山の壁とも言える急峻な斜面。