「小川洋子の作り方」田畑書店
2021.10.5
小川洋子の作り方という本が出たと知ってすぐに注文、久しぶりにワクワクしながらの読書になった。
小川洋子はプチ赤毛のアンがそのまま大人になった人のように思う。明るい語り口、まっすぐな姿勢、明晰な分析、どれもまぶしい。東京FM、毎週日曜日に名作を紹介する番組を持っているが、本の読み方も素晴らしい。
小川洋子ファンになったのは、「博士の愛した数式」がきっかけだったかと思う。素数の深淵が小説になる、この不思議!なんということか。小説のきっかけをもらった藤原正彦という数学者との対談本も早速読んだ。「小川洋子・対話集」では小川洋子の不思議の秘密を垣間見た気持ちになって、河合隼雄との対談では小川洋子の誠実さに感心し、ますます好感度を上げた。何冊か小説を読んだ。ジョーシキ的な人間は一人も出てこない。読んだ範囲でフツーっぽい登場人物は「博士の愛した数式」に登場するが、読んだ範囲内ではほかには登場しない。ジョーシキ的な私には、多くの小説が良く理解できない。よくわからないなりに読み進めて、結局自分でどう消化したかわからないままに、なんとなく良かったなぁと思うのだ。小川洋子の作り方を読むと自分の読みの浅さが恥ずかしくなる。しかし、浅くても好きなんだからいいのじゃないかという思いもある。
博士以外で、私が特に好きなのは
「猫を抱いて象と泳ぐ」「人質の朗読会」だ。
「猫を抱いて象と泳ぐ」主人公はチェスの天才だが、チェスというゲームの面白さが、伝わってくるのだ。博士では素数・数学の世界で発見された法則がいかに素晴らしくワクワクさせるものなのかを教えてくれたのと同様に。学生時代に何年間もこんな驚きを感じたことがなかったなぁとか思いつつ。小説の可能性というか偉大さを改めて感じさせてくれたうれしい小説だった。
「人質の朗読会」はテロ組織によって人質になった人が、一人ひとり語るという設定だ。出てくる話はどれも、ちょっと異常な話しで、感動的な話などは一個も出てこない。しかし、変な人がそこに確かに存在していた、登場する変な行動は妙に愛おしさを感じさせる。この人質たちが解放されたのかは書いてなかったと思うが、変な人・変な行動が、世の中から抹消されるかもしれないと考えざるを得ない状況で読み終えた時、人が消える、消されることの哀しさと嫌悪感が残のだ。
前の土曜日に女優?の押切もえがこの本の書評を朝日新聞に載っていた。押切もえの文章は「解説」ではなく、小川洋子へのラブレターそのものだった。ラブレターの書評は爽やかでいいなぁ、これから押切の書評は注目しようとか考えた次第。
以上のようなことを書き残す意味はあるのか?意味なんかないなぁと思っていたら、押切もえの文章に出合って、まあ取り合えず書いておこうかとupする次第だ。
小川洋子、ノーベル賞受賞して欲しいなぁ。
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