特典映像

　私は大の映画好きである。映画を見られるなら、３度の飯のうち２度だけでもよいと思っているほどで、素晴らしい映画を見た後は感動で食事を取らなくとも平気だ。だが、最近の映画DVDに付いてくる特典映像は無用の代物だと思っている。

　私にとってあの特典映像は別に必要ない。映画の本編だけで満足しており、撮影時の秘話や監督や俳優の楽屋落ち的な話題はさして興味ない。よく「完全版」や「ディレクターズ・カット」も後から発売されるが、私がこれまで見た中でよかった「完全版」は『アラビアのロレンス』くらいで、他は不必要な映像を追加しているとしか思えないものばかりだった。大ヒットした『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズSEEも、第一部を除き良くなかった。

　それでも好きな映画の完全版やディレクターズ・カットは関心があるので、発売されるとやはり気になる。既にDVDを購入した後あらたに「完全版」を買うのは面白くないので、行き付けのレンタル店でチェックして見るようにしている。映画会社もまた商魂が汚い。熱心なファンなら通常版に加え「完全版」も買うのを見越して、特典映像付きを謳い、手を変え品を変えたかのように同じ映画のDVDを売りつける。

　最近、私がDVDを買うかどうか迷っていたある映画など、12月初めにディレクターズ・カット版が出るのを知り、一旦買うのを見合わせた。買うといっても、私は中古チェーン店を当たろうと思っていたくらいだが、売れ残ったDVDはどうなるのだろう。ゴミとして処分されるのだろうか？

　映画ソフトは特典映像とタイアップで売りつけられるが、私としては是非特典映像なしの廉価版も同時に出してほしいものだ。ただ、映画会社はまず安い商品は発売しないだろう。昔のDVDのパッケージは CDケースと同じ大きさだったが、今はビデオケースよりも大きい。これぞ資源の無駄というものだが、環境問題を熱っぽく語る俳優で、この種の無駄を指摘した者などいないと思われる。映画制作自体が地球環境に優しくないのだから、主張も偽善性を帯びてくるのは当然の帰結。映画そのものが虚構の世界なので、その業界人が言うことに真実を見出すのは無駄である。

　古代ローマでは役者の証言は信用が置かれなかったが、人気スターの美辞麗句を鵜呑みにしたがる傾向の現代人と、果たしてどちらが賢明なのだろうか？

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