トーキング・マイノリティ

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傷だらけの天使 その一

2012-06-02 20:39:58 | 音楽、TV、観劇

 国営、民放共に昔のドラマを再放送しているBSだが、BS日テレで『傷だらけの天使』が再び見られたのは嬉しかった。BS日テレのサイトにもこの番組が紹介されている。私がこのドラマを見たのは初回放送だけで、実に37年ぶりに目にしたことになる。
 ドラマを見た時はまだ思春期になったばかりの子供だったし、ストーリーは殆ど理解できなかったが、ハードだけでなくダークな結末も多かったので、忘れ難いドラマのひとつとなった。ネットで検索したら、このドラマには熱心なファンも多かったことを知り、「傷天」の愛称で呼ばれていたという。

「傷天」はOPからしていい。BGMのメロディはもちろん主役の萩原健一が食事をするシーンは実に決まっている。当時あの食べ方を真似した青少年が結構いたそうだが、あれは豪快な若い男の食べ方なのだ。女が同じ食べ方をすれば、どんな美女でも途轍もなく下品に見えてしまう。子供の頃OPの食事シーンを見て、私はコンビーフの丸かじりをしてみたいと思ったものだが、成人後も萩原扮する木暮修のような食べ方をしたことがない。男でも萩原がやるから絵になるのであり、そうでない若者ならガサツに見えるだけだろう。

 このドラマを私が見たのは12話「非情の街に狼の歌を」からであり、今回はそれ以前の話も見れたのは嬉しい。タイトルからしてハード路線で、有難いことに12話はニコニコ動画にもUPされており、OPから見ることができる。



 今回改めてこの回を見たが、中年となった今でも過激なストーリーだと感じた。昔見た内容の大半は忘れてしまったが、約束を堅く守った男がヤクザにより脚に何発も銃弾を撃ち込まれ、木暮修の見守る中死亡するシーンは忘れられない。当の約束相手は会社の金を横領、海外に高飛びする計画だったが、それに失敗した後も元通り会社に勤務し続ける。勤務先も社員の横領事件が発覚、社のイメージダウンとなるのを恐れたため、この不届き社員の首を切らず職場にそのまま復帰させたのだ。
 せめてもの救いは、ラストで会社に押しかけた辰巳五郎(岸田森)と乾亨(いぬい あきら/水谷豊)が横領社員をつるし上げるシーン。その時彼らが持参して来たのが殺された男の数多く銃創の残る片脚(実は蝋細工)いうのもスゴイが、いつもは頭の弱い亨が言った台詞は決まっている。「犬猫だってルール守って生きているんだよ…」

 このドラマを懐かしく感じるのは何も子供の頃に見たからだけではなく、昭和のにおいが強かったため。街並みやさりげない部屋の調度品などからも過ぎ去った時代が感じられた。部屋に位置する大きなステレオなど、今の若い人には想像もつかないだろう。
 大震災で見直されたが、ファンヒーターのなかった当時は一般家庭では石油ストーブが使われていた。私も家で緑色のダイヤル電話をかけていた。ポップアップ式のトースターも懐かしいし、魔法瓶やホーロー製やかんは似た様な柄を家でも使っていた。のれんにも流行があり、「傷天」に出てきたそれと殆ど同じものが家にもあった。

 夜の東京の街並みの暗さにも驚いた。歓楽街でさえ今の仙台の国分町よりずっと暗い。70年代半ば頃は東京の街並みも今のようにキレイではなかったし、まだ東京にも屋台があったのだ。当時のファッションを見ても、ブランド品を持っている人は見かけない。
 ビルや飲み屋も極めて質素なのだ。山海の食品が山盛りして出される今の大衆酒場と違い、つまみはせいぜい一品程度。私が社会人となった80年代は既にイッキ飲みが当たり前になっていたが、「傷天」の時代はまだ質素だったようだ。そのためだろう、東京の町を歩く人々にあまり太目はいなかった。
その二に続く

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