その一の続き
7月12日の夜、オスカルとアンドレがついに結ばれる場面は何といってもベルばらのクライマックス。尤も小学生だった私は意味が全く分らず、2人が裸身で抱き合っているのを見た感想は、「大人って、ヘンなことをするのね」だった。私と同年齢の友人は中学生の頃、ベルばらのこのシーンを見たそうだが、顔が真っ赤になったという。当時の私は何と無垢な田舎の子供だったろう。
「契る」という言葉もベルばらで初めて知ったが、国語辞典に「男女・夫婦の交わり」と載っていても、何それ?という反応だった。“契る”前のアンドレの台詞、「愛しあっているなら……からだを重ねてみたい……」で説明がついているはずだが、それさえ判らなかった始末。
現代からすれば、件の“契る”シーンは大胆な性描写どころか実に大人しい。レディースコミック愛読者ならばツマラナイと感じるだろう。だが、池田理代子氏へのインタビューを紹介したサイトには、「実は少女漫画初のベッドシーンだったんですよ。PTAのお母さんたちから編集部に『何事だ』っていうクレームがありました」とある。ベルばらはこの方面でも少女漫画界で革命的だったのだ。
但し、オスカルとアンドレが契ったのは1度だけではなく、引き続き翌日未明にかけて少なくとも1~2回は睦みあったと今では思っている。ネットではベルばらファンによる二次創作サイトが多くあり、管理人たちはこの場面をよく描いている。それらの創作でも1度だけでなく再びからだを重ねる設定なのだ。しかも求めたはオスカルという創作が多かった。
オスカルはもちろん初体験だが、アンドレは実は童貞ではなかったということをネットで初めて知った。池田氏がファンとの集いで、アンドレは18歳の時、勢い余って娼婦を買ったことがあると発言したそうだ。冗談交じりもあろうが、これが女性読者の間で、アンドレは童貞か否かを巡る論争を引き起こすことになる。ついでに童貞を指す“チェリー”なるスラングがあったことも、ネットで初めて知った。
アンドレファンの女性読者でも見方は分かれており、「アンドレ○○○論争」というサイトでは熱い論争が繰り広げられていて面白かった。このサイトの書込みには非童貞説の女性が多いようだ。ベルばらを再読するまで、私はアンドレ=非童貞など想像していなかったが、私も非童貞説をとる。
大体この時点でアンドレは既に34歳なのだ。18歳で娼婦を買った体験があったとしても、その後はずっと性交渉なしとすれば カワイソス としか言いようがない。「他の女になどいちども目を向けたことはなかった」と言ったアンドレだが、他の女に一度も手を出したことはなかった、という意味ではない。
常に熱愛するひと、しかもとびきりの美女の側にいながら、“お預け”を食らい続けている苦しみは想像を絶する。未遂に終わったにせよ、これではベッドに押し倒しての暴行や無理心中をしたくなるのは無理もない。当時はプレイボーイのようなポルノ雑誌こそなかったが、おフランスのこと、春画や風俗画には不足せず、アンドレもそれを見ていたことだろう。そしてすることは、21世紀の庶民の男と同じだと私は想像している。
熱心なアンドレファンの女性が絶対に童貞と、願望解釈をしたくなる気持ちは分からなくもない。だが、特に彼に思い入れの無さそうな歴女ブロガーにも童貞論支持者がいた。あえてリンクは貼らないが、この歴女さんは記事でこんな発言をしている。
「男キャラは練習(経験)済み」と知って、安心する女性読者もいるんでしょうけど、わたしは許しません。嫌いです」
アンドレ童貞論争では書き手の異性観や人生観が鮮やかに浮かび上がってくる。練習(経験)済みの男キャラを許さない自由もあるが、そんなキャラを安心して受け入れる自由もある。オスカルも「心は自由だ」と言っていたではないか。世間の常識をあっさり受け入れる同性を許さないというのは、女権原理主義者そのものだろう。
幾ら文明が進んでも女も男も本性は進化していない。歴史書を読み、一体何を学んできたのか。私もこの類の歴女は苦手だし、異性観は未だに十代半ばの水準に留まっているとしか思えない。
男が練習のために女を踏み台にするのが許せないというのが女権原理主義者の言い分だが、女も男を練習用に利用することもしばしばなのだ。2014-05-23付で、“プロ”の女にとって童貞兵士はご馳走というコメントを頂いたことがあり、今までのところ堅気の女である私も納得した。
あの上野千鶴子センセイも2012年、男子中学生の性処理問題には「熟女にやらせてください、とお願いすればいい。私だってもっと若ければ…」と発言していたのだ。実は私も18歳の童貞アンドレなら味見したいと思うが、上野センセイは何と男子中学生に注目しているとはお目が高い。尤も男子中学生が熟女に性処理を頼むのか、大いに疑問だ。
その三に続く
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オスカルが正式ではないけどアンドレと結婚して幸せになってくれて(束の間の幸せでしたけど)とっても嬉しかったのを覚えています。その気持ちは今も変わらないですね。
束の間にせよ、オスカルとアンドレが夫婦になったのはとても嬉しかったのは私も同じです。オスカルがロザリーに、「私たちは夫婦になったのだから…」と、苦しい息の下から話したのは感涙しました。父の勧めるままジェローデルと結婚していたとしたら、ドラマになりませんが。