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真珠の首飾り

2012-12-21 21:10:43 | マスコミ、ネット

“真珠の首飾り”と聞くと、グレン・ミラー不朽のジャズナンバーを連想される方も多いだろう。今回記事にするのは粋なジャズの話ではなく、現代の国際戦略についてのものなのだ。12月19日(水)付けの河北新報の国際面で、珍しくインド関連ニュースがトップを飾った。大見出しが「インドも対中包囲網に」、ASEANと安保で協力の一文が添えられている。その小見出し文と記事全文を紹介したい。

ニューデリー共同】インドが20日、ニューデリーで開くASEANとの首脳会議で軍事増強を進める中国を睨み、海洋安全保障など防衛協力強化の方向性を強く打ち出す「ビジョン声明」を採択する方針であることが18日、分かった。共同通信が声明草案を入手した。

 オバマ米政権の「アジア最優先」戦略を踏まえ、ミャンマーやベトナムの他、フィリピンなどが対米関係強化に動いており、インドも「対中包囲網」形成に加わった形。近く発足する安倍政権も米国やインドとの関係強化に意欲を見せており、中国を刺激しそうだ
 草案によると、双方は「戦略的パートナーシップ」への関係格上げを宣言。高官級による定期的な安保対話を通じた情報共有の他、海洋安保や航行の自由、資源へのアクセス、シーレーン(海上交通路)の安全などに関し、協力を深めることを確認する。

 関係強化に動き出す背景には、中国が領有権を主張する南シナ海などで海洋権益の拡大図る一方、シーレーンを押さえるためインドの周辺国との関係を強化する真珠の首飾り戦略も推進しているという事情もある。南シナ海問題で中国と対立するベトナム、フィリピンなどASEAN側と、インド洋での自国権益を確保したい利害が中国への対抗上一致。従来の経済・通商分野に加え、安保面でも密接に強調していく姿勢をアピールする。
 今回の首脳会議は、インドがASEANとの間で、観光など個別分野での協力関係を結ぶ「分野別対話国」になってから20年、最初の首脳会議開催から10年を記念して開かれる。インドからはシン首相が出席する。

 中韓の懸念だけを“アジア諸国の声”として伝え、インドやASEANの有力紙がこぞって安倍政権誕生を歓迎したことは報じない日本のメディア。シン首相来日さえもベタ記事扱い、ましてインド首相による国会演説も報じない河北新報は例によって、「インドも対中包囲網に」と何やら米国追随を感じさせる見出しで書く。今や米国はもちろん中韓の御用紙でもあるこの地方紙が、“真珠の首飾り戦略”の用語を使ったのをまず見た記憶がない。
 これには「胡錦濤は中国の海軍戦略のゴールを「調和の海」、「中国は覇権を求めないし、他国との軍事力拡大や軍拡競争も求めない」としている」(wiki)そうで、かつての平和五原則を思わせる見え透いたお題目に過ぎない。それを真に受け「友好の海」を唱えた無能首相が何処かの国にいたが、インドにはもはや通じない。同時に河北はインドとASEANの関係を次のように解説している。

1991年に経済自由化路線に転換したインドは同時期から、東南アジア外交を足掛かりに「ルックイースト政策」を推進。95年にASEANの「対話国」となり、経済を中心に関係を強化した。2010年にはモノの貿易で関税を撤廃する自由貿易協定(FTA)が発足、インドのASEAN輸出は全体の約1割を占めている。

 10年以上も前だが、中国の外交白書にアジア諸国で自国に対抗しそうな国として、日印の二カ国を挙げていたのを憶えている。これを心外に感じた日本人もいるだろうが、他国は自国を写す鏡でもある。潜在的に日印に敵対的なのが中国なのは書くまでもなく、遠交近攻は中国に限らず外交の基本。
 国を上げてインドを貶めていた中印国境紛争時と違い、現代の中共は核保有国インドには日本やASEANに対するのとは対照的に丁重な外交姿勢をとっている。確か2005年温家宝の訪印の時だったと思うが、友好ムードを演出、強調したがる姿勢が際立つ中国に対し、地元メディアはいたってクールだった。そして訪印最終日にインドは印中国境間近でミサイル実験を行っている。これがインドの“祝砲”だった。

 真珠の首飾りに対抗、インドも「ダイヤのネックレス」戦略をとっており、それを紹介した記事もある。実際に手に入らないとしても、真珠の首飾りやダイヤのネックレスを欲しがらない女はいないが、シーレーンをめぐる国際関係は複雑だ。この件では中韓の望み通り、日本の右傾化やインドの軍拡化を非難する記事がこの先増えることになろう。それに対抗するのは“敵”と同じく相手側の軍拡化を粘り強く世界にアピールする他ないが、その気概が日本人にあるだろうか?



◆関連記事:「賛中、侮印報道
 「象は痩せても象である
 「平和五原則-中国にしてヤラレたインド

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6 コメント

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タイトルを見てとんできますた(笑) (のらくろ)
2012-12-22 21:31:52
>中韓の懸念だけを“アジア諸国の声”として伝え、インドやASEANの有力紙がこぞって安倍政権誕生を歓迎したことは報じない日本のメディア。

桜井よし子に蹴散らされておしまい!↓
http://www.youtube.com/watch?v=91J1qvbBzTE

よく見たらこれ去年の4月の記事でした↓
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1617395.html
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反日キャンペーンの失敗 (室長)
2012-12-23 10:06:00
こんにちは、
 中国共産党の指導部交代人事闘争の中で、習近平が行った「反日、尖閣キャンペーン」が、また、韓国政権交代期に自らの生き残り作戦として、「竹島上陸」の暴挙を敢行した李明博など、旧儒教国家の政治家が、対外政策を利己的な目的に使用することが明白となりました。

 今回の二つの「暴挙」に対し、日本国民も初めて、平和のお題目では国防が危ういと実感して、断固これらの「挑発」を非難したし、とうとう左翼系のマスコミですら、日本国の立場を強く主張しました。

 民主党政権が信用できないから、国民が、マスコミが、自分たちが国を守らねば、と焦った結果のように思う。
 いったん社説などで「正論」を書いた以上、左翼系の朝日も、今後は、まともな議論をより多くすることでしょう。TBS、テレ朝などでも、最近はまともな議論がなされています。今後も、最近の論調を変えないで欲しいですね。
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RE:タイトルを見てとんできますた(笑) (mugi)
2012-12-23 16:11:59
>のらくろ さん、

 実は櫻井よし子氏による「あなたのおっしゃるアジアってどこの国のことかしら?」、生ТVで見ていました(笑)。このような正論を言うため、彼女はТVから締め出されることになったのでしょう。

 米軍基地を締め出したのはフィリピンだし、あの国にも問題はある。もっとも日本のТV(ニュースステーションだった?)では、それを“英断”として讃えていましたが。
 しかし、南アジアの大国インドとなれば、東南アジア諸国とはかなり違います。中共もインドのマスコミに宣伝工作しており、こんなサイトがあります。
http://news.livedoor.com/article/detail/7045294/

 これってモロに中共の代弁そのものでしょう。インド共産党マルクス主義派は親中ですが、中印国境紛争の屈辱をインド人は忘れていない。中国の官僚や専門家が常に自制をもっているのも疑問だし、一般インド人は靖国神社のことなど無関心ですよ。

 その同じタイムズ・オブ・インディアが、安倍政権誕生を「両国関係を急速に拡大させる絶好の機会」と歓迎しています。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121217/asi12121718460004-n1.htm
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RE:反日キャンペーンの失敗 (mugi)
2012-12-23 16:14:16
>こんにちは、室長さん。

>>とうとう左翼系のマスコミですら、日本国の立場を強く主張しました

 そうでしょうか?我が家では河北しかとっていないため他紙の記事は不明ですが、上記にも書いたとおり河北は相も変わらず、「隣国を刺激しないことが大切」と言った論調が中心です。日本人御用ジャーナリストや欧米人学者が「冷静な議論を」と訴える。河北読者もこの類のコラムを鵜呑みにする人ばかりではないことに期待したいですが、メディアの力は未だに侮れません。

 相も変わらず中韓は欧米にアピールすることに長けているし、米国内にも親中派は多いはず。情報発信という点では日本は負け続けており、戦前とそっくりなのが気になります。ただ、インドも情報戦は行っており、欧米に受けが良いのが救いです。
 民主党政権も失態続きでしたが、自民党政権も外交で自国の立場を強く主張できるのか、かなり疑問ですよ。安倍氏も本気でやる気があるのか、かつての自民党政権時代の「日本を取り戻す」つもりなのか…こちらも不安があります。
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長いトンネルの…… (のらくろ)
2012-12-23 20:36:27
先に、僅かばかり光が見えたのではないでしょうか↓
http://www.youtube.com/watch?v=HMxZko4L108
http://www.youtube.com/watch?v=EPdwsSCJCTI
http://www.youtube.com/watch?v=UYHD94DDsQQ
http://www.youtube.com/watch?v=csVrA9IcFBg

実は私も下のブログで初めてこの事実を知ることとなりました。お恥ずかしい限り↓
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11429409714.html#main
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RE:長いトンネルの…… (mugi)
2012-12-24 22:25:12
>のらくろ さん、

"マスコミに対する物凄いヤジ" の動画、面白く拝見しました。自民党ファンというよりも、「未だに年収1000万円以上も貰っているなんて許せんよなぁ」というコメントに本心が表れていると思います。特権階級となっているマスコミに怒りを抱く国民も多いはず。

 11月21日付の河北新報に、「排外主義」批判のコラムがありました。ネット右翼を扱った『ネットと愛国』の著者のジャーナリスト安田浩一の意見も載っていましたが、彼のいう“愛国”の定義が振るっています。
「他国や誰かに、どう見られるかを考えることだ。外国人が住みやすいことこそ、日本人にとって住みやすい国だし、それを実現することです」

 他国や誰かに、どう見られるかを考えること!これほどマスコミの本質を物語る言葉もないでしょう。前に私はジャーナリストとはペンを持った男娼と書いたことがありますが、カネ次第でどんな記事も書く連中です。
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