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学生時代、007大ファンの友人がおり、友人に感化され私も若い頃からのこのシリーズの殆どを見ている。チラシによれば今回はシリーズ第23作目だそうで、これ程息の長い作品もないかもしれない。私行きつけの映画館のHPでは、今作をこう紹介している。
―ダニエル・クレイグ版ボンド第3作にして、シリーズ誕生50周年記念作。直属の上司Mが秘めていた過去の事件。その過去が明かされるにつれ試される007の忠誠心と信頼。そんな中、彼らの所属するMI6が何者かの標的に…。苛酷な状況下、ボンドはその脅威を破壊すべく行動を開始する!
前回の悪役は環境保護を謳い文句に裏では第三国政治家と結託、天然資源を入手し世界支配を目論もうとする多国籍企業のボスだったが、今回はサイバーテロリスト。しかも、かつてはボンドと同じくMI6の“00”エージェントで、Mの優れた部下だったシルヴァ。彼は自分を見捨てた元上司MとMI6への復讐、英国の権威への壊滅を企てており、MのPCをハッキングしたり、MI6のネットワークに侵入する。入手したMI6の情報を公開して工作員の身元を曝す他、セキュリティシステムを破り本物の破壊工作を行う。
シルヴァ役はスペインの俳優ハビエル・バルデム。『ノーカントリー』の凶悪な殺し屋でバルデムを初めて知った日本人も多いと思うが、この作品では主役のトミー・リー・ジョーンズを完全に食っていた。ただ、今回ではサイバーテロリストのためか屈折しており、主役を超えることはなかった。ダニエル=ボンド自体が元から悪人面だし、何時みても英国人なのに背広ネクタイが合わない。ロンドンの暗黒街の用心棒かロシアン・マフィアでも演じられそうだ。
今回はメンバーの世代交代劇でもあった。ダニエル=ボンドになってから武器開発のエキスパートQが出てこなかったが、今回新たなQが登場する。ボンドの言葉を借りれば、「まだニキビ痕のある、生白い若造」で、メガネをかけて見るからにオタク青年そのものだった。かつてのQはどう見てもボンドより年上の中年技術者だったはずだが…
今回の若いQは、「年齢と能力は別です。PCがあれば、パジャマを着ていてもエージェントに勝てます」と言い返す。ボンドが好みそうなペン型爆弾をアンティークと一蹴、よりシンプルな装備を与えている。武器開発だけでなくサイバー技能に長けたオタク青年風Qが007に登場したのも時代の流れか。
秘書のマネーペニーも復活している。これもダニエル版ボンドで初登場だ。以前のマネーペニーは金髪美人ばかりだったと思うが、ブラックビューティーがマネーペニーを演じるのも時代ゆえか。一昔前ならタイプを打つだけの美人でも結構だったが、今回のマネーペニーは銃を撃ち、カーチェイスも得意という行動派でもある。MI6のボスMからして女だから、007シリーズも昔とは女性キャラの地位は違ってきている。
そしてジュディ・デンチのMが今回で最後となるのは全くの予想外だったが、今年で78歳となるのだから、それも当然だったかもしれない。特に今作はMの出番が多かったが、ストーリーの設定だけでなく、女性キャラゆえもあるのではないか?Mが男性上司だった頃には、これほど登場していなかった。
ボンドの幼年時代が語られるというのが今作の宣伝文句だが、私としてはMの過去の方に関心があった。夫がいるのは『カジノロワイヤル』で判明しているが、夫は故人となっていたことが台詞で明かされる。亡き夫はテニスンの詩を好んでいたそうで、Mも査問会でテニスンの詩の一節を引用する。ボンドの幼年時代などよりもMの私生活の方が面白そうだ。
サイバーを駆使したテロ攻撃など、毎度ながら007シリーズは時の話題を取り入れることが上手い。だからこそ、散々マンネリと言われながらも50周年を迎えられたのだろう。チラシの「イスタンブール、ロンドン、スコットランド、上海、マカオ……ボンドが世界を駆け巡る!!」のコピー通り、世界を舞台にしたアクションシーンは大迫力。私にはダニエル版ボンドシリーズで一番面白かった。
◆関連記事:「007/カジノロワイヤル」
「007/慰めの報酬」
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>夫がいるのは『カジノロワイヤル』で判明している
「カジノロワイヤル」だったかな?他の作品だったかな?忘れっぽくてすみません・・・(汗)。自宅でパジャマ姿のMが夫と一緒にいるのが印象的でした。Mにも私生活があるんだなと思いました。
>そしてジュディ・デンチのMが今回で最後となるのは全くの予想外だったが
Mが最期を迎えるとは思いませんでした・・・。
ジェームズ・ボンドとラウル・シルヴァの闘いは、お母さんに可愛がられた子と可愛がられなかった子の、命を賭けた兄弟喧嘩のように見えました。
『カジノロワイヤル』で、ベッドで寝ていたMの隣に男性がいたシーンを憶えています。Mの性格からして愛人ではなく、れっきとしたパートナーだと思いました。公式の場では非情な情報部ボスといえ、私生活では善き妻だったかも。
私も今回、Mが殉死するとは予想外でした。本命ではないボンドガールが敵に殺されるのは毎度ですが、上司や同僚が死ぬのは初めてではないでしょうか?
>>ジェームズ・ボンドとラウル・シルヴァの闘いは、お母さんに可愛がられた子と可愛がられなかった子の、命を賭けた兄弟喧嘩のように見えました。
私も同感です。現にシルヴァはMを、“マミー”と呼んでいました。