トーキング・マイノリティ

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ローマで語る その一

2011-05-11 21:13:37 | 読書/ノンフィクション

『ローマで語る』(塩野七生&アントニオ・シモーネ著、集英社インターナショナル)を読んだ。Amazonの紹介内容には「作家の母と映画製作を志す息子が、男と女を、人生を語り尽くす。映画を通じて、日本、アメリカ、イタリアの文化の違いを浮き彫りにする対談集」とある。月刊『PLAYBOY』連載を加筆・編集して書籍化されたものであり、彼らの映画論評がスゴイ。同じ映画を見ても、成功した作家と無名ブロガーでは見方がまるで違う。この対談集を見ると、私の映画記事など底の浅い未成年の作文並みだと痛感させられた。

 塩野氏のエッセイには愛息への言及が結構見られ、ひとり息子ということもあり、辛口で知られる氏も親バカな面があるのはむしろ微笑ましいと思う。そうなると塩野ファンとしては、どんな息子なのか詮索したくなる。本の裏に載ったアントニオ君の経歴は以下の通り。

-1974年3月30日、フィレンツェ生まれ。大学では考古学を学び、その後しばらくは発掘で日焼けする日々を送っていたが、結局は少年の頃の夢だった映画の世界を選ぶ。アメリカに渡り、ハリウッドで『スパイダーマン2』と『ロード・オブ・ドッグダウン』の2作の製作助手を務めた後、イタリアに戻り、『副王家の一族』の製作助手を務めた。
 ただし、その後はグローバル不況のあおりを食って映画の世界では失業。それで今は大学時代の勉強にもどって、母親、つまり塩野七生の仕事を手伝う毎日。

 今年37歳になる塩野氏の息子が現代どのような職に就いているのか不明だが、それでもさすが作家の息子だけあり、映画批評や人間観察力は実に鋭い。アントニオ氏が「これだけは観てほしいイタリア映画」と推薦した作品のひとつ『ロミオとジュリエット』は私も若い頃1度ТVで見ている。氏が舞台は中世イタリアでも、これは今でも世界のどこにでも見られる、青春群像を描いた映画というのも肯ける。
 しかし、彼の心を強く捕えたのがロミオやジュリエットよりも、ジュリエットのいとこのティボルトだったというのは意外だったし、その理由も興味深い。アントニオ氏は対談で次のように語っている。

ティボルトはまだ若いのに、ジュリエットのファミリーのトップになるよう宿命づけられている。だから恋にわが身を忘れることも許されないし、常にファミリーのためということが頭を離れない。つまり彼には、他の若者たちのように若さを満喫することは許されなかったのだ。その彼がつまらない理由でロミオの親友を殺してしまったことから悲劇になるのだけど、その時初めて彼は、自分が一気にオトナになってしまったことに気づくんだ。もはやファミリーの名誉を守るなんて世界の話ではなく、殺人を犯してしまったという、後戻りできない別の世界に足を踏み込んでしまったことに気づく。その混乱の中で、親友を殺されて怒り狂ったロミオに殺される。

 ボクは、生きたという証拠を何一つ残せないで死ぬくらいの悲劇はないと思うんだ。ロミオも死ぬけど真実の恋という、誰にでも恵まれるわけでもないことを知った後の死ですよ。反対にティボルトは、それも知らないで死ぬ。自分はほんとうに生きた、と言えないままで死を迎えたんだ。
 ティボルトは女も知らないで死んだのではないかとさえ思う。ファミリーの名誉を守るなんて考えてみればつまらない価値なんだが、それに責任を感じすぎた彼は、人生も満喫しないで散ったのだ。ロミオとジュリエットの二人は恋だけは達成して死んだのだから、ティボルトに比べればよほど恵まれている…
(24-25頁)

 この作品を私はジュリエットに扮するオリヴィア・ハッセーの美しさに魅入られて見ていただけだったし、単にコスチューム恋愛映画としか認識していなかった。ティボルトの悲劇など頭にも浮かばなかったのは、私が女ということもあるにせよ、男のアントニオ氏にはそれが理解できたのだ。
その二に続く

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