子供心に回帰するかのような、心細い日が続くと、ふと私は江戸川乱歩が読みたくなることがある。ブックオフに、このポプラ文庫のものを探しに行った。懐かしい表紙だ。挿し絵もそのままに文庫化されている。このシリーズは『大金塊』に続いて2作目である。
小学生でも読めるように工夫されている。トリックはさすがに幼稚で、変装の巧さを生かしたなりすましがパターン化されている。子供でも予測できるように書かれたのだろう。確かに小学生の私は、わくわくと想像を膨らませていた気がする。
もはや推理小説として大人が読むに耐えるものではないが、懐かしさについページをめくる。ほんわかとした気分になれる。
このシリーズは、ときたま、これからも手にするだろうと思う。私を読書好きにさせてくれた、そのきっかけとなったシリーズなのである。
