何年ぶりに読んだのか思い出せないが、23歳のときの引越で、絶版本以外を処分したときに手放したはずだ。以来、春陽文庫の乱歩作品は、古書でときどき再収集している。
初めて読んだのは中学三年の夏だったと記憶している。部活を引退し、受験という現実が突きつけられて、思い悩んでいた。暑い夏、夏期講習の後、閉店間際の古書店に足しげく通った。
自分探しをしていたのか、現実逃避をしていたのか、おそらくその両方だったのだろう。
そういう私に、江戸川乱歩が若い頃に書いた短編集は、一服の清涼剤、否、ある種の麻薬の役割を果たしていたように思う。
作品の登場人物らは、一様にアウトサイダーであり、試験やら内申点などに圧迫された私に、一時の慰めを与えてくれた。時計が逆回りし、私は昭和へ、大正へと旅をした。
そんなトリップに私を誘った珠玉の作品集。しかし、いまの私の琴線にはほとんど触れない。
あのときに比べれば、前向きに、日の当たる場所を歩けているからだろうか。
心を病んだとき、弱ったときに、また紐解く。そういう意味で、蔵書しておきたいシリーズではある。
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