5年前、朝日新聞『ひと』欄に載っており、以来気になっていた。ドラマ版『のだめカンタービレ』を妹に勧められて好きになり、実はモデルとなったピアニストがいると聞いていた。記事に載った野田あすかさんの写真は、上野樹里演じる“のだめ”と雰囲気がとても似ていた。
スクラップブックをパラパラめくっていて、記事の切り抜きを見つけ、本書を注文した。コロナ禍で時間がある。それに発達障害への関心の高まりに伴い、私は自分自身の傾向に多くの該当項目のあることに気づいてきて、その本人と家族の書いたものという意味でも読まないわけにはいかないと思ったのだ。他人事ではないからである。
プロフィールにある通りだが、壮絶な半生が描かれている。野田あすかさんは私の4つ年下のほぼ同世代。発達障害という概念は、子供のころ誰も知らなかった。いじめられるだろうし、できない自分を責め、心の健康を損なっていくのは、ある意味で必然である。
私も学校は居心地が悪かった。軽度で、幾つかの傾向に該当する程度の私でも、朝になるとしょちゅう腹痛を起こし、休みがちだった。次第に解離性障害を発症していく野田あすかさんは、それだけ強いストレスを抑圧してきたということだろう。私は(結果的に)タバコ、文学、異性、クルマ、酒、ランニングというふうに心を紛らわすことを、無意識のうちに、たくさんセッティングし、なんとか生きてこれたが、自傷行為に至る心理はよく分かる気がする。自分を罰する、痛みによって苦痛を紛らす、早く死んでしまえば良い・・・というふうに私も、若いころは根性焼きをやったり、タバコを自棄くそのように1日40本くらい吸っていたのだ。(ようやく止められたが大酒を飲むのも、現在進行形の走りまくりの日々も、形を変えた自傷行為といえなくもないだろう)。
学校を追い出され、解離性障害で飛び降り事故という壮絶さの中にも、ピアノをやりたい、コンクールに出たいと思い続けて、大成していく。本人にとっても救いだろうが、そのエピソードと音楽そのものが、多くの人の勇気になるだろう。
CDもついている。透き通るような歌声が印象的だ。いつかコンサートにいってみたい。
