ここ数年、アスペルガーなどの発達障害に関する書籍や番組が増え、ようやくそれらが周知されてきた観がある。昨年末にはNHKが“ふつうってなんだろう”という切り口で特集していて、そもそも健常者とか“ふつう”っていうのが、恣意的なのかなと考え直すきっかけになりそうで、歓迎すべきことと感じた。
実は私自身、自己診断ながらアスペルガー的要素を多く持っていると感じている。長年の生きづらさの由来が、その症例と符合している。そうか、自分は発達障害なのかと落ち込むことはなく、これまでの苦しみの要因が少し解き明かされつつある気がして、そうと知れば対処も心の準備もできるから、知っておくべきと前向きに捉えている。
知らないで周りとの軋轢を増幅させたり、自らを責めたりし、長らく私は抑うつ状態あるいは適応障害的な状態に苦しんできた。本書でも指摘されるとおり、一定の要素を持ち合わせている人の割合は非常に高く、どこからが発達障害と呼べるのかは定義が難しい。私もかろうじて社会人として生きてこれた以上、グレーなゾーンに居るのだと思うが、いずれ受診して調べてもらい、今後の生活の参考、指針を得たいと思う。
こういった問題意識をもともと持っていたので、本書は大変興味深く読めた。軽いものや漫画などはよく目にするが、医療現場で真摯に向き合ってきた著者ならではの成果が、誰にでもわかりやすく書かれていて、開眼させてくれる読書となった。頁の半分は幼児や学童期の診断と対処に割かれていて、飛ばして読まざるを得ない部分もあったけれど。
今後も参考にこの分野のものは手にすると思う。そのための土台となる知識が得られた。
