以前から興味を持っていた。いずれ読もうと思っていたら、ブックオフで200円で売っているのを見つけて入手した。新刊で買いそうになったことがあったので、得した気分だった。
しかし出版からわずか四年でこの値崩れ。もう旬を過ぎた本と判断されたのだろうか。リオ五輪への切符は得られず、一時期の注目はなくなっているから、話題性だけで手にする人にとっては、相応の値段なのかもしれない。市民ランナーにとっては、いまでも注目の、期待の人なのだが。
頑固で一徹なところは、どうやら母親譲りだったらしい。著者で実母の川内美加氏は、何らの理論も経験もないまま、子供たちへのタイムトライアルを習慣化させ、それはまさに一徹、どんなに息子らが疲れていても走らせたという。この母親あっての川内優輝だったかと思った。
【ああいった練習は、たまにやるのではなく習慣づける必要がある、と思っていましたので、とにかく「走らないと一日が終わらない」と、どんなときも無理やり引っ張り出していました。学校で運動会や持久走大会があった日も、「学校は学校、ウチはウチ」と言って練習に連れていっていたのです。】
結果的に良い方向へと結びついたから良いものの、その特訓を見た他人に「虐待だ」と言わせたほどというから相当だ。
こうして幼少期から世界陸上に出るまでを、母親としてエピソードを綴るわけだが、(皮肉ではなく)幸せな母親だよなと思った。書くことがそのまま、のろけというか、親バカな自慢話にも見えてしまうのだが、それが自然に成り立つような実績と、市民ランナーからの大きな支持があるわけで、何らの嫌味にもならないのだ。
こういっては元も子もないが、息子自慢をして印税がもらえてしまう僥倖だ。繰り返すが、これは皮肉でも批判でもない。なにしろその息子自慢、興味津々、面白く読めたのだから。
