日々の方向性を探し求めるブログ

モラトリアム人間が2本目のブログを始めました。
今後の方向を模索する内容(予定)

桐野夏生『日没』は有名なオーウェル『1984』を日本に置き換えた作品

2023-12-02 13:33:48 | 読書・本・雑誌
最近、ジュンク堂をぶらつき何となく購入したのが、桐野夏生の文庫本『日没』である。 
  
・桐野夏生(きりの なつお、1951年10月生)は、日本の小説家だが、現在は売れ筋の作家でない。
桐野夏生と言えば、個人的にはフジテレビが田中美佐子を主演としてドラマ化した『OUT』(原作は1998年)が面白い印象かな。この『OUT』は映画化もされアメリカで評価された作品らしい。殺伐とした弁当工場とそこで働く外国人労働者を舞台としていたかな。
  
 さて『日没』は、2020年9月、岩波書店発行の単行本。
 2023年10月に文庫本化(990円)された。文庫版の解説は、スラブ系文学者・翻訳家の沼野充義です。
  
● 『日没』公式のストーリー
 『小説家のマッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。
「更生」との孤独な闘いの行く末は―― 』

  
□ 目次
 第一章 召 喚
 第二章 生 活
 第三章 混 乱
 第四章 転 向

◆ 『日没』 表紙

  
 桐野夏生の『日没』は、読み出したら分かるが、なぜか近未来の日本が統制社会になって、民主的社会ではない。しかし、作品では背景の社会構造にほとんど触れていないのである。
  
 この『日没』の導入部の雰囲気は、カフカの有名な『審判』※1とか、SF作家のフィリップ・K・ディックの短編に近い。主人公を覆う社会が、統制社会であり、暗黒社会であり、それは有名なジョージ・オーウェルの『1984』※2の世界に通じる。
 ※1『審判』はフランツ・カフカの長編小説。1914年-1915年執筆。
    理由の分からないまま裁判を起こされた男ヨーゼフ・Kを通してカフカは不条理を描く。

 ※2 ジョージ・オーウェルの『1984』は、全体主義国家によって分割統治された近未来世界の恐怖を描いている。欧米での評価が高く、思想・文学・音楽など様々な分野に今なお多大な影響を与えている。
   
 結局、この『日没』はオーウェルが1949年に刊行した暗黒社会の古典的作品『1984』を日本の文芸界に置き換えた作品ということになります。ですから『日没』で興味を持った人は、長編だが、下敷きである古典的作品『1984』を眺めた方がよいです。
  
◆ ジョージ・オーウェル『1984』の表紙(ハヤカワ文庫版)


  
【参考リンク】
ジョージ・オーウェルの『1984』 Wikipedia 

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久坂部 羊『MR(上・下 )幻冬舎文庫)』を読んでみた。

2023-11-10 19:12:54 | 読書・本・雑誌
 医師で作家も兼業してる大阪在住の久坂部 羊〔注:ペンネームです〕の文庫本を久々に購入して読んでみた。(通常は図書館で借りることが多かった)
 この作家の本やエッセイは割と数を読んでいるのでおよその感じは分かる。クリニックの利用者ならおなじみの医薬系の営業であるMRのことが具体的にで期待できるからである。
 

【公式の紹介文】
「大阪に本社を置く中堅製薬会社・天保薬品※。その堺営業所所長であり、MRの紀尾中正樹は、自社の画期的新薬「バスター5」が高脂血症の「診療ガイドライン」第一選択Aグレードに決定するべく奔走していた。決まれば年間売上が1000億円を超えるブロックバスター(=メガヒット商品)化が現実化する。ところが、難攻不落でMR泣かせの大御所医科大学学長からようやく内定を得た矢先、外資のライバル社タウロス・ジャパンの鮫島淳による苛烈な妨害工作によって、一転「バスター5」はコンプライアンス違反に問われる。窮地に追い込まれた紀尾中以下、堺営業所MRチームの反転攻勢はあるのか。ガイドラインの行方は? 注目集める医薬業界の表と裏を描いたビジネス小説の傑作、誕生! 」
  
※MR職をロマンチックコメディ風に扱った視聴率も高いドラマ『家政夫のナギサさん』(2020年秋)があり、主演は多部未華子が演じている。このドラマでは「天保山製薬」が勤務先となっており、なぜか今回の小説と類似なんです(笑)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%B6%E6%94%BF%E5%A4%AB%E3%81%AE%E3%83%8A%E3%82%AE%E3%82%B5%E3%81%95%E3%82%93
 
 この小説では、MR職の実際の一例を現役医師がフィクションで書いたものだが、具体的に書いてあり興味深い。また、筆者の出身校(阪大医学部)を踏まえて、関西医療業界と阪大医学部の影響下にある各地の大学医学部を仮の名前で表現している。しかし、知ってる人は容易に大学の特定は出来そうです(苦笑)。
  
解説リンク
 (1)MRとは? 特徴や仕事内容、関連職種について解説
    https://karukeruinfo.xsrv.jp/job/mr/what-mr
 (2)MRになるには資格が必要?MR認定資格の取り方について解説
    https://karu-keru.com/info/job/mr/mr-qualification
 (3)MRがブラックだと言われる9つの理由を現役MRが解説
●備考: 私のメインブログで扱った久坂部 羊の本の話題
 ・2017年06月21日 久坂部 羊 『虚栄』 2015年10月、 がん治療版の『白い巨塔』
 ==> https://plaza.rakuten.co.jp/realfinder/diary/201706210000/

  
 ・2017年05月16日 久坂部 羊 『医療幻想』 および『悪医』
 ==> 
https://plaza.rakuten.co.jp/realfinder/diary/201705160000/
  
 ・2016年01月11日 久坂部羊『大学病院のウラは墓場―医学部が患者を殺す』幻冬舎新書
 ==> https://plaza.rakuten.co.jp/realfinder/diary/201601110000/



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