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葉織る。

言葉の中にそれを紡ぎ織った人が見えても、それは虚像かもしれない。

異質な章。

2008-11-07 08:01:16 | 雑感
 夫佳兵者、不祥之器、物或悪之、故有道者不処、
 君子居即貴左、用兵即貴右、兵者、不祥之器、非君子之器、不得已而用之、恬淡為上、勝而不美、而美之者、是楽殺人、夫楽殺人者、即不可以得志於天下矣、
 吉事尚左、凶事尚右、偏将軍居左、上将軍居右、言以喪礼処之、
 殺人之衆、以哀悲泣之、戦勝以喪礼処之、

 「老子」の三十一章です。大体の意味は・・・

 優れた武器は、不吉な道具だ。
 武器をどうしても用いなければならない時には、貪欲でないのが最も良い。
 勝利を得ても光栄ではない。
 光栄とするならば、それは人殺しを快楽とすることだ。
 人殺しを快楽とする者は、天下において望みは果たせないだろう。
 多くの者を死なせたなら、例え戦争に勝ったとしても、葬式の礼に従うべきだ。

 まあ、こんな感じです。かなり端折ってますけど。

 この章は、力と力のぶつかり合う争いごとを好まない筈の老子が、あまりにもあからさまに戦争について語っているので、実はこの章は戦国の兵家の言葉が紛れ込んだのではないか、という説があります。

 しかし同時に、戦争を害悪とする点では、老子の思想と根本において矛盾してはいない、とも言われています。

 でもねえ。私はどうも、この章は・・・根本的に老子の思想とズレているように思えてならないのです。

 だってねえ。
 「どうしても用いなければならない時」に、「貪欲でない」ように武器を使っうて、つまり相手に与えるダメージは最小限に抑えて、それで尚且つ侵略者を追い払うわけですよね?
 それって、相当きちんと整備・訓練された軍隊でないと、できない仕事です。
 「優れた武器は不吉な道具だ」なんて言ってる指導者の下で、そんな軍隊が育つでしょうか?
 そんな「不吉な道具」を持たされる兵隊の、士気が上がるでしょうか?
 いざ戦争となったら、指導者はとにかく戦意を高揚させようと、躍起になるというのに?(でないと、勝てる戦も勝てなくなる)

 あちらこちらで国同士の小競り合いがあった時代に生きていた老子が、こんなリアリティの無い表現をするでしょうか?
 そもそも、武器を使わなければ「ならない」なんて表現をする時点で、老子らしくないのです。
 じゃあ、もし侵略者が攻めてきたら、老子ならどうするべきだと言うでしょうか?
 
 いや、結局個人的な推測に過ぎないのですが。
 老子なら、「侵略されたなら、無理に戦ったりせずに、他所の土地に逃げれば良い」ぐらい言いそうな気がするのです。
 そういうことを含めて、老子は「小国寡民」を理想としたのではないかと。

 「土地を捨てて国民全員で逃げるなんて、できっこない」とか、
 「それは既に国家として成立していない。むしろ無政府主義だ」とか、
 「そんな指導者の下では、国民は幸福になれない」とか言われそうですが。

 私は「戦わずに逃げる」ことの是非はともかく、やはり老子なら、軍事力を頼みとするような選択はしないのではないか、と思うのです。 

 ※この記事は、別のブログから転載しました。カテゴリー改訂「引っ越してきた記事」参照。

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