夏樹智也の趣味の小屋

時間泥棒に取り憑かれた人間が気まぐれに趣味に走る。

宇宙戦艦ヤマト2199二次創作外伝 第二次内惑星戦争 第6話

2020-09-28 18:00:00 | 第二次内惑星戦争
この作品は本編にて一切描かれていない第二次内惑星戦争について取り扱ったものです。
また一連の文章の設定はアニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』、『宇宙戦艦ヤマト2202』及び八八艦隊様の小説『女王陛下のウォースパイト号』に基づいてはおりますが、これらの設定で描かれていない部分などや個人的趣向を優先したいところは、独自設定を用いています。予めご了承ください。
拙い文章ですので過度な期待はしないでください。




「あぁ…」右腕と右足の感覚が無いとエメラルダスは感じる。
宇宙服のまま宇宙に投げ出され、漂い続けているが生きているのが奇跡というべきだが、そんな幸運はそう長くは続きはしない。
と考えていると目の前に宇宙服を着た男たちが来た。
《ゲイメン ズィ レン ガァープァーオンゲル ズィン イン ズァラ アーパキシリス》と聞き取れない言葉を喋り、私の身体を目玉のような光が怪しく光る船に回収する。
ここで私の意識は一度途切れる。


国際法を無視し、罪なき市民を殺戮するこの22世紀。

2182年5月24日世界同時事変以降、世界は正義という狂気的な大義名分を掲げ、自己正当化をし、
テロリストと同じ民族に死をと言わぬばかりの虐殺行為を繰り広げた。
一般の非戦闘員が暮らす、スペースコロニーを破壊し、そのコロニーの外層を火星に落とし、さらなる死傷者を出した。
テロリストがマーズノイドであったから、マーズノイドはテロリストであるという必要十分条件は成立することはない。
当然のことながら、この文を読む貴方があなたのいる世界の事を重ねてどのような思考を張り巡らせるのもそれは個人の自由です。

しかしどこの世界でも貴方の見えない所では惨劇が繰り広げられていることでしょう。
しかしその真意や背景はただ聞いているだけでは耳には入りません。

火星人は民衆に殺されたのです。
しかし、その民衆は虐殺を知った瞬間手のひらを返し、虐殺に対しての抗議を行った。
彼らの対岸に対する感情はその程度であったのだ。
しかし彼らはその後マーズノイドに対してかなり厳しい圧政を強いることとなります。
そして新たな敵。
さて、神の居ない第2幕が始まる前に、彼らのその後を描いておく必要があるでしょう。

2183年1月17日火星共和国は国際連合加盟国に対して無条件降伏。

しかし、その後の講和会議にて連合側が出した条件がとても反動的で過酷であった。

・火星全土の統治状態を第一次内惑星戦争以前へ戻す。(2169年時点へ)

・火星全人口の地球への強制移送。

・火星共和国解体。

・火星軍の兵器及び技術、人員の没収。

が主な要件であり、その内二番目が世間の批判を呼んだ。

戦時における文民の保護に関する1949年8月12日のジュネーブ条約の規定に反するからだ。

「 第49条 被保護者を占領地域から占領国の領域に又は占領されていると占領されていないとを問わず他の国の領域に、個人的若しくは集団的に強制移送し、又は追放することは、その理由のいかんを問わず、禁止する。 」

この条文に接触するのではないかと国連総会、そして安全保障理事会などで議論されたが
言い分としては攻撃によって火星のインフラが崩壊、このままでは社会生活は困難な為、人道的な見地からの移住であり、強制的ではないというのが言い分であり、
テロの被害や遊星爆弾の被害を大きく受けたアメリカ、中国、ロシア、インド、フランス、ブラジル、ドイツなどはこれを支持した。


しかし、拒絶した住民を現地兵が惨殺したというMI6やDAISの情報や、社会インフラの整備の支援をすれば良い為、強制移送実行は国際法違反であるという反論を受ける。
イギリス、日本、タイ、オーストラリア、カナダ、ベルギー、フィンランドなどはこの言い分に賛同し、強制移送反対を訴えていたが、結局移送は実行されることとなってしまった。



2183年 6月25日 ヨーステンポート

紅い目をしたマーズノイドたちは銃を突きつけた兵士たちに促され、輸送船に乗り込ませられることになっている。
脱走しようものならアサルトライフルが身体を貫き、射殺される。

そこに自由などはない。


「おにいちゃん……」と白髪で緋眼の2歳ぐらいの子が泣いている。
「大丈夫…玲…大丈夫だよ…」とお兄ちゃんと呼ばれていた7歳くらいの少年が抱きしめている。
「よし!移動しろ!」と待合室に銃を持った兵がやってきて、マーズノイドを輸送船に乗り込ませる。

「しかし、強制移住とは…国際法的にどうなのかね」と管制塔に詰める国連宇宙軍兵が呟く「そもそもこの火星人移送は、安保理決議に基づく崇高な大義を実現するためのものです。」と准将は言う。
「はっはあ…」
「この大義に背くものは、結果として第二次世界大戦以来人類が築き上げてきた国際秩序の破壊を目論むものと言わざるを得ません。」と半ば脅しのような事を言う。

「小官の言うところは誤っておりますでしょうか」
「いえ……何も」と兵はその後黙り込んでしまった。

《移送船第25号発進します。》と無線が入り、
無機質な輸送船は火星の大地を発つ。
しかしマーズノイドたちの乗るキャビンの窓には火星、自らの故郷が映し出されている。
移送された火星人はその後その紅い目によって差別に苦しみ、虐めや就職が出来ないなど、様々な苦痛が襲い、
ガミラス戦役までに、移住したマーズノイドの約4割が死亡した。
虐めや嫌がらせによる自殺やその理由は就職できず、収入も入らないまま餓死などが大半を占めていた。
そして、そのようなことが起きないように経済的な支援や人道的な支援をした国が少なかったからこのようなことが起きたとも言える。


だんだん遠くなる故郷にマーズノイドたちは何を思ったのだろうか。
そして故郷から遠い、神の居ない地球で何を思ったのか。

それは私達地球人にはまだ分からない。



第二次内惑星戦争 終




2183年5月17日 火星共和国は昭南平和条約に調印、火星共和国は事実上解体された。

2183年6月1日 国連統治に戻った火星にて、マーズノイドの集団移送が開始される。

2185年11月25日  マーズノイドの人権を求める運動が各地で激化、各国は対応したが、根の部分は変わらなかった。




2191年4月1日 天王星観測ステーションにて外宇宙からの未確認船を観測。

ガミラス戦役が始まる。








「君のおかげで我々の潜入工作員がテロンに潜り込むことができた。君には感謝するよ」と白髪混じりの初老の男は言う。

「礼には及びません。………復讐の機会が与えられるのであれば。」とコートに身を包み、右手右足が機械で作られた金髪の男は言う。

「総統の計画もあと少しだ。ここゾル星系外縁部前哨基地も人工太陽の完成を待つのみだ。」と白髪混じりの男は言う。

「君には、私の右腕として対テロンの戦術を練る参謀として働いてもらおう。それなら君のことは本国には同じザルツ人として登録する。」
と白髪混じりの男は金髪の男に対して命令する。


「…………感謝の極み。」と顔を上げる。

その顔は火星共和国首相であり、第一次内惑星戦争では軍を指揮したジャックエメラルダスその人であった。

復讐の鬼よ。神の居ない第2幕の始まりの鐘が今鳴りはじめている。




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