ベラルーシの雑誌「ビブリヤテカ・プラパヌエ」2013年11月号に新美南吉童話の感想が掲載されましたが、それを日本語に翻訳しましたので、このブログでご紹介します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
芸術は心と大陸をつなげる
リジヤ・ボルネイキナ (ミンスク市立第19番ギムナジア学校 図書室司書)
たけのこや稚き時の絵のすさび
芭蕉
おとなは、だれも、はじめは子どもだった。
しかしそのことを忘れずにいるおとなはいくらもいない
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
「でんでんむしのかなしみ」も「あめ玉」もどちらも驚くべきお話です・・・。どちらも独自の世界が描かれていて、強い印象を持っており、記憶に長く残る話です。よくあることですが子どものころお話を読むと、その主人公がどうなるか気をもんだり、いっしょに喜んだりするものです。
新美南吉の『でんでんむしのかなしみ』に出てくるでんでんむしは、「カナシミハ ダレデモ モツテ ヰルノダ。ワタシバカリデハ ナイノダ。ワタシハ ワタシノ カナシミヲ コラヘテ イカナキヤ ナラナイ」というこの地上によくある出来事を理解できるのかどうかを提示しています。この作品は子供向けですが、日本の皇后が国際児童図書評議会第26回世界大会の講演で「少し大きくなると、はじめて聞いた時のように、『ああよかった』だけでは済まされなくなりました。」と語ったように、大人向けの作品でもあると言えます。
この作品を読んだとき、私はアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの「星の王子さま」を思い出しました。時間が経ってから読み返すことにより話が持つ深みをまたちがって感じることができるようになると思います。
新美南吉の作品は才能ある画家が描いた作品のようです。他の画家とは違う独自の画風、スタイル、色彩、言葉を持っています・・・。そうでありながら作品の1ページごとに日本人の気質、伝統、哲学が見えます。それでいて、世界中の人々に共感されるような共通点、たとえば人間がみな抱える問題、大切にしなければいけないモラルの価値などが象徴的に描かれています。つまり言葉や文化の違いはあっても相互に理解しあいながら大きな地球上で平和に暮らすという希望はあるということだと思いました。
新美南吉の童話が日本語から翻訳されました。これは日本文学と文化へ一歩近づいたということなのです。日本の魔法のような芸術の世界を理解できたり感じることが言葉の壁を障害にはならず、できるということなのです。
著名な日本の児童文学作家、新美南吉の生涯とその作品については本誌2013年6月号に掲載された辰巳雅子さんが書いた記事で紹介されています。ベラルーシの人たちにとって、新しいページ、新しい世界への扉が開かれたのです。
ベラルーシのお話はベラルーシ人にとってとても親しみを感じ、近しいものでよく理解できるし、人気があります。日本のお話は新しい世界です。そこには人間と自然が一体化している神話があり、桜の花が咲き乱れ、富士山の頂に雪が抱かれています。桜色の花畑の上には黄色い菊の花びらが散り、日本の長い歴史が息づいています。
相互理解と友情は出会いと交流が出発点です。日本文化情報センターが開催した着物展に第19番ギムナジア学校の生徒が訪問し、大きな印象を受けました。全員着物展に来たのは初めてだったので好奇心いっぱいでした。着物は興味深く、独特な文化だと感動しました。
私が最初に辰巳雅子さんと出会ったのは2011年にミンスクで行われたシンポジウム「チェルノブイリ原発事故25年 図書館が社会の中で受け持つ役割」でした。そこで私は学校の図書室での取り組みを発表しました。辰巳さんの発表は印象深く、感動的でした。初めて私はチロ基金について知り、そのボランティア活動について話を聞きました。そしてチロ基金の活動を行っている人が日本文化情報センターの代表を務めていることや、献身的に文化プロジェクトを行い保養対策にも力を注いでいることも知りました。これがベラルーシで現実的な支援となっているのです。私は辰巳さんと知り合いになりたいと思いました。なぜなら我が校にとって日本というテーマはおもしろいだけではなく、全く目新しいものではなかったからです。
私たちの学校の生徒は日本についてただ聞いたことがあるだけではありません。このテーマは身近に感じているものです。日本からの代表団が何度も訪問したことがあります。日出ずる国日本のことをお客様たちから知ることはいつもうれしいことです。ギムナジアに辰巳さんが訪問したこともあります。図書室のために日本についての多くの貴重な文献を寄贈してくれました。こうして「桜の国」の1ページが新しく加わったのです。生徒のために日本語や文化、伝統についての話を辰巳さんはしてくれました。生徒にとってこれは心によいだけではなく、友情の新しい架け橋が毎年のように強く広がっているということなのです。生徒の代表団はこの夏ミンスクの姉妹都市である仙台を訪問しました。
私たちは学校と日本文化情報センターとこれからも協力し合い、辰巳さんとの交流を続け、興味と対話を持つことによって友情を保ち、ベラルーシと日本の文化交流を広げていきたいと願っています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
芸術は心と大陸をつなげる
リジヤ・ボルネイキナ (ミンスク市立第19番ギムナジア学校 図書室司書)
たけのこや稚き時の絵のすさび
芭蕉
おとなは、だれも、はじめは子どもだった。
しかしそのことを忘れずにいるおとなはいくらもいない
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
「でんでんむしのかなしみ」も「あめ玉」もどちらも驚くべきお話です・・・。どちらも独自の世界が描かれていて、強い印象を持っており、記憶に長く残る話です。よくあることですが子どものころお話を読むと、その主人公がどうなるか気をもんだり、いっしょに喜んだりするものです。
新美南吉の『でんでんむしのかなしみ』に出てくるでんでんむしは、「カナシミハ ダレデモ モツテ ヰルノダ。ワタシバカリデハ ナイノダ。ワタシハ ワタシノ カナシミヲ コラヘテ イカナキヤ ナラナイ」というこの地上によくある出来事を理解できるのかどうかを提示しています。この作品は子供向けですが、日本の皇后が国際児童図書評議会第26回世界大会の講演で「少し大きくなると、はじめて聞いた時のように、『ああよかった』だけでは済まされなくなりました。」と語ったように、大人向けの作品でもあると言えます。
この作品を読んだとき、私はアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの「星の王子さま」を思い出しました。時間が経ってから読み返すことにより話が持つ深みをまたちがって感じることができるようになると思います。
新美南吉の作品は才能ある画家が描いた作品のようです。他の画家とは違う独自の画風、スタイル、色彩、言葉を持っています・・・。そうでありながら作品の1ページごとに日本人の気質、伝統、哲学が見えます。それでいて、世界中の人々に共感されるような共通点、たとえば人間がみな抱える問題、大切にしなければいけないモラルの価値などが象徴的に描かれています。つまり言葉や文化の違いはあっても相互に理解しあいながら大きな地球上で平和に暮らすという希望はあるということだと思いました。
新美南吉の童話が日本語から翻訳されました。これは日本文学と文化へ一歩近づいたということなのです。日本の魔法のような芸術の世界を理解できたり感じることが言葉の壁を障害にはならず、できるということなのです。
著名な日本の児童文学作家、新美南吉の生涯とその作品については本誌2013年6月号に掲載された辰巳雅子さんが書いた記事で紹介されています。ベラルーシの人たちにとって、新しいページ、新しい世界への扉が開かれたのです。
ベラルーシのお話はベラルーシ人にとってとても親しみを感じ、近しいものでよく理解できるし、人気があります。日本のお話は新しい世界です。そこには人間と自然が一体化している神話があり、桜の花が咲き乱れ、富士山の頂に雪が抱かれています。桜色の花畑の上には黄色い菊の花びらが散り、日本の長い歴史が息づいています。
相互理解と友情は出会いと交流が出発点です。日本文化情報センターが開催した着物展に第19番ギムナジア学校の生徒が訪問し、大きな印象を受けました。全員着物展に来たのは初めてだったので好奇心いっぱいでした。着物は興味深く、独特な文化だと感動しました。
私が最初に辰巳雅子さんと出会ったのは2011年にミンスクで行われたシンポジウム「チェルノブイリ原発事故25年 図書館が社会の中で受け持つ役割」でした。そこで私は学校の図書室での取り組みを発表しました。辰巳さんの発表は印象深く、感動的でした。初めて私はチロ基金について知り、そのボランティア活動について話を聞きました。そしてチロ基金の活動を行っている人が日本文化情報センターの代表を務めていることや、献身的に文化プロジェクトを行い保養対策にも力を注いでいることも知りました。これがベラルーシで現実的な支援となっているのです。私は辰巳さんと知り合いになりたいと思いました。なぜなら我が校にとって日本というテーマはおもしろいだけではなく、全く目新しいものではなかったからです。
私たちの学校の生徒は日本についてただ聞いたことがあるだけではありません。このテーマは身近に感じているものです。日本からの代表団が何度も訪問したことがあります。日出ずる国日本のことをお客様たちから知ることはいつもうれしいことです。ギムナジアに辰巳さんが訪問したこともあります。図書室のために日本についての多くの貴重な文献を寄贈してくれました。こうして「桜の国」の1ページが新しく加わったのです。生徒のために日本語や文化、伝統についての話を辰巳さんはしてくれました。生徒にとってこれは心によいだけではなく、友情の新しい架け橋が毎年のように強く広がっているということなのです。生徒の代表団はこの夏ミンスクの姉妹都市である仙台を訪問しました。
私たちは学校と日本文化情報センターとこれからも協力し合い、辰巳さんとの交流を続け、興味と対話を持つことによって友情を保ち、ベラルーシと日本の文化交流を広げていきたいと願っています。