新・南大東島・沖縄の旅情・離島での生活・絶海の孤島では 2023年

2023年、11年振りに南大東島を再訪しました。その間、島の社会・生活がどのように変わっていったかを観察しました。

廃棄物の処理

2023-08-07 15:18:24 | 旅行

  一般家庭ゴミや資源ゴミは、村役場のパッカー車や資源回収車で回収し、焼却するか素材別に分別してリサイクルしている。それ以外の焼却できない廃棄物は本州と同様に有料で処分されている。産業廃棄物は、金城重機土木、大成、丸憲が処分業者として指定されている。これらの企業は土木・建築会社であり、自社からも建築廃材などを廃出しているからである。
  家庭から廃棄される、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、テレビについては家電リサイクル法により有料で回収されている。南大東島でもこの法律に従い、一般家庭から出される家電4品目は全国共通の費用を支払って回収されている。島には2か所の集積場があり、そこに自ら持ち込むか指定された電気店(南大東島では奥山電気しかありませんが)に回収を依頼する。一段目の写真は在所集落にある集積場で、粗大ゴミが品種別に集められていた。ここで一定の数量まで粗大ゴミが溜まると、まとめてコンテナーで那覇に搬送している。島から那覇までは船で400キロメートルもあるため、内地と比べ運送費が嵩む。このため、地域による処分費用の平等化を図るため、家電4品目の回収手数料の徴集代行をしている家電製品協会では、離島対策事業協力として運搬費用を助成している。しかし、過去に事業協力が決定した対象の市町村で、南大東村は2017年度(平成29年度)に一度だけ助成金を受領しているだけである。同じ沖縄県の宮古島市では、毎年のように助成金を受領している。南大東村が支援の要請をしなかったのは、財政的に余裕があったためかもしれない。
 また、耐久年数が過ぎた廃車は、自動車リサイクル法により解体業者などに引き取ってもらい、分解して有用資源を回収している。しかし、島には解体業者が無いため、やはり船で那覇まで搬送する必要がある。大東海運を利用して軽四輪車を搬送すると5万円弱、普通自動車では6~7万円かかるらしい(重量、車種によって運送費が相違する)。これでは内地の消費者に比べて負担が大きくなるので、自動車リサイクル促進センターでは離島対策支援事業を実施している。この支援制度では、那覇までの運賃の最大8割を上限とした助成金が支給されている。
 二段目の写真は、業者に回収を依頼せず放置された廃車である。数多くは見かけられなかったが、島の所々で廃車を見かけた。私有地に置かれていることから放置車でないため、役場としては業者への引き渡しを強制する訳にもいかず困っているらしい。沖縄の離島の多くは公共交通機関が無いため自家用車の普及率が高く、放置車が多くなった時期があり、社会問題となった。このため、2007年には行政代執行により離島の放置車を一掃したこともあった。沖縄の離島によっては、自動車を持ち込む際に廃車保証金を徴集する自治体もあるらしいが、南大東島では実施されていない。
 さて、島内のあちこちを歩いて感じることは、どこも奇麗なことです。道路にはペットボトルは落ちておらず、集落には煙草の吸殻が見当たらない。島民の環境に対する意識が高く、常に清掃が行われているからと思われた。島民の意識が高くなったのは、2012年より始まった循環型社会形成計画の影響があるらしい。狭い島で全ての廃棄物を処理するには、排出量の抑制、ゴミの分別回収などを実施して環境の負荷を軽くする必要がある。このため、村では循環型社会へ移行するための啓蒙活動を実施し、ゴミ処理への意識を高めてきた。島が奇麗なのは、この啓蒙活動の成果であろう。
 各集落では、年に一回住民総出で清掃活動しているらしいが、その他に2023年には島外からボランティアを集め、美化活動を実施している。これは、清掃活動に賛同する島外の人を募集し、島までの旅行費用を支援しようというキャンペーンであった。旅行費用の6割を援助する、という大判振る舞いの事業で、主催したのは「島まーる」という離島を紹介する沖縄県企画部であった。
 三段目の写真は空港ロビーに設置された分別ゴミ箱である。都内の各駅からはほぼ全てのゴミ箱が撤去されたが、島では住民の協力により一般ゴミを分別して回収していた。