長良川の川漁師、大橋さんが使う不思議な道具。それは冬眠するうなぎを傷つけずに引っ掛ける道具だった。昔は冬に行ううなぎ漁は年間を通じた川漁の中でも,良いお金になったという。その冬眠場所「うなぎの寝床」はいまは河川改修で無くなってしまった。 うなぎが減少している原因には、越冬場所が無くなっていることも大きいのではないか?
長良川の下流域、サツキマスの漁は川掃除から始まる。川漁師の大橋兄弟は3月下旬ともなると、風の無い日を選んで川に出る。サツキマス漁はトロ流しという独特の刺し網で行う。網を流すのには、河床にゴミが無いことが大切だ。上流から流れて、大橋さんの漁場に溜まるゴミの量は、毎年二トントラックほどにもなる。
大橋さんが奇妙な道具を手にしている。金属の平たい棒が長刀の様に曲がっているが、刃があるわけではなく、先端は外側に反り、細い溝になっている。
「昔は、冬になると、これでうなぎをとりよった」
その道具は鋼でできていて、以前、近所の鍛冶屋さんが作った。力を加えてもその溝が折れることは無いという。
2015年夏、伝統漁業についての企画展示が、埼玉県立川の博物館と栃木県立博物館で同時期に開催された。
目に付いたのは「うなぎかき」という冬眠するうなぎを捕る道具だった。荒川(埼玉県)では「ウナギカキ鎌」。栃木県内、思川、渡良瀬川などで「ウナギヤス」という道具を使ったという。共通するのは、先端が櫛のような突起になっていることだ。その突起でうなぎを引っ掛ける。
長良川に戻って大橋亮一さんに「うなぎかき」の話をした。私は、先が尖っていては捕ったうなぎに傷がつく。長良川の道具はうなぎを傷つけない優れた道具だという感想を述べた。大橋さんは、それもあるが、漁法が違うと言った。
「ここいらでは、漁は二人でした。一人が船の脇にカギ棒をもって固定する。もう一人が陸から、船ごと綱で曳いた。うなぎはひととこに、何匹かいたから、まとめて二,三本は捕れた」
かっての、長良川とその支流は、うなぎの冬眠する「うなぎの寝床」が至る所にあったという。うなぎの川でもあったのだ。
あの道具、正しくはなんと呼ぶのだろう。「うなぎ掻き。いまはゴミ掻き」。大橋さんは言った。
(魚類生態写真家)
うちでは最近、生前整理と称して倉庫/車庫の整理をしておりますが
漁具関係もわずかながら出てきております。
中には田んぼで使うものか舟で使うのか不明なものも、、、
処分に関してのご意見を伺いたく思いますので
こちらにお戻りの際声をかけていただけたらと思います。