リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

岐阜新聞 「鮎の12か月」 連載 2007年 9月

2008-01-01 21:23:51 | アユの12ヶ月 川面からの記録
 1989年の11月から翌年の1月にかけて、ぼく達は海に下るサツキマスに電波発信機を付けて追跡調査を行っていた。
 郡上八幡の吉田川合流部からスタートして、移動しながらサツキマスを追いつづけた。一匹のサツキマスが長良橋付近まで下ったのを確認して、橋の下流右岸にテントを設営してベースキャンプにした。
 そのテントにはいろいろな方が差し入れを持って訪れたが、その一人に彼女がいた。
「郡上八幡じゃないの?」
長良川の魚の話をしているときだ。長良川の鮎が産卵するのは岐阜の市街地だというと彼女はひどく驚いたようだった。

 長良川の鮎の一生はこんな具合だ。
 岐阜市内、藍川橋付近から羽島市の長良川橋辺りまでが産卵場所になる。産卵は9月下旬から10月下旬にかけて行われる。受精した卵は2週間くらいで孵化して流れによって下流に下る。生まれたときに持っている栄養分が限られているので5日目ぐらいまでに潮気のある場所にたどり着かないと死んでしまう。

 海水と真水の混ざった汽水という場所で鮎の仔魚(しぎょ)はプランクトンを食べて冬を過ごし、すこし大きくなると河口域の干潟で餌を食べる。そして、3月ごろに川に上ってきて、石の上の苔(藻類)を食べるようになる。
鮎は春から夏にかけて長良川の本流や支流のアマゴのいる上流まで遡上する。そして、夏の終わり頃から成熟して、秋の長雨のころ出水に乗って川を下り産卵場所に集まる。

「産卵の時には、小石の早瀬にオスが来て待っている。そこにメスがやって来て河床の小石の中に産卵するんだ。オスはガリガリに痩せて、自分の力で泳げなくなるまで、ずっとメスを待っているんだよ…」

 そう話すと彼女は鮎の産卵するところを見たいと言った。産卵は水中に潜らないと見ることは出来ないから、ぼくがビデオカメラで撮影して見せることにした。
「岐阜の人にも産卵するアユを見て欲しい。長良川の鮎の故郷が岐阜市内だということを知らない人が多いと思うから…」彼女の発案で「鮎の産卵を見る会」が始まった。
 ぼくと彼女、森野康子は「見る会」が縁で結婚し、テントを張った長良橋の近くの川沿いのマンションで暮らすことになった。

 17年が経過し長良川もその姿を大きく変えた。長良川河口堰の稼働以来、すっかり寂しくなった産卵場の鮎をみることは辛くもあるのだが、彼女が逝って9年。長良川の変化を見届けるためにも、今年も「アユの産卵を見る会」を行う予定にしている。

 おしらせ:「第18回 アユの産卵を見る会」10月13日、長良橋下流左岸、午後4時から。詳細はブログ「リバーリバイバル研究所」をご覧下さい。


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