リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

岐阜新聞 「鮎の12か月」 連載 2007年 8月

2008-01-01 21:19:45 | アユの12ヶ月 川面からの記録
 他県から来て岐阜市に住むことになった人の多くは同じ感想を抱くと思う。
街の真ん中の、こんな大きな川で人が泳いでいるなんて…。

 私が市内で最初に住んだのは長良橋の上流、鵜飼屋の川沿いのマンションだった。7月の始めに入居したが、部屋から見える対岸の河原になにやら荷物が積んであった。何だろうと思っていたのだが、ある日その荷物は組み上がって、小屋の形になった。海の家?いやそれは「川の家」だった。残念なことにその川小屋は十数年前に姿を消したが、川で泳ぐ人の姿は長良川のそこかしこに今も存在する。

 川で人が泳いでいる。それはもちろん長良川だけのことではない。私は浜名湖の畔にそだったが、泳いだのはもっぱら近くの川だった。 小学生のころはともかく毎日を川で過ごした。「唇がムラサキ色になったら陸に上がる」という仲間内の決まりがあった。互いに唇の色を比べて、ガタガタ震えながらもまだ、水の中で遊んでいた。そんな川も高校を卒業する頃にはすっかり様変わりしてしまっていた。

 河川遊泳型児童、つまりは「ミズガキ」という用語を最初に使ったのは、各地のドジョウの分布を研究していたKさんだった。魚類研究仲間が集まって飲んでいるときのことだ。どの地方の川にどんな魚がいたという話で盛り上がっているときに「どこそこの川にはミズガキが多い」というような話になった。
 ミズガキ?始めて聞き、どんな生き物かといぶかったのだが、彼はにやにやして川で泳いでいる子どもだよ。と言った。几帳面な彼は調べた川の生き物の詳細な記録を取っていたのだが、その項目の中にミズガキという生物もちゃんとあった。多摩川の流域に育ったKさんは、自身は川では泳いだ経験はあまりなかったそうだが、各地の川で泳ぐ子どもと遭遇して、川の生き物として記録するようになったのだという。

 私たちが定義する「ミズガキ」とはこんな生き物だった。

 川から徒歩か自転車で移動する範囲に棲んでいる。小学生ぐらいの集団から成り、年かさの子が小さい子の面倒をみている。涼しい午前中は少なく、主に午後に出現する。学校の夏休み頃に生息数が増え、お盆をすぎるころにその数は減少する。
そして、ミズガキの見られる川の条件はこうだ。

 早瀬に挟まれた流れの緩やかな淵があること。その淵に飛び込む岩があればさらに良い。岸辺には身体を温める滑らかな丸石の河原があること。
 つまり、瀬と淵が隣りあっている日本の川、鮎の好む川の条件と見事に一致している。

 すこし前まで、長良川はミズガキの生息数が日本で一番多かったと思っている。


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