リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

第3回 流されてメコン

2015-05-03 21:44:14 | ”川に生きる”中日/東京新聞掲載

メコンに通うこと25回目。思いもよらぬ出来事に遭遇した。

 メコンでは、竹で束ねたいかだの上のコテージに泊まることにしていた。二部屋隣り合わせで電気と温水完備、川面の眺めは素晴らしくメコン行きの楽しみでもあった。

 その日の朝、カメラ一台を持って岸に渡っていた。コテージへ戻ろうとすると、水位はわずかの間に上昇し、コテージをヤシの木に結っていた太いロープがほどけだしている。人を呼び、ロープを結び直そうとしたが、すでにヤシの木に届かない。残るは3本の細いロープがコテージと岸をつないでいるだけの状態。

 隣の部屋には英国人男女が泊まっていたが、起きてこない。私達の部屋には、カメラやパソコン、その他全てが置いたままだ。ロープを伝ってコテージに渡るしかない。防水バッグに貴重品だけでも入れて救い出そう。

コテージに渡ろうと、護岸の端に立つと、鉄筋棒が突き出ているのが目についた。コテージの下流側には新しいいかだが建設中。コテージの流れる方向を、建設中のいかだへ向ければ、いかだにぶつかって、コテージを止めることができるかも。

急いで、ロープの端を鉄筋棒に巻きつけて引っ張り固定した。その瞬間、岸とコテージとをつないでいた上流側のロープが鈍い音を立てて切れた。手にしたロープを握り、こらえる。はたして、コテージは鉄筋棒を中心に回転して、下流のいかだに激突した。やった。と思ったのも束の間、衝撃でいかだをつなぐロープは切れ、コテージと一緒に川の中央へと流れだした。

だめか。ロープが切れた反動でひっくり返っていた私が起き上がった瞬間、コテージにつながっていた電線が護岸の上を走り、私は水中に引きずりこまれた。

 水面に浮かぶと、いかだとコテージは,水路の中央を、下流のフランス統治時代の橋に向かって流れている。その橋を過ぎたら、その先には落差三十㍍,巨大な滝が控えている。ホテルフロントに小舟があったので、乗り込んで追いかける。危機一髪。

 コテージはいかだが組み合わさったことで、橋のアーチ部分に引っかかり止まった。隣の部屋の二人は、コテージといかだがぶつかった衝撃で目が覚めたという。着の身着のまま、岸に向かって泳ぎ、救助されたのだった。(2015/5/3)

 

 写真:流されてフランス統治時代の橋のアーチに引っかかった、コテージといかだ

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