リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

第18回  アマゴの宝庫とおく  長良川水系最後の手つかずの支流にダム建設が始まっている。

2015-11-30 15:03:31 | ”川に生きる”中日/東京新聞掲載


 雨が上がった午後、内ケ谷(岐阜県郡上市)に向かった。長良川の

支流・亀尾島(きびしま)川の上流域にその谷はある。紅葉は終わって山の木々は冬の姿。穏やかな流れの中、そこかしこ、瀬頭にはアマゴの産卵床が数知れずある。産卵期は終わり親魚の姿はもはやなかった。
 川沿いの工事用の仮設道路を一時間ほど歩くとコンクリートの塊が見えた。ダムの本体工事を開始するために、川の流れを迂回させるトンネルだった。
 一九八三(昭和五十八)年に建設が採択された内ケ谷ダムではあったが、二〇〇九年の「出来るだけダムに頼らない治水」への政策転換の流れを受けて国の事業評価の対象となった。一一年、計画地下流に住む私も住民説明会に参加した。私を含めて参加した方々の意見は建設見直しが圧倒的と見えたが、建設計画は継続された。
 今年九月、記憶に新しい鬼怒川での洪水被害があった。鬼怒川の流域の広さを指す集水面積は長良川の88%。鬼怒川の本流には四つの大規模ダムが建設され、ダム上流の集水面積は川全体の三分の一を占める。対して内ケ谷ダムの集水面積は、長良川全体のわずか2%。そして、ダムに溜めることができる水の量(治水容量)でみると、鬼怒川のダム群は内ケ谷ダムの十四倍もある。
 そのダム群が機能してなお、洪水は鬼怒川流域に大きな被害をもたらした。
 「亀尾島川は、開発の進んだ奥長良の中で俗化されていない自然美を誇っているとともに、県内でも有数のアマゴの宝庫にもなっており…」。この文章は他ならぬ岐阜県公式ホームページにある内ケ谷ダム計画地についての説明だ。
 事業費は当初の計画で二百六十億円、〇三年の再算定時で三百四十億円。さらなる増額が見込まれる巨大事業。そのダムは長良川に本当に必要なのか。今はすでに人の住まぬ山里の谷間から、あらためて問うてみたいのだ。(魚類生態写真家)
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