長良川では銀化アマゴのことをシラメという。そのシラメが海には行ってサツキマスとのなるのだが、河口堰が障害となって海に行けなくなっている可能性がある。我ら、サツキマス研究会の調査。
魚に麻酔をかけて、超小型の電波発信器を背中に付ける.
右は昨年事故で亡くなった柴田勇治さん。左はニイムラ。
小型電波発信器を付けたシラメ(銀化アマゴ) 発信器は天然ゴムで縫い付けてます。二週間ほどで切れて脱落します。
海の向かう魚
朝の空気が凍るころ、長良川の上流では穏やかな水面のそこかしこに、水の輪が広がった。その輪の下には魚の姿が。それは海に向かうシラメと呼ばれる魚の群れだった。
シラメは、渓流域にすむアマゴの中で海に下る準備をした魚だ。身体の変化は海水の塩分に備えるため。銀色になることから銀化アマゴとよばれる。アマゴは小田原以西本州の太平洋岸、四国九州の瀬戸内海に注ぐ川に分布するが、シラメはサツキマスの遡上する川にだけ現れた。
シラメを放流することで、サツキマスの数を増やせることを岐阜県水産試験場が実証している。1979年には放流したシラメの12.6%がサツキマスとなって翌春漁獲された。放流による資源保護が容易な魚として、長良川河口堰建設による影響は少ないと見なされていた。
どのようにシラメは海に向かうのか。私たちは超小型の電波発信器をシラメの背中に付け追跡調査をした。
94年は長良川河口堰が稼働する前の年だった。岐阜市内、鵜飼観覧場から放流した二尾は24時間で16キロ余を下り、満潮時に流れが遅くなるところから下りがゆっくりとなった。翌95年、同じ場所から4尾を追跡したが、河口堰によって流速が落ちる場所で移動が止まってしまった。シラメは自ら積極的に泳いで、海に向かうわけではないようだ。
河口堰の影響を避け、効率よく海に向かわせよう。2005年から長良川漁協らによって河口堰に隣接する人工河川にシラメを放流し「におい」を記憶させ、半ば強制的に海に放つ試みが行われている。しかし、サツキマスの漁獲数は激減した。川漁師大橋兄弟の今年の漁獲数はかっての千尾ほどが30尾に満たなかった。
河口堰稼働後22年。
放せばサツキマスとなって帰ってくるシラメだった。海と川との分断の時を経て、その特性は失われてしまったのではないのか。
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