リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

第72回 南の島のアユ リュウキュウアユとの出会い

2018-01-15 17:45:27 | ”川に生きる”中日/東京新聞掲載

南の島のアユ

 南の島に生きるアユがいる。鹿児島県奄美大島の川には本州、四国九州などとは異なる亜種、リュウキュウアユがすんでいる。リュウキュウアユは1970年代の後半までは、沖縄本島北部の河川でも見られたが、川は荒廃し絶滅した。

 1987年夏。広島大学の練習船「豊潮丸」の航海実習に便乗して、初めて奄美大島を訪ねた。当時の三代目豊島丸は320総トン。中型の遠洋漁船くらいのトン数だった。広島の宇品港を出港、瀬戸内海を航海する間は島影を楽しむ余裕もあったのだが、佐田岬を廻り、豊後水道に入ると次第に波は高まってきた。薩南諸島口永良部島に立ち寄り一泊。翌日は黒潮の本流を突っ切って南下した。船は揺れに揺れた。上も下もわからず、吐くものすらなく二段ベッドにしがみついている間に船は名瀬港に入った。

 翌朝、港でレンタカーを手配し、リュウキュウアユがすむという南部の川を目指した。当時、島を貫く国道58号にトンネルは一箇所だけだったと思う。センターラインの無い曲がりくねった道は山の際を走る。緑濃い樹林を抜け、峠を三つほど越し、三太郎峠という大きな峠を下ったところに、西仲間(現奄美市)の集落があり、ようやく川が見えた。下流の入り組んだ湾にはマングローブの林が広がり、もう一本、河口でも川幅二〇mほどの川が注いでいた。リュウキュウアユのすむという川だった。

 役勝川は河口から濁りがあった。アユのすむ中流域でも川は濁り、その姿は無い。濁りの先を辿ると、上流は皆伐され丸裸となった山。川には、重機が削った斜面から、濃い赤土の濁り水が流れ込んでいた。

 このままでは沖縄と同じように奄美大島でもリュウキュウアユは絶滅するのでは無いのか。

 南の島のアユを見たい。そう思い奄美大島を訪ねたが、その姿が見えぬまま、撮影をひとまずおいて、リュウキュウアユの保護運動を始めることになった。

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