あめつちの詩

「あめつち」に響く歌声の持ち主「にいや」こと「新屋まり」が奮闘の日々を綴る。

麻呂の余命問題

2024-05-20 | 愛犬がいる暮らし

麻呂はもらって来た。

あれから丸14年。

狆(ちん)は凄く珍しい。

我が家にはいつも犬か猫が居たが、

室内で飼うのは初めてだった。

お菓子を野放図に与えて内臓を

悪くさせた。

いつショック死しても

おかしくないという状態から

奇跡的に復活。

頸椎も悪いし副腎に良性の腫瘍が

あるとも言われた。

会陰ヘルニアで酷い便秘にも

苦しんでいた。

老体なので余命1年半くらい

でしょうかと言われたが

まあまあな状態で体調を

保持してきた。

あれから数年は軽く経過した。

が、初期に悪くした内臓は

戻らない。

薬を飲ませなかった間に、

心臓は悪くなっていた。

ついに肥大になった。

薬を飲ませなかった私のせいだ。

永遠には生きられないとは

分かっているが麻呂はいつも

こたつの中に寝ている。

その間隔が長くなったが

起きて来るのが当たり前に

なっている。

土日共、私はお稽古事で自宅に

いなかった。

日曜日の夕方電話をすると

母は不機嫌だった。

昼間に麻呂が具合が悪かった

という。

帰宅したらいつもどおり

こたつから這い出してきて

私にスリスリ。

先週から足元がおぼつかないので

フラフラはしているが

夕ご飯を食べた。

「ねえちゃんが帰ってきて

嬉しいねっ」と母が麻呂に言う。

21時母が寝た。

私は階上でゴソゴソしていた

0時を過ぎて階下へ。

麻呂がリビングで立ちすくんで

いた。

おしっこの匂いがする。

おしめを外して外に連れ出す。

リビングに帰ってもフラフラと

立っていて様子がおかしい。

母が言っていたのはこれかと思った。

抱き上げると手足に力がなく

だらりと垂らしている。

頭を私の腕に乗せて来る。

抱っこが大嫌いな彼なのだ。

身動きせもせずダランと抱っこ

されている彼。

ただ事ではないと思った。

しばらく経過しても変わらない。

そのままソファーに座って

妹に電話をした。

妹も麻呂をかわいがっている。

病院へは連れて行かないと伝えた。

麻呂にとって辛い検査をして、

入院させて、面会できなまま

お別れすることになるのは

避けたい。

妹はそうだねと言って

「麻呂が居なくなったら寂しい」

とため息をついた。

「明日、様子を見に行く」と

電話を切った。

抱っこしたまま1時間。

麻呂とは色々な場所に行った。

若いころは新聞紙を豪快に

破って見せたものだ。

かしこくて大人しくて意地がある。

強情ともいう。

体調不良で食べなくなった時

看護師さんが「食べないと死ぬ」と

麻呂の口をこじ開けようとしたが

吠えたりかみつくことなく

ひたすら口を食いしばって

とうとう開けなかった。

「大変ですね」と言われたっけ。

迷子になったこともあるし

私が不在の時に頸椎を痛めて

丸1日飲まず食わずだった

こともある。

何時間も何時間も私の帰りを

待っていた。

ごめんねとしか言いようがない。

たくさんの後悔が頭をもたげて

来る。

麻呂の心臓のトクトクという

音がどうか途切れないようにと

祈る気持ちしかなかった。

午前2時。

麻呂が動いて腕から降りたがる。

床に降ろすとヨロヨロと

足がもつれる。

ベッドにどさっと倒れこみ

大人しく横たわった。

このままお別れになるかも

しれないと覚悟した。

母はぐっすり寝ていた。

何度か声を掛けた。

「麻呂が死にそう」と言った時の

母の形相は忘れがたい。

「まあ、どうしよう!」と

怯えながら起き出した。

横になっていた麻呂はまた

起き上がりフラフラと歩いた。

今度は母が抱っこした。

「麻呂がおらんようになったら

寂しいの」

「いつまでも生きんでの」

「仕方ないの」

自分に言い聞かせるように言う。

しばらくして麻呂は母から

降りたがり歩きまわった。

復活した!

「歩くで~」と笑う母。

起きるにしては午前2時は

早い。

母は寝た。

午前3時。

うろついていた麻呂はやっと

こたつ内のベッドに入って寝た。

今朝、真っ先に麻呂の様子を

確認。

生きていた。

足元はおぼつかないが

外でおしっこ3回。

お昼ご飯も早めの夕ご飯も

食べた。

妹も見に来て安心した。

麻呂の不調と同時刻に

実は我が家でけが人が出た。

「まあ、悪い事ばっかり起こる!」

「何が起こるか分からん」と

母は沈痛な面持ちだった。

私自身の「もっともっと」が

麻呂と母を置きざりにし

不安にさせている要因でもある。

安穏な日常を大事にしたいと

思った次第だ。

 

 


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