ココヨリトワニ

野球と文章書きに生きる男、空気王こと◆KuKioJYHKMのブログです。(人が死ぬ創作文があります、ご注意を)

高木さん二次創作SS 「不思議の国の西片くん」

2020-11-01 20:25:09 | 二次創作
ニチアサがお休みでネタがないので、昨日pixivに投稿したSSをこっちにも載せておきます。
一日遅れのハロウィンになっちゃうけど、そこはご愛敬ということで。

――――

10月31日、土曜日の午後。
漫画を読んでいた西片は、そのまま眠りに落ちていた。


◆ ◆ ◆


気がつくと西片は、草原に立っていた。
そこは現実感がなく、どこかファンシーな雰囲気が漂っていた。
まるで、絵本の中にでも入り込んだようである。

「あれ? 俺、なんでこんなところに……。
 っていうか、この格好なに!?」

まずは見知らぬ光景に困惑した西片だったが、やがて自分の服装も奇妙であることに気づく。
シルクハットに礼服、首から下がるのは大きな懐中時計。
そして本人からは見えないが、シルクハットには兎の耳を模した飾りがついている。

「にーしっかた♪」

混乱しっぱなしの西片に、背後から声がかけられる。
彼が振り向くと、そこにはかわいらしいエプロンドレスをまとった高木さんの姿があった。
そのキュートな姿に見惚れそうになる西片だったが、すぐに思考を切り替える。

(高木さんのあの服って……不思議の国のアリスだよな?
 ってことは、俺は時計ウサギ?)

自分の服装のモチーフはわかったが、それだけではなぜ自分がこの服を着ているのかという解答にはならない。
高木さんなら何か知っているかも知れないと考え、西片は彼女に尋ねようとする。

「あの、高木さん……」
「トリックオアトリート!」

しかし西片の質問は、高木さんの高らかな宣言にかき消された。

「え、何それ……」
「今日はハロウィンだよ、西片」
「いや、そういえばそうだったけど……。
 アリスとハロウィン、何も関係ないじゃん!」
「ごちゃごちゃ言わずに、お菓子を出しなさーい」
「ええー……」

高木さんのペースに乗せられ、西片はお菓子がないかとポケットをまさぐる。
しかし、その中には何もない。

「ごめん、高木さん。
 今、お菓子持ってないみたいなんだけど……」
「そっかー。それじゃあしょうがないねえ」

高木さんが素直に諦めたと判断し、安堵の表情を浮かべる西片。
だが彼はすぐに、自分の考えが甘かったことを思い知る。

「なら、いたずらだー!」

そう叫ぶと、高木さんはどこから取り出したのか巨大な黄色い毛玉を西片に投げつける。
反射的にそれを受け止める西片。
直後、毛玉が綺麗に真っ二つとなり、中から凶悪な顔つきの赤い龍が飛び出してきた。

「うわああああ!!」

たまらず西片は大声を上げ、その場に倒れ込む。
それを見て、高木さんはケラケラと笑っている。

「本当に期待通りのリアクションしてくれるねー、西片は」
「ぐう……」

屈辱に顔をゆがめながら、立ち上がる西片。
そこに、さらなる追い打ちとなる一言が投げかけられる。

「言っておくけど、これで終わりじゃないよ?」
「へ?」
「西片がお菓子をくれるまで、いたずらは続くから」
「何それー!?」
「さあ、西片。トリックオアトリート!」


◆ ◆ ◆


メルヘンの世界を、西片は走る。
止まっていては、高木さんのいたずらの餌食となってしまう。
それを避けるには、なんとかお菓子を入手して渡すしかない。

「どこかにないかな、お菓子……。
 いや、その辺に落ちてるものでもないけど……」

走りながら、西片はせわしなく周囲を見回す。
やがて彼の視界に、屋外でテーブルを囲む三人組が飛び込んでくる。
よく見るとそれはクラスメイトの仲良しトリオ、ユカリ、ミナ、サナエだった。

「あれ、西片くんじゃない。そんなに慌ててどうしたの?」

西片に気づいたユカリが、彼に声をかける。

「いや、ちょっと追われてて……。天川さんたちは何を?」
「私たちは、お茶会を楽しんでたところよ」
「お茶会!」

西片の声が弾む。
お茶会ならばお菓子もあるはず。そう考えたのだ。

「あのさあ! 悪いんだけど、少しだけお菓子分けてくれない?」
「え、無理」
「なんで!?」

サナエにあっさりと拒否され、西片の顔が青ざめる。

「なぜなら、私たちがお茶請けにしてるのはトンカツだから」
「トンカツ!? なんで!?」
「西片くん! トンカツとDJは一緒なんだよ!」
「意味わからないよ!」

胸を張ってわけのわからないことをのたまうミナに、西片は全力でツッコむ。

「ああ、どうしよう。早くしないと高木さんに追いつかれ……」
「もう追いついてるよー」
「うわあっ!」

いつの間にか、高木さんは西片の背後に立っていた。
驚きで飛び退いた西片の眼前に、高木さんは日本刀を突きつける。

「いやちょっと、高木さん!
 それはシャレになら……わぷっ!」

あわてふためく西片の顔を、刀の先端から吹き出した水流が直撃する。

「み、水鉄砲!?」
「本当、西片はいい反応するねえ」

びしょ濡れの西片を見て、高木さんは屈託のない笑みを浮かべる。

「さーて、次は……」
「まだやるの!? いいかげんにしてよ、もー!」

泣き言を漏らしながら、西片は再び逃げ出した。


◆ ◆ ◆


次に西片が出会ったのは、器用に塀の上に座り込んで将棋を指している男女だった。

「どうした、ウサギの少年。ずいぶんと慌ててるじゃないか」
「あの! 初対面でこんなこと頼むのもなんですけど!
 何かお菓子を持ってたら分けてもらえないでしょうか!」

話しかけてきた女性に対し、西片はストレートに頼み込む。

「お菓子かー。私は持ってないな。
 歩、おまえはどうだ?」
「どうでしたかね……」

歩と呼ばれた男は、ポケットに手を突っ込む。

「うーん……。焼き鳥しかありませんね」
「いや、普通ポケットに焼き鳥入れないでしょ!」
「こいつのポケットは、無限に焼き鳥が出てくるんだ。すごいだろ」
「すごいけど! どういう原理なの、それ!」

焦る西片。どうせ高木さんはすぐに追いついてくるのだ。
一刻も早くお菓子を手に入れなければならない。
こんな茶番に付き合っている場合ではないのだ。

「早く、他の場所を探さないと……」

その場を離れようとする西片。だがその時、突如として地響きが周囲一帯を襲った。

「え、何!? 何!?」

周囲を見回す西片。
そして彼は、発見してしまう。
こちらに向かって歩いてくる、巨大な埴輪を。
そしてその頭上にたたずむ、高木さんの姿を。

「何でもありにも程があるでしょーっ!」


◆ ◆ ◆


巨大埴輪から逃げ回った西片は、立派なお城へとたどり着いていた。

「お城なら、お菓子があるかもしれないけど……。
 でも、アリスに出てくるお城っていったら……」

いやな予感に、西片はつい足を止めてしまう。

「残念。ためらったらもうアウトだよー」
「へ?」

突然、どこかから聞こえてくる声。
それに気を取られた隙に、地面から生えるように出現したトランプの兵隊たちが西片を包囲する。

「うわあっ! なんだよ、おまえたち!」
「残念、西片の冒険はここでおしまいだよ」

そう口にしながら、一人の女性が西片に歩み寄ってくる。
それは女王の衣装を身にまとった、大人の女性だ。
その顔に、西片は見覚えがあった。

「た、高木さん? いや、でも背が伸びてる……。
 というか、大人になってる?」

そこへ、もう一つの声が響く。

「手際いいね。さすが私」

それは、先ほどまで西片を追い回していたエプロンドレスの高木さんだった。

「え? 高木さんが二人?」

困惑する西片に対し、二人の高木さんはじりじりと距離を詰めていく。

「もう逃げられないよ、西片」
「二人でたっぷりいたずらしてあげる♪」

「うわああああ!!」


◆ ◆ ◆


「ん……」

携帯電話の振動音で、西片は目を覚ました。

「なんか、変な夢見てたような……」

寝ぼけたまま、西片は枕元の携帯電話を手に取る。

「誰から……あっ」

そこには「ハッピーハロウィン!」の文字と、エプロンドレスを着た高木さんの画像が表示されていた。 
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平成ジェネレーションズFOREVER二次創作 「青・春・再・燃」

2019-01-09 20:26:50 | 二次創作
※作中で語られない部分に関しては思いっきり独自解釈をぶち込んでいるので、そういうのが苦手な方はご注意を。

歴史を改ざんし、おのれが支配する世界を作り上げようとするスーパータイムジャッカー・ティード。
彼が放った怪物たちにより、街は地獄絵図と化していた。

禍々しい仮面と、黒服を身に纏った男たちが。
ボロボロの布を全身に巻き付けた怪物が。
星の力より生み出された忍者が。
槍を振り回す、灰色の悪鬼が。
異様な容貌を持つ、異界よりの侵略者が。
邪心をインプットされた、機械生命体が。
貌を持たぬ、漆黒の悪霊が。
異形の頭部を持つウイルスが。
そして下された命令に忠実に従う、機械仕掛けの兵士が。

無差別に人を襲い、街を破壊していく。
力なき人々は、理不尽な悪意に対しただ逃げ惑うことしかできなかった。
だがわずかながら、脅威に対し果敢に立ち向かう者達もいた。


私立天ノ川学園高校。
平時ならば多くの生徒で賑わうこの学校も、この非常時では閑散としている。
だが、全くの無人というわけではない。

「おうおう、お前ら! そこまでだ!
 何者かはしらねえが、神聖な学舎で好き勝手はさせねえぜ!」

学校の敷地に侵入してきた異形の群れに対し、一人の教師が啖呵を切る。
彼の外見で何より特徴的なのは、その髪型だった。
リーゼントヘア。もはや古典の域に達しつつある、不良のシンボルである。
教師にはおよそ似つかわしくないその髪型を、彼はきっちりとセットしていた。

「うう……」

啖呵を切られた異形たちは一瞬動きを止めたものの、すぐに前進を再開する。
そもそも彼らに、教師が発した言葉の内容など伝わっていない。
単に大きな音に反応して、様子を見ていただけである。

「止まる気はねえか……。だったら……全員まとめて、タイマン張らせてもらうぜ!」

相手にこちらの警告に従う意志がないと分かると、教師は力強く叫んで怪物たちに突進した。
まず、一番近くにいた屑ヤミーの顔面を躊躇なくぶん殴る。
続けて、ダスタードに跳び蹴り。
着地するやいなや、今度はマスカレイドドーパントにタックルをくらわせる。
次々と繰り出される攻撃に、怪物たちの対応は後手に回る。
何せ彼らは、集団で行動はしていても戦闘で連携を取れるほどの知能が無い。
ただそれぞれが、破壊衝動に任せて暴れるだけだ。
あるいは彼らが「オリジナル」の存在であれば、戦略を理解できるだけの知能を持っているものもいる。
だがここにいる怪物たちは、ティードの能力で再現された操り人形でしかない。
ゆえに、協力し合えば簡単に倒せる相手にも翻弄されてしまうのである。

とはいえ、教師の方が圧倒的に有利というわけでもない。
曲がりなりにも、怪物たちは皆人間を上回る身体能力の持ち主である。
一般人が一度攻撃したくらいで、戦闘不能になるはずもない。
いくら連携が取れていなくても多勢に無勢であることに変わりはなく、その数がいっこうに減らないというのは非常に厄介だ。
だがそれでも、教師の顔に弱気な感情は見られない。
闘志に満ちた表情のまま、終わりの見えない戦いを続けている。

「きーさーらーぎー!」

そこへ響く、新たな声。
声の主は、物陰から顔を出した痩身の男だ。

「どうした、大杉先生!」
「どうしたじゃないよ、如月ーっ! お前、無茶しすぎ!
 こんなたくさんの化け物、勝てるわけないだろーっ!
 程々で逃げておけよ!」
「そういうわけにもいかねえだろ! 放っておいたら、こいつらに学校がめちゃくちゃにされちまう!
 ここは俺にとっても、生徒にとっても大事な場所だ! ちゃんと守らねえと!」
「それはそうだけど! お前の命も大事だろ!
 お前が死んだら、みんな泣くぞ!」
「心配すんなって! 俺はそう簡単に死ぬような男じゃねえよ!」
「いや、如月! 前、前ーっ!」
「え?」

大杉の声に従い、向き直る如月。
そこには、自分の頭部めがけて突き出されるグールの槍があった。

(あ、これはさすがにやばい……)

如月の意識は、そこで途切れた。


気が付けば、如月弦太朗は土と岩ばかりの場所に立っていた。

「え、なんだ! どうした!
 どこだよ、ここ!」

状況が飲み込めず、困惑する如月。
その背後から、ふいに声がかけられる。

「まったく、情けねえなあ」
「誰だ!」

反射的に振り向いた如月は、あ然とする。
そこにいたのは、自分とまったく同じ姿をした男だったからだ。
いや、よく見ればまったく同じというわけではない。
身に纏っているのはスーツではなく学ランだし、顔立ちも幾分幼い。
そして腰には、奇妙なベルトを巻いていた。

「お前は……誰だ?」
「俺はお前だ。そんなの、一目見ればわかるだろ?」
「いや、そりゃどうみても俺だけど……。
 俺が俺に会うことなんてありえないだろ」
「まあ、普通に生きてればそうだよな。
 でもここは、夢の中みたいなもんだ。なんでもありなんだよ」
「なるほど、そういうもんか」

もう一人の自分の言葉に、如月はあっさり納得する。

「つうわけで、持っていけ」

学ラン姿の如月は、腰のベルトを外してもう一人の自分に投げ渡す。

「いや、持っていけって言われても……。
 これで何すればいいんだよ」
「使い方は、お前の魂が知ってるはずだぜ」
「……なんかそう言われたら、使ったことある気がしてきたな」
「それじゃ、がんばってくれよ。他のみんなにもよろしくな」

その言葉を聞いたのを最後に、如月の意識は再び遠のいていった。


「な、なんじゃこりゃあ!」

大杉は、素っ頓狂な声をあげていた。
それも無理もない。
自分の眼前で殺されそうになっていた後輩教師が、突如奇妙な姿へと「変身」したのだから。

「ああ、そうだ……。わかる……
 俺の魂は、こいつを知ってるぜ!」

一方の弦太朗は、確認するように拳をにぎりながら言葉を紡ぐ。

「仮面ライダーフォーゼ! タイマン張らせてもらうぜ!」

その叫びと同時に、弦太朗は地面を蹴って跳躍していた。
その拳が、槍を向けていたグールの顔面に叩き込まれる。
そのパンチの威力は、先ほどまでの生身のものとはわけが違う。
今の彼は、「仮面ライダー」なのだから。
グールは数メートル吹き飛び、地面に倒れてそのまま動かなくなった。

「さあ! どんどんいくぜ!」

弦太朗の勢いは止まらない。
バグスターウイルスが、眼魔コマンドが、彼の打撃で宙を舞う。

「あっ、なんか俺も思い出してきた……。
 そうだよ、あいつ仮面ライダーだったんだよ」

八面六臂の大暴れを繰り広げる弦太朗を見て、大杉は誰に言うでもなく呟く。
そんな中、弦太朗はベルトにセットされた四つのスイッチのうち、二つをまとめて起動する。

「後は、こいつでまとめて片付けてやるぜ!」
『ロケット・オン』
『ドリル・オン』

機械音声と共に、弦太朗の右腕にはオレンジ色のロケットが、そして左足にはドリルが装着される。

「ライダァァァァ!! ロケットドリルキィィィィック!!」

気合の入った雄叫びと共に、弦太朗の体がロケットの噴射で飛翔する。
そこから放たれるのは、ドリルを装備した脚での跳び蹴りだ。
縦横無尽に飛び回る弦太朗が、怪物たちをなぎ倒していく。
そして弦太朗が再び地面を踏みしめた時には、立っている怪物は一体たりともいなかった。

「やったな、如月ーっ!」

大喜びで駆け寄ってくる大杉に、弦太朗は拳を振り上げて応える。

「これでもう安心だな。……と言いたいところだけど。
 まだやらなきゃいけないことがあるんだろ?」
「ああ。俺は戦いに行かなきゃならねえ。
 先輩や後輩が、俺が来るのを待ってるんだからな」
「よし、行ってこい! ここは俺がなんとかするから!」
「そう行ってくれるとありがたいぜ。でも、無理はしないでくれよ?」

会話を切り上げると、弦太朗は歩き出す。
その視線の先には、いつの間にか彼の愛車であるマシンマッシグラーが現れていた。
弦太朗は手早くマシンにまたがり、エンジンをかける。

「待ってろ、みんな! すぐに俺も行くぜ!」

そして、弦太朗は走り出す。
世界を救うために。
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涼宮ハルヒのあっちこっち13 ~占い編~

2010-05-04 22:15:15 | 二次創作
TV『今日一番の運勢は名前がハ行の女の子。いつもよりちょっとだけ積極的になると、気になる彼との距離が縮まるかも☆』
ハルヒ「……」
   (カッ)

◇ ◇ ◇

ハルヒ(積極的積極的)
キョン「おはよう、ハルヒ」
ハルヒ「おはよう」
   (積極的積極的)
キョン「今日も冷えるなあ」
ハルヒ(ガシッ!)
キョン「ハルヒ? 俺の腕なんかつかんでどうした?」
ハルヒ「失敗した……」

◇ ◇ ◇

ハルヒ「どうしよう……」
キョン「?」
   「ハルヒ?」
ハルヒ「え、えーと……」
キョン「こうか?」(ハルヒの頭に手を乗せる)
ハルヒ(……違う!)

◇ ◇ ◇

ハルヒ(しゅー)
キョン「んー」
   (なでなで)
ハルヒ(う~)
みくる「……」
長門「……」
ハルヒ「!?」
長門「私たちのことはお気になさらず、摩擦で発火するまでどうぞ」
キョン「発火!?」

◇ ◇ ◇

長門「しかし涼宮ハルヒの方からおねだりとは驚いた」
ハルヒ「そんなことしてないわよ。朝の占いでちょっとあったの」
キョン「占いか……」
みくる「朝の占い、私も見ましたよ。たしか涼宮さんのは――」
ハルヒ「!!」
   (わしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ)
みくる「ふぇええええーっ!?」
キョン「あれも占いか?」
長門「違うと思う」

◇ ◇ ◇

鶴屋「おお、みくるの髪型がワイルドっさ」
朝倉「また何か楽しいことでもあったの?」
みくる「占いの話でいろいろありまして」
長門「涼宮ハルヒが彼の手を頭に乗せていた」
朝倉「いつものことじゃないの?」
みくる「いつも!?」
ハルヒ「……」
朝倉「あ、もしかして占いのラッキーワードとかの?」
キョン「頭に手を乗っけるとかもあるのか?」
鶴屋「今日のラッキーワードは――アイアンクロー?」
長門「もしくはフェイスクラッシャー」
キョン「大丈夫かその占い!?」

◇ ◇ ◇

朝倉「でも占いのラッキーワードってけっこう無茶苦茶よね。この本にもあったかな」
キョン「たしかに」
   「関連性もないしジャンルもとっちらかってるもんな」
朝倉「どうしようもないものもたまにあるしね」
キョン「載ってたか?」
朝倉「うん、このページ」
鶴屋「私は眼鏡だー」
キョン「猫」
朝倉「オーガニックレストラン」
ハルヒ「ハイキング」
みくる「デニムのショートパンツです」
長門「写経
みくる・鶴屋「写経!?」
朝倉「それを終えたらラッキーを得られるのかしら?」
キョン「徳は得られそうだがな」
長門「女の子向け雑誌なのに……」

◇ ◇ ◇

鶴屋「雪ん子、眼鏡持ってたよね、貸してー」
長門「かまわない」
鶴屋「これで私の運気がアップ! 外の当たりつき自販機に行ってくるよ!」
みくる「今行くんですか!?」
古泉「鶴屋さんがすごい勢いで駆け抜けていきましたが、何事ですか?」
キョン「古泉か。占いのラッキー試しに自販機に行ったらしい」

鶴屋「当たりが止まらず……」(どっさり)
古泉「すごいことになってます!」
朝倉「それは故障でしょ!?」
長門「観自在菩薩行」
キョン「長門は写経始めるな!」

◇ ◇ ◇

朝倉「すごい効果ね……」
キョン「偶然だと思うけどな」
鶴屋「キョンくんあげる」
キョン「皆に配ろう」
みくる「他に試せそうなのあるでしょうか?」
長門「観自在菩薩行深般若波」
キョン「だから写経はやめろ、怖いから」
長門「後は猫?」
古泉「猫なら彼が呼べば来ますよ」
キョン「なわけないだろ」
猫「にゃ」
一同「うしろー!?」

◇ ◇ ◇

古泉「しかし、どうして女性は占いやおまじないが好きなのでしょうね」
キョン「まあ、男に比べて興味は持ってそうだな」
古泉「占いの結果で一喜一憂するのはどうかと思うのですが」
キョン「そこまで依存してるわけじゃないだろ。何気ない日常の中にある、ドキドキやワクワクのきっかけをくれるのがいいんじゃないか?」
古泉「ああ――辛い日常を生きていくための知恵ですか」
キョン「重いな!」

◇ ◇ ◇

朝倉「おまじないっていえば小学生のとき、皆でやってたわね」
みくる「ありました。友達と仲良くとか恋のおまじないとかですよね」
鶴屋「いろいろ種類があったような――」
長門「そう」
ハルヒ「文房具とか、身近なものを使ったのが多くなかったかしら」
みくる「消しゴムに名前を書いたり」
朝倉「そうそう、シャーペンと芯使ったり、リップ使ったり」
長門「好きな人の――藁人形を作ったり」
キョン「呪いのアイテム混ぜんな!」

◇ ◇ ◇

みくる「おまじないはいつの間にかやらなくなっちゃいましたね」
長門「一回試したら終わってしまうのかも」
キョン「占いは毎回内容が変わるしな」
鶴屋「好奇心で見ちゃう人もいそう」
ハルヒ「ああ、それは多そうね」
朝倉「当たり外れは二の次だから、目的なくても見られるしね」
長門「よく言うあれ――」
  「当たるも自棄当たらぬも自棄」
キョン「元の言葉全否定か!」

◇ ◇ ◇

長門「相性占いも載っている」
朝倉「女の子にはこっちの方がポピュラーかしら」
みくる「でも相性占いって、悪い結果だとちょっと悲しいですよね」
朝倉「善し悪しはともかく、そういう点を気付けるって捉えた方がいいかもね」
鶴屋「楽しんだもん勝ちってことだね!」
古泉「とりあえずやってみましょうよ」
朝倉「えーと、涼宮さんとキョンくんは相性いいわね」
長門「それは皆知っている」
古泉「そんなわかりきったことより、他の人を調べましょう」
朝倉「それもそうね」
ハルヒ「……」

◇ ◇ ◇

キョン「でも占いの結果で相性がよくても悪くても、俺は気にしないかな」
長門「どうして?」
ハルヒ「相性いいのに……」
キョン「関わりない人がした占いの結果より、自分の気持ちが結果だと思うから。
    今こうして皆といると楽しいっていうのが大事かなと――」
一同「……」
キョン「いや……まあ勝手にそう思ってるだけなんだが……」
ハルヒ(キュン)
古泉「ははは」

◇ ◇ ◇

鶴屋「じゃあ私、皆と相性ばっちしだ!」
みくる「私もです!」
キョン「……」
長門「二人ともその辺で。彼が……」
古泉「ですが、相性がいいといわれて悪い気はしないでしょう?」
キョン「そりゃあ」
ハルヒ「何よ」
キョン「なあ」(ぽふ)
古泉「それは重畳です」
みくる「涼宮さん、占い当たったかもしれませんね」
キョン「?」
ハルヒ「つーん」
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涼宮ハルヒのあっちこっち12 ~調理実習編~

2010-04-27 23:06:22 | 二次創作
先生「週明けまでに調理実習の班を決めておいてくださいね。では今日はここまで」
ハルヒ(キョンとキョンと……)
長門「涼宮ハルヒ、ちょっと待って」
ハルヒ「何よ」
長門「同じ班で彼の手料理を食べるのもいいが」
   「そこをあえて別の班になってお手製の料理を彼に分けて『いいお嫁さんになれるな』と言われるのとどっちが……」
ハルヒ「そ、それを選べと……」
長門「言いだしておいてなんだが、そこまで悩まなくても……」

◇ ◇ ◇

調理実習当日

鶴屋「キョンくん、今日はよろしく~」
キョン「よろしく」
谷口「キョンがいるから美味いものができそうだな」
鶴屋「ハルにゃんの班は何作るの?」
ハルヒ「煮込みハンバーグよ」
キョン「ちなみにうちの班はハヤシライスだ」
長門「ハヤシライスとは珍しいチョイス」
朝倉「この前お店で鶴屋さんと食べたのが美味しくてね」
鶴屋「キョンくんに作ってってお願いしたのさ!」
ハルヒ「……」
    (かぷり)
キョン「お、あれ? 痛くない」
みくる「あまがみですかっ!!」
長門「やはり同じ班にもなりたかったらしい」

◇ ◇ ◇

朝倉「涼宮さん、本当にキョンくんと同じ班にならなくてよかったの?」
ハルヒ「いいのよ」
長門「それは――作った料理を食べてもらっていいお嫁さん~と言われたいから」
ハルヒ「……」
朝倉「なるほど、それは私もちょっと言われてみたいかも」
みくる「涼宮さん料理上手ですから、キョンくんきっと言ってくれますよ」
ハルヒ「ぷい」
朝倉「ところで長門さんは料理どうなのかしら?」
長門「……」
鶴屋「……」
朝倉「そこ、目をそらさない。鶴屋さんまで」
ハルヒ「わかりやすいわね」

◇ ◇ ◇

朝倉「そういえば玉葱で涙が出るのって直接目じゃないのよね」
キョン「辛子成分が鼻から入って刺激されるのが原因らしいな」
鶴屋「そうなのかー」

鶴屋「雪ん子ー☆」
長門「な」
鶴屋「目潰しっ☆」
長門「に?」

長門「…………!!!!」
鶴屋「目も効くよ!?」
キョン「そりゃ直接目にぶち込めば効くよ」

◇ ◇ ◇

谷口「つーかキョンがメインで作ってるけど、男子の料理って女子的にはどうなんだ?」
朝倉「嬉しいわよ」
鶴屋「だねー」
朝倉「谷口君だって女の子に手作り料理もらったりしたら嬉しいでしょ? あり得ない話だけど」
谷口「最後の台詞はいらないよな」
朝倉「だから逆の場合も嬉しいに決まってるじゃない。乙女心のわからない人ね」
谷口「乙女ねえ……。じゃあ俺が突然手作り弁当渡してきたら嬉しいのか?」
朝倉「キモい」
谷口「キモいとか言うなや!?」

◇ ◇ ◇

朝倉「冗談よ、冗談」
谷口「このやろ……」
キョン「鶴屋さん、フランベするからワインいいかな」
鶴屋「燃やすやつだね!」
谷口「それって何のためにやるんだ?」
キョン「んー、肉の臭みを消すためだな。後はワインで底についた旨みを取ったりとか」
鶴屋「臭いものには放火しろだね!」
朝倉「谷口君ちょっと汗くさくない?」
谷口「その発言はどんな展開を望んでるんだ、朝倉さん!?」
キョン「谷口に火を」
鶴屋「放つか!」
朝倉「谷口(燃)」
谷口「(燃)じゃねえ! (燃)じゃねえよ!」

◇ ◇ ◇

ハルヒ(ぺぺぺぺぺ)
みくる(ぺっとぺっとぺっと)
長門「何をやっているの?」
ハルヒ「焼き崩れとひび割れ防止よ」
みくる「ハンバーグはこうやってキャッチボールして空気を抜くんです」
長門「つまり、もし燃える魔球を投げられる人間が空気抜きのために投げたら――」
ハルヒ「何言ってるのよ」
みくる「食べ物を投げちゃ駄目ですよ」
長門「キャッチャーミットに収まった時には既に上手に焼けました?」
ハルヒ「それだとミットに収まった瞬間爆散するわよ」
みくる「ばくさん!?」

◇ ◇ ◇

朝倉「涼宮さんたちはもうすぐ完成かしら?」
ハルヒ「最後の仕上げ中よ」
みくる「とってもいい匂いが――」(くぅ~)

みくる「い、いいにおいが――」(くぅ~)
ハルヒ「……」
朝倉「あら、かわいい音」
みくる「はぅううううううーっ!」
長門「女の子らしい空腹音だったから、恥ずかしがることはない」
谷口「じゃあ女の子らしくない空腹音ってどんなのだ?」
鶴屋「ドゴーン!!」
キョン「そりゃ爆撃音だ」

◇ ◇ ◇

長門「しかし朝比奈みくるの気持ちもわかる。本当に美味しそ」(ぐぐうぅぅぅ)
朝倉「……」
長門「……美味しそう」
鶴屋「なかったことにしたよ!?」
朝倉「遠慮ない空腹感溢れる音だったから朝比奈さんのキュートな音の後で女の子としてやるせなくなっちゃった感じかしら?」
鶴屋「そーなのかー!」
長門「そこまで理解できているなら流してほしかった」

◇ ◇ ◇

長門「そちらの料理は終わった?」
朝倉「今キョンくんが作ってるので最後よ」
キョン「半熟の状態でオムレツにして」
鶴屋「うわー、ふわふわオムレツだね!」
キョン「ご飯に乗せて開いて、熱々ハヤシをかければ……たんぽぽオムハヤシだ」
長門・朝倉・鶴屋『……』
         『お婿に来てください!』
ハルヒ「!」(流れに乗れなかった)

◇ ◇ ◇

長門「よかったら、こちらの料理も食べてみて」
キョン「いいのか?」
朝倉「私もいいかしら?」
鶴屋「楽しみが二倍に!」
みくる「涼宮さんの特製レシピで作ったんですよ」
キョン「美味いな」
ハルヒ「キョン、あのね……」
キョン「ん?」
ハルヒ「いいおよめさ……おょめ……およめ……」
長門「サンバ」

(ドゴォォォォォン!!)

◇ ◇ ◇

朝倉「今のは長門さんが悪いと思うわよ……」
長門「ついつなげてしまった……」
キョン「何やってるんだ……」
朝倉「ほら、キョンくん。こういう時料理上手な女の子に言う台詞があるでしょ? 涼宮さんにね
キョン「……ふむ」
    「こんな素敵なお嫁さんの料理を食べられる人は幸せだな」
ハルヒ・みくる(だくだくだくだくだく)
朝倉「あれは来るってわかってても防御不可よね……」
鶴屋「しかも範囲攻撃だね!」
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涼宮ハルヒのあっちこっち11 ~校内放送編~

2010-04-09 23:19:40 | 二次創作
古泉「すいません、ちょっと来ていただけますか」
キョン「ん、何だ?」
みくる「どうしたんでしょうか?」
長門「購買で何かやっているのだろうか」
ハルヒ「何かあったかしら」

?『こーんにちわー。お昼の放送の時間です』

長門「外でサッカーとか?」
ハルヒ「そうかもね」

?『今日は風邪で休んだ憎いアンチクショウの代わりに突発ゲストの――』
古泉『あなたのお耳の恋人、クラスメイト古泉一樹と――』
キョン『ドナドナ(強制連行)された友人キョンと――』
?『マイクをパスする女、放送委員おなじみの佐々木でお送りします』

みくる・長門・朝倉・鶴屋「!!」

◇ ◇ ◇

佐々木『今日は月末のスペシャルなので、よろしければ教室のテレビ画面でお楽しみください』
ハルヒ「キョンがテレビ……」
みくる「生放送ですかー」
長門「見たい人挙手」
鶴屋「見るー」
朝倉「楽しそうね」
みくる「はい」
谷口「面白そうだな」
ハルヒ「はい!」
長門「満場一致でポチッとな」
みくる「涼宮さん、見やすいところにいきます?」
ハルヒ「別にここでいいわ」
    (くわ!)
みくる(ギョ!!)

◇ ◇ ◇

古泉「まあ飛び入りゲストのトークなんて退屈でしょうから、コーナーに行きましょうか」
佐々木「そんなことはないと思うけど……。では人気のお悩み相談」
    「このコーナーはお悩みに対し、私たちが切り捨てたり笑い転げたり泣き崩れたりするコーナーです」
古泉「解決する気ないんですか!?」
佐々木「冗談です。もちろん解決もやぶさかではありません」
キョン「やぶさか……。いや、ちゃんと悩みに答えてあげようぜ」
佐々木「お悩み遭難コーナー」
キョン「救助しろ」

◇ ◇ ◇

佐々木「では早速。『気になるあの人の落とし方を教えてください』」
古泉「まずは屋上に呼び出します」
キョン「意外にベタだな、お前にしては」
古泉『夕焼けと下校する生徒を見下ろしながら――』
  『高鳴る胸の鼓動を抑えてそっと彼の背中を――』
  『押す』
  「落ちます」
キョン「そりゃ落ちるだろ!」

◇ ◇ ◇

佐々木「落としどころが違いますよね!?」
古泉「衝撃的な告白でしょう?」
キョン「身も心もな」
古泉「あとは最後に一言付け加えるとさらに効果的です」
キョン「相手は眼下で地面にめり込んでるぞ。助けろ」
古泉『わたし……本気よ』
全校生徒「怖っ!!」
古泉「これであなたの気持ちが本気だと伝わるはずです」
キョン「伝えた先に未来がねえよ」
佐々木「みんなは真似しないでね!」

◇ ◇ ◇

古泉「では素直に屋上で『あなたを落とします』と告白するのはどうでしょう」
佐々木「何だかもう告白の言葉が脅迫の言葉に聞こえてきましたよ。恋愛相談なのに」
古泉「やはり一世一代の告白はインパクトがありませんと」
キョン「そんな告白一代も残すな」
古泉「告白ではなく告別の言葉になってしまうかもしれませんね」
キョン「何に別れを告げる気だ」
古泉「昨日までの私にさよなら」
キョン「なんだそりゃ」
佐々木「というか、間違いなく恋にさよならですって」

◇ ◇ ◇

キョン「気を取り直していこう」
佐々木「ですね。告白するのは悪いことじゃないと思いますが、勝算のない戦いはお薦めできませんね」
   「恋は戦争です! あらゆる智を巡らせて相手を籠絡するために戦略は必須! 女の子は生まれながらにして戦恋武将なのです!」
   「ちなみに私の使う計略は火計です。恋の炎で燃やします」
古泉「計略なら僕も使えますよ」
キョン「ああ――滑稽だろ」
佐々木「ぷっ!!」
古泉「使いどころないじゃないですか。『計』の字ですらないし」

◇ ◇ ◇

佐々木「『友達が好きな人相手に素直になれないみたいです。なんとかしてあげられないでしょうか』」
古泉「ツンデレなんですね」
キョン「ツンデレって」
古泉「『勘違いしないでよね! 別にあなたのことなんて何とも思ってないんだから!』といった感じですかね」
キョン「ああ、好きな人にそう言っちゃうのは素直になれてないのかもな」
古泉「『勘違いしないでよね! 別にあなたのことなんて好きなんだから!』」
佐々木「遠回しに素直になった!」
古泉「『勘違いしないでよね! 別にあなたがファッ○ユー!』」
佐々木「そして脅迫された!?」
キョン「ていうか日本語おかしいぞ」

◇ ◇ ◇

佐々木「でも相手がツンデレなら簡単な方法がありますよ」
キョン「いや、ツンデレで確定なのか? まあいいが」
佐々木「あの子ツンデレだよ、って言っておけば万事解決だと思うんです」
キョン「どう解決するんだ?」
佐々木「素直になれなかったときの言葉が逆の意味になります」
古泉「なるほど、言葉の意味を脳内で変換するわけですね」
キョン「つまり?」
佐々木「『別にあなたがファッ○ユー』」
古泉「結婚しよう」
キョン「意思疎通は大丈夫か!?」

◇ ◇ ◇

佐々木「お次は『好きな人がニブチンで、アピールしてもことごとくスルーされます。この困難に立ち向かう案を是非にご教授ください』」
古泉「ニブチンですか」
キョン「うーむ、鈍いのか」
佐々木「ニブチンですかー」
古泉・佐々木(じー)
佐々木「難しい問題ですね」
古泉「ええ、難解です」
キョン「君たち、なんでこっち見た」

◇ ◇ ◇

佐々木「にぶちーな人にはやはりストレートに伝えるのがいいとは思いますけどね」
古泉「そうですね……。当てはまる人材がこの場にいることですし――」
  「ものは試しです。にぶちーにストレートを投げて反応をチェックしてみましょう」
キョン『君が好きだ』
佐々木「スッ、ストライク!!」
古泉「……」
  「役が逆だぁ!!」

◇ ◇ ◇

古泉「失礼、絶妙のタイミングでのボケに我を忘れてつっこんでしまいました……」
佐々木「近年まれに見る動揺っぷりでしたね」
キョン「俺はボケたつもりないんだが」
佐々木「でも『好きだ』じゃアピールじゃなくて告白になっちゃいますよ」
キョン「というかもっと自然に、好きな人のために何かしてあげたいって気持ちで行動すれば、きっと魅力に気づいてくれると思うよ」
佐々木「……何だか乙女として負けた気がします」
古泉「ドンマイ」
キョン「あくまで俺の意見だからな」

◇ ◇ ◇

佐々木「そろそろ時間みたいですね。お二人とも今日はありがとうございました」
古泉「困ったときはまた頼ってくれてかまいませんよ」
キョン「聴いてた人が楽しめたかは怪しいけどな」
佐々木「いえいえ、楽しく進行させていただきました。今後お二人が恋に迷ったときは是非相談に来て――」
古泉「来ませんよ」
キョン「来ないぞ」
佐々木「即答っ!?」
古泉「むしろ佐々木さんが恋迷宮入りしたら相談してくれてかまいませんよ」
佐々木「いえ、古泉くんに相談したら失恋コースを亜音速でブッちぎってしまいそうなので遠慮します」
キョン「コースアウトして相手跳ね飛ばしそうだな」
古泉「友人が冷たいのですが相談に乗ってもらえませんか?」

◇ ◇ ◇

佐々木「では、最後にキョンくんに締めの一言をもらって終わりたいと思います」
古泉「レッツゴー」
キョン「なんだその振り!?」
佐々木「食欲に身をゆだねることなく飽くなき美への追究を胸に今日も昼食を控える健気な女の子たちに嬉し恥ずかしストロベリーな一言をどうぞ」
キョン「んー……」
   「明日の君は、今日よりきれいだね」
全校女子生徒(ブーッ!!)
佐々木「ということで今日は佐々木と古泉とキョンの三人でお送りしました。それでは午後の授業は教師のラリホーにご注意ください。また次回」
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涼宮ハルヒのあっちこっち10 ~クリスマス編(2回目)~

2010-03-29 22:17:48 | 二次創作
<ハルヒたちは古泉の家の喫茶店で臨時バイトをすることになりました>

ハルヒ「おはよう」
長門「おはよう」
キョン「おはよ」
古泉「皆さん来ましたね。では店に入りましょうか」

園生「お二人はキョンくんと店頭でクリスマスケーキの販売をお願いしますねー」
ハルヒ・長門『はい』
園生「サンタの衣装で」
長門「サンタ?」
キョン「……園生さん、俺は制服ですよね?」
園生「お願いしますね? きっと似合いますから」
キョン「……はい」
長門「彼が押しに負けている。貴重な光景」
古泉「姉は彼の数少ない弱点の一つだったりします」

◇ ◇ ◇

長門「とても似合っている」
キョン「そんなことないだろ……」
古泉「惚れ惚れするほどサンタですよ」
長門「サンタはどんなドキドキするプレゼントをくれる?」
古泉「それはもちろん、ドキがムネムネするプレゼントでしょう」
キョン「……」
    「いい子にしてたら ときめきをあげる」
ハルヒ(ブッ)
みくる(ブーッ)
キョン「――とか?」
古泉・長門「ときめき!?」
園生「あらあら」

◇ ◇ ◇

キョン「ハルヒ、長門」
ハルヒ「ん?」
長門「どうかした?」
キョン「はいこれ」
長門「カイロ?」
キョン「ずっと外にいると冷えるから、使ってくれ」
ハルヒ・長門「……」(キュン)
長門「優しさカイロでぽかぽかに……」
ハルヒ「カイロいらず」
キョン「?」

◇ ◇ ◇

古泉「二人とも、寒くは――と、涼宮さんは何か暑そうですね」
ハルヒ(しゅー)
長門「涼宮ハルヒは彼に熱中症」
古泉「長門さん! 熱中症を区切って言ってみてください!」
長門「えーと、涼宮ハルヒは彼に」
   「ねえ、ちゅうしよう」
みくる「接吻迫ってますー!?」
キョン「接吻て」

◇ ◇ ◇

キョン「じゃあ張り切って売ろうか」
ハルヒ・長門『おーっ!』
キョン「いらっしゃいませー。クリスマスははちぽちのケーキで過ごしませんか?」
ハルヒ「……」
    (キョンの笑顔……)(たり)
長門「涼宮ハルヒが張り切りすぎて鼻血を……」
キョン「大丈夫か!? そこまで気負わなくてもいいんだぞ」
ハルヒ「これは違う……」

◇ ◇ ◇

朝倉「あら、涼宮さん達もここでバイト始めたの?」
長門「今日だけの臨時」
キョン「朝倉達ははちぽちでお茶か?」
朝倉「ええ、ケーキを食べに」
鶴屋「おー、はちぽちのクリスマス特製ケーキー」
長門「鼻血が出るほどのおいしさ」
鶴屋「鼻血出ちゃうの!?」
朝倉「何が入ってるのかしら」
キョン「愛かな」
長門・朝倉・鶴屋『あー』
ハルヒ「……」

◇ ◇ ◇

朝倉「折角だしこのケーキ買っていこうかな」
鶴屋「私も買うよー。はちぽちのケーキ好きー」
長門「お買いあげありがとうございます」
キョン「でもケーキ食べに来たんじゃないのか?」
朝倉「こっちはお持ち帰り用よ」
長門「では身内サービスで、購入してくださった方には――彼が頭なでなでをプレゼント」
キョン「いらないだろ、そんなの」
朝倉・鶴屋・ハルヒ『買った!』
キョン「!?」

◇ ◇ ◇

古泉「追加のケーキを持ってきました。今日の分のケーキはこれで最後だそうです」
キョン「おう」
古泉「店内のケーキももうすぐ品切れですから、朝比奈さんもこちらにこれそうですよ」
キョン「売れ行きいいからその前に終わっちゃうかもしれないけどな」
長門「同意」
   「しかし女性客も多いが、やはり皆彼氏持ちなのだろうか」
ハルヒ「そうでもないと思うけど」
古泉「あれですよ、きっと――」
   「ケーキが恋人なんですよ」
ハルヒ・長門(がびーん!)
キョン「クリスマスにそのフレーズは禁止だ!」

◇ ◇ ◇

みくる「手伝いに来ました。わ、もう残り少ないですね」
キョン「ええ、夕方になってから客足も増えてこの通り」
みくる「やっぱりクリスマスにはケーキを買っちゃいますよね」
古泉「やはり恋び……」
キョン「言うなよ、続きを」
みくる「え? どういう意味ですか?」
キョン「あー、いや、さっき古泉が……」
長門「恋人は――サンタクロー。ぐわしっと」
みくる「そんなことしちゃ駄目ですっ!?」
キョン「違うし」

◇ ◇ ◇

全員『ラスト1個お買いあげ、ありがとうございました!』
   『完売ー!!』
園生「今日はありがとうございました。皆さんの分のケーキもちゃんと取ってありますから」
女性陣「わー♪」
古泉「カロリーを気にせず召し上がってください」
女性陣「ワァーッ!?」

◇ ◇ ◇

古泉「皆さんお疲れ様でした」
キョン「お疲れさん」
みくる「お疲れ様です」
長門「明日のクリスマスパーティーは忘れないように」
みくる「はい」
キョン「長門も寝過ごすなよ」
長門「ああ、涼宮ハルヒ。突然来られなくなっても大丈夫だから」
ハルヒ「?」
長門「だから彼とラブリマスを過ごしたくなったら、遠慮な」
(ドッ!!)
長門「ぐ は あ!?」
古泉「長門さーん!?」

◇ ◇ ◇

キョン「こうやってみんなでバイトするのもいいな」
ハルヒ「……私も」
    「一緒だと、嬉しい」
キョン(ニコニコ)

キョン「降ってきたな」
ハルヒ「雪……」
キョン(ピッ)(ガチャン)
ハルヒ「コーヒー?」
キョン「クリスマスパーティーは明日だからフライングになるが、ホワイトクリスマスってことで」
ハルヒ「ん」

メリークリスマス
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ガーディアンアカデミー第1話 「入学式」(後編-a)

2010-01-23 00:01:43 | 二次創作
魔物の大群へと突入したハルヒと古泉。二人の周囲は、瞬く間に魔物で埋め尽くされた。
だが、二人の顔から余裕は消えていない。

「光栄に思いなさい。未来の勇者様の剣で倒されるんだから!」

強気な台詞を吐くと、ハルヒは剣を上段に構えて正面にいた魔物・グリズリーに斬りかかる。
刹那、彼女の剣は灼熱の炎に包まれた。

「涼宮流! アトミックファイヤーブレード!」

叫び声と共に、ハルヒは剣を振り下ろす。熊に酷似したグリズリーの巨体は見事に両断され、さらに炎の熱で消し炭と化した。

「まずは一匹……! ちょろいわね」

口元にかすかな笑みを浮かべ、ハルヒは呟く。
ちなみにこの技、正式名称を「火炎斬り」といい、剣術の心得があるものなら比較的容易に習得できるオーソドックスなものである。
つまり、涼宮流でもなんでもない。だがハルヒにとって、「自分の覚えた技は自分のもの」なのである。

「相変わらずですねえ、涼宮さんは。まあ、その方がこちらとしてもありがたいのですが」

ハルヒの行動を見て、古泉は苦笑を浮かべる。一見隙だらけの彼に向かって、猿型の魔物・キラーエイプが豪腕を振るう。
だが古泉は、その一撃をあっさりと回避。さらにカウンター気味に、手の平に溜めていたエネルギーを解放する。

「PKサンダー!!」

古泉の手から放たれたのは、青白く輝く電撃のボール。それは狙いを過たず、キラーエイプを捉える。
電撃を浴びたキラーエイプは全身を激しく痙攣させた後、ぱたりと倒れそのまま動かなくなった。

「さて……。次はどなたが相手になりますか?」

作り物めいた笑みを浮かべながら、古泉は周囲の魔物に向かって言い放った。


◇ ◇ ◇


「ヒャド」

長門有希の唱えた氷結呪文が、ポイズントードの腹部に命中する。
すかさず長門は距離を詰め、凍結した部分に拳を見舞ってポイズントードを粉砕する。
魔法と格闘を組み合わせて戦う、「魔法拳士」。それが長門の戦闘スタイルだ。

「な、長門さーん。魔力はまだ大丈夫ですか?」
「まだ問題ない。消耗が激しくなってきたら回復をよろしく」

長門の背後から、気の弱そうな少女……朝比奈みくるが声をかける。
彼女は、戦闘能力をほとんど持っていない。一見すると、場違いに思える存在だ。
だが、その考えは間違っている。
たしかに彼女は、直接戦うことはできない。だが、戦う仲間を支援する術に長けている。
ガーディアンに求められるのは、強さだけではない。
みくるのような後方支援要員も、実戦の場では必要とされるのだ。

「頑張ってください、長門さーん」
「…………」

みくるの声援を背に受けながら、長門は黙々と拳を振るい続けた。


◇ ◇ ◇


「はあっ!」

小野寺ユウスケの回し蹴りが、一つ目の巨人・サイクロプスの胸板を叩く。
だがサイクロプスはそれを意に介さず、手にした棍棒をユウスケ目がけ振り回した。
ユウスケはそれをギリギリで回避し、バックステップでいったん距離を取る。

「くっ、やっぱりこのままで戦うのは無謀か……」

悔しげに呟くユウスケ。そこに、もう一人の新入生が近づいてくる。

「よう、ご同輩。出し惜しみなんかせずに、変身したらどうだ?」
「ご同輩って……まさか君も?」
「ああ、同類はなんとなく雰囲気でわかるんだ」
「そうか。じゃあ、二人でいこうか」
「おう」

ユウスケともう一人の男……キョンは、横に並ぶと共に腰へ手を持っていく。
すると、その場所へそれぞれ違う形状のベルトが出現した。

『変身!!』

続けて、二人はおのおの定められたポーズを取りながら叫ぶ。
その直後、彼らの体を光が包んだ。光の中で、二人の姿は劇的に変化する。
ユウスケは、赤い複眼と黄金の角を持つ仮面の戦士に。
キョンはコウモリの羽根を思わせる、いびつな形状の仮面の戦士に。

七英雄・本郷猛の異名に倣い、この世界では彼らのように姿を変えて戦う戦士をこう呼ぶ。

「仮面ライダー」と。

「自己紹介がまだだったな。俺は小野寺ユウスケ。リントの戦士・仮面ライダークウガだ」
「俺はキョン。ファンガイアの戦士・仮面ライダーキバだ」
「それじゃあ、今日は君と俺で……」
「ダブルライダーといきますか!」

ファイティングポーズを取ると、二人の仮面ライダーは足並みを揃えてサイクロプスに向かって走り出した。


◇ ◇ ◇


「ローリングディフェンス!」

鳥形の魔物・ホークブリザードが吐く氷の息を、ジョウは鎖を回転させてはじき飛ばした。
彼が操る鎖は聖闘士の証、聖衣(クロス)の一部。そして聖衣は、絶対零度でなければ凍結させることはできない。
将軍クラスならともかく、一介の魔物程度が操る冷気でどうこうできる代物ではないのだ。
だが、たいした知性を持たぬホークブリザードがそんなことを理解できるはずもない。
かの魔物は、通用しない冷気をひたすらに吐き続ける。

「くそっ、これじゃこっちから攻撃できないじゃないか……。フラグビルドさん、大丈夫ですか!」

ジョウ一人ならば、聖衣を装着してしまえば冷気など恐れずに攻撃に転じられる。
しかし、他に人がいるとなれば話は別だ。
自分の後ろに隠れている少女の存在が、彼に防御に徹することを強いているのである。

(さて、どうしますかねえ……)

フラグビルドは考える。

(このままジョウさんに守られるお姫様を演じるのも悪くないですが……。
 まさかこれから三年間一緒にいるのに、正体を隠しっぱなしというわけにはいかないでしょうし。
 だったら今すぐ私の力を見せても同じ事ですか)

一つ深呼吸をすると、フラグビルドはジョウに声をかけた。

「ジョウさん、そのまま防御を続けていてください。私がアタッカーを引き受けます」
「えっ、でも!?」

フラグビルドの言葉に、ジョウは驚きの表情を浮かべる。
アカデミーに来るまでの道中で短くない時間を共にしたにもかかわらず、彼女の能力に関しては何も聞いていなかったからである。

「今、お見せします。私の力をね」

自信に満ちた表情を浮かべると、フラグビルドはパチンと指を鳴らす。
その瞬間、ホークブリザードの体は真っ二つに引き裂かれた。

「え……!?」

思わぬ事態に、ジョウはあっけに取られていた。上空にいる相手を、一瞬にして葬り去る。生半可な技ではないことは、深く考えずとも明らかだ。

「フラグビルドさん、君はいったい……」
「申し遅れました。我が師匠はBF国十傑衆の一人、素晴らしきヒィッツカラルド。
 私はその一番弟子にして、師の通り名と技を受け継いだ者。素晴らしきフラグビルドです」

自らの素性を告げると、フラグビルドはニッコリと笑う。
ジョウはその幼い笑顔に、なぜか背筋がぞくりとするのを感じていた。


◇ ◇ ◇


「そこ! そこ! そこおっ!」

セラス・ヴィクトリアの連射する銃が、近づく魔物達の頭部を次々と粉砕していく。
彼女が手にする銃は、主から餞別代わりに託された対魔物用拳銃「ジャッカル」。
かのゾーマとの戦いでも使用された、由緒正しい武器である。

「しかし、さすがジャッカル……。銃弾一発で魔物が死ぬんだからすごい威力よねえ……」

受け継いだ銃の凄まじい威力に、セラスは思わず呟く。
一瞬銃弾が止んだその隙を突いて、一体の魔物が彼女に向かって突進してきた。
ネズミ色の肌の悪鬼・スモールグールだ。
だが、それは無謀な突撃と言わざるを得ない。
セラスの戦闘スタイルは銃器使いだが、肉弾戦においても水準以上の強さを持っているのだ。
彼女に、格闘術の心得はない。だが、それでも彼女は強い。
それは純粋に、吸血鬼である彼女の筋力が異常だからだ。

「はっ!」

セラスは左手を伸ばし、スモールグールの口から飛び出した長い舌をつかむ。
そしてそれを、容赦なく引っ張った。舌は簡単にちぎれ、魔物の青い血液が周囲に飛び散る。

「よし、次!」

足下で悶え苦しむスモールグールには目もくれず、セラスはジャッカルを構え直した。


◇ ◇ ◇


一人の少女が、獣人と激しい肉弾戦を繰り広げている。
獣人は格闘パンサー。その名のとおり、格闘技を習得した豹の魔物だ。
それと拳を交える少女は、御庭つみき。小さな体に強大な力を秘めた武闘家である。

格闘パンサーが目にも止まらぬ速さで、パンチの連打を繰り出す。
だがつみきは冷静に敵の動きを見極め、全ての打撃をかわす。
焦りを募らせる格闘パンサー。その隙を突き、カウンターが一閃。
つみきの拳が、格闘パンサーの顎を砕いた。

「…………」

とりあえずの勝利に、安堵の溜め息を漏らすつみき。
だがその時、一本の矢が彼女目がけて飛んできた。

「危ない、つみき!」

どこからか飛んできた声に反応し、つみきは反射的に身を翻す。その肩を、矢がかすめていった。
その直後、彼女の背後から鉄串が飛んでくる。その串は、矢を撃った魔物・リリパットの喉を貫いた。

「つみき、大丈夫だったか?」

そういいながらつみきに駆け寄ってきたのは、鉄串を投げた張本人。
つみきのパートナーである青年、音無伊御である。

「大丈夫……。でもちょっと悔しい……」
「悔しい? なんでさ」

つみきから返ってきた答に、伊御は首をかしげた。

「伊御に助けてもらわなかったら、やられてたかも……」
「なんだ、そんなことか。気にするなよ。俺たちはチームだろ?」

ふくれっ面のつみきに対し、伊御は彼女の頭を撫でる。
つみきの頬が赤く染まっていることに、彼はまったく気づいていなかった。


◇ ◇ ◇


「メラ……」
「メラ……」

炎を操る怨霊・メラゴーストの唱える火炎呪文が、一人の新入生を襲う。
だが彼は、幾度となくその身に火の玉を受けても平然と断っていた。
その新入生の名は、アラシヤマ。眼前の魔物と同様に、炎を操ることができる青年だ。

「効きまへんなあ、そないなちゃちな炎」

余裕すら感じられる口調で言い放つと、アラシヤマは両手をメラゴーストたちに向けてかざす。

「炎を使うなら、せめてこれぐらいはできまへんとなあ。平等院鳳凰堂・極楽鳥の舞い!」

叫ぶと同時に、アラシヤマの手から巨大な鳥をかたどった炎が吹き出した。
火の鳥は瞬く間に、メラゴーストたちを飲み込んでいく。
そして炎が消えたとき、哀れな怨霊たちの姿はどこにもなかった。

「堪忍な……。成仏しておくれやす」

勝利の喜びなど微塵も見せず、暗い表情でアラシヤマは呟いた。


◇ ◇ ◇


赤と白の二色に塗られたボールが乱れ飛び、それに当たった魔物はボールの中に吸い込まれていく。
ボールを投げているのはCLAMP国の王子にして希代の頭脳を持つ天才・妹之山残。
そして投げているのは、彼自身が開発した魔物捕獲装置・モンスターボールである。

「何も暴力だけが魔物に勝利する手段ではない。これぞ科学の勝利!」

次々とボールの中に収まっていく魔物達を見ながら、残は自信に満ちた笑みを浮かべる。
だが、その笑みはすぐに消え去った。ボールの投擲をかいくぐり、二体の魔物が残に向かって突き進んできたのである。
翼竜・プテラノドンが上から、山羊のような顔を持つ悪魔・メッサーラが正面から残に迫る。
だが残は、笑みこそ消したものの決してうろたえたりはしない。
なぜなら、彼には絶対の信頼を置く仲間がいるのだから。

残の脳天に狙いを定め、降下を始めようとするプテラノドン。だがその瞬間、彼の両の翼が切り落とされる。
そしてその事実を認識する前に、プテラノドンの眉間にはクナイが突き刺された。

「相変わらず見事な腕前だな、蘇芳」
「お褒めの言葉はありがたく受け取っておきますが、もうちょっと気を引き締めてください、王子。
 ここはすでに、命のやりとりをする場になっているのですから」

プテラノドンをしとめた張本人に対し、残は賛辞の言葉を贈る。
それを受け取りつつ忠告を返すのは、鷹村蘇芳。
残の護衛役として共にアカデミーに入学した、忍者の少年だ。

「ああ、少し油断が過ぎたかも知れないな。心に留めておこう。
 そういえば、もう一匹の魔物は……」
「はい、取り押さえましたー」

残の耳に、前方から無邪気な声が届く。そちらに視線をやれば、もう一人の護衛である伊集院玲がメッサーラの巨体を地に倒している。

「うむ、やはり持つべきものは頼れる仲間だな!」
「ですから、気を緩めないでください……」

満面の笑みを浮かべる残の傍らで、蘇芳は顔をしかめつつ溜め息を漏らした。


◇ ◇ ◇


明神弥彦は、憤慨していた。
彼が相手している魔物の名は、骸骨剣士。その名のとおり、死して白骨化した剣士に邪悪な魂を吹き込んで生み出された魔物だ。
弥彦の流派は、「活人剣」を掲げる神谷活心流である。
常々命の重さを叩き込まれてきた彼にとって、死者を歪んだ形で再生させたアンデッド系の魔物は死者への冒涜としか思えないのだ。

「今……解放してやるからな」

沈痛な面持ちで呟くと、弥彦は一気に間合いを詰めるべく走り出した。
それに合わせて、骸骨剣士は手にした剣を振り下ろす。だがそれは、弥彦の予測範囲内の行動だ。

「神谷活心流奥義、刃止め!」

叫ぶと同時に、弥彦は両腕を頭上で交差させる。そして、手の甲で相手の剣を挟み込んだ。

「刃渡り!」

さらに弥彦は、敵の刃を封じたまま前進。手にした刀の柄を、骸骨剣士の頭部に思い切り叩きつける。
一撃を加えられた頭蓋骨は瞬く間にヒビが入り、粉々に砕け散った。
それと同時に、首から下を構成していた骨も結合力を失い四散する。

「…………」

ただの白骨死体と化した魔物に、弥彦は切なげな視線を送る。
だがすぐに気を取り直すと、刀を構え直した。

「さあ、次にやられてえのはどいつだ!」


◇ ◇ ◇


武闘家のチェック・メイトは、すでに数多くの魔物を撃破していた。
しかしそれでも、魔物の勢いは止まらない。また新たな魔物が一匹、彼に襲いかかる。
牛と鳥の合成獣、あばれ牛鳥である。

「獣には獣……といったところですかね」

誰に言うでもなく呟くと、チェックは自分の肩に備わったスイッチを押した。
すると、驚くべき変化が彼の体に表れる。
チェックの肩に乗っていた馬の頭を模した飾りが、彼本来の頭部と入れ替わったのである。
同時に、その下半身も馬のそれへと変化している。

「ケンタウロスの黒い嘶きーっ!!」

技の名前を宣言すると同時に、チェックは馬の前脚で猛烈な蹴りの連射を放つ。
それをまともにくらったあばれ牛鳥は他の魔物を巻き込みながら吹き飛び、そのまま動かなくなった。
だが、それでもまだ彼を狙う魔物は残っていた。アークマージや悪魔神官といった呪文を使う魔物達が、遠距離からチェックを攻撃してくる。

(これは困りましたね……)

チェックは、内心で愚痴をこぼす。彼は純粋なる接近戦のスペシャリスト。
ゆえに遠距離からの攻撃に対して反撃の術を持たないのである。
どうしたものかとチェックが考え始めたその時、彼の頭上から活力に満ちた声が響いた。

「起風!」

その叫びと共に、室内だというのに強風が吹き荒れる。その風は、チェックの周辺にいた魔物達を吹き飛ばしていった。

「発雷!」

上空の声は、新たな言葉を紡ぐ。すると今度は、落雷が魔物達を襲う。
あっという間に、チェックを取り囲んでいた魔物は壊滅させられていた。

「よう、大丈夫か?」

未だ状況が飲み込めずにいるチェックの前に、声の主が降りてくる。
それは漆黒の翼を背中から生やした、褐色の肌の少年だった。

「ええ、大丈夫です。助太刀、感謝しますよ。私はチェック・メイトという者です。
 よければ、あなたのお名前も聞かせていただけませんか?」
「俺か? 俺は雷震子だ!」

素直に自分の名前を告げると、雷震子はまじまじとチェックを見つめる。

「あの……何か?」
「お前、ひょっとして妖怪仙人か?」
「!!」

雷震子の発言に、チェックは身をこわばらせる。
妖怪仙人とは、物体が気の遠くなるような長い間、月の光を浴び続けることによって生命体と化した存在だ。
そして一部では、魔物に近しい存在として差別の対象とされている。チェック自身も、過去にいわれのない迫害を受けたことがあった。
ゆえに彼は、自分を妖怪仙人だと見抜いた雷震子を警戒する。
だが次に雷震子が発した言葉は、チェックの予想とはまったく異なるものであった。

「そっかそっか、よろしくなー、チェック」
「え?」
「なんだよ、そんな驚いて。俺、なんか変なことしたか?」
「あなたは私が妖怪仙人だと知って……何も思わないのですか?」
「なんだよ、そんなことか」

チェックの問いかけに対し、雷震子はつまらなそうに溜め息を漏らす。

「俺は崑崙山の道士だぜ? 妖怪仙人なんか見慣れてるんだ。今更ギャーギャー騒ぎたてねえっての」
「そうだったのですか……」

こぼれるように呟くチェック。その声には、かすかに明るさがにじんでいた。

「さあ、おしゃべりはここまでだ! さっさと残った敵を片づけようぜ!」
「わかりました!」

再び天井すれすれまで浮上し、飛び立つ雷震子。チェックも、迷わずその後を追った。


◇ ◇ ◇


「やあっ!」

白刃がきらめき、魔物の体を切り裂く。胸を深々と斬りつけられた猿に似た悪魔・シルバーデビルは、床に崩れ落ち息絶えた。

「はあ、はあ……」

おのれの身長に匹敵するほどの長大さを誇る刀を構え、少女は荒い息を吐く。
彼女の名は、犬塚信乃。先祖代々続く由緒正しい「侍」の一族である。

「くそっ、斬っても斬っても……!」

顔を滑り落ちる汗を拭いながら、信乃は愚痴を漏らす。
そこへ、さらに魔物が襲いかかってきた。先程倒したのとは別個体のシルバーデビルだ。

(しまった、気を抜きすぎたか! 反応が間に合わない!)

シルバーデビルは、敏捷性が売りの魔物である。フルスピードで接近してくる悪魔に対し、信乃の防御は間に合わない。彼女は、直撃を覚悟する。
だがシルバーデビルの爪が信乃の柔肌を切り裂く直前、その頭蓋を一本の槍が貫通した。

「え?」

突如出現した文字通りの横槍に、信乃は目を白黒させる。
そんな彼女の反応をよそに、槍を放った張本人は悠然と槍を引き抜き、信乃に語りかける。

「刀々斎の作、破邪の大剣・村雨か……。良い刀を持っているな」
「あ、ああ、うちの家宝だ。それより、助けてくれてありがとう」
「何、気にすることはない」

礼を言う信乃に対し、槍使いの青年は謙虚な言葉を口にする。
その態度に好感を抱く信乃だったが、その感情は次の瞬間あっけなく砕け散った。

「これから君は、俺のパートナーになるんだからな。助けるのは当然だろう」
「は?」

唐突な発言に、信乃はその端整な顔立ちを崩してしまう。

「いや、いきなりパートナーとか言われても……。どういうことだ?」
「俺の槍、雪篠も刀々斎の作品! 同じ刀匠の作を持った二人の侍が、ここで出会う!
 これはまさに運命だと思わないか?」
「いや、思わないんだけど……」
「間違いない! 俺と君はここでコンビを組む運命にあったんだ!」
「人の話を聞けー!」

声を張り上げて抗議する信乃だが、相手は聞いてくれはしない。

「おっと、まだ名乗っていなかったな。俺は荘助! 犬川荘助だ! さあ、共に戦おう、相棒!」
「いや、ちょっと待て。だから人の話を……って、おい! やめ……うわああああ!!」

悲鳴を上げる信乃を強引に引きずり、荘助は魔物の中に突撃していった。


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ガーディアンアカデミー第1話 「入学式」(後編-b)

2010-01-22 23:59:04 | 二次創作
◇ ◇ ◇


「メラゾーマ!」
「わしがガーディアンアカデミー校長江田島平八である!」

オストラコンが紡いだ呪文が、巨大な火の玉を生み出し江田島を襲う。
だが江田島は力強く拳を振るい、その風圧で火の玉を四散させてしまった。

(ただの風圧で、火炎系究極呪文を相殺するとは……。これほどのレベルなのか、七英雄!)

対峙した相手の予想を上回る戦闘力に、オストラコンは思わず舌打ちを放つ。
一度で通用しないのなら二度、と次の攻撃に移ろうとした彼だが、そこへ横合いからの攻撃が飛んでくる。

「ライダーチョップ!」
「ぐっ!」

神速の手刀を、オストラコンはかろうじて回避。だが指先が頬をかすめ、激痛と共に血が噴き出す。

「どうした、先に仕掛けてきたのはそちらだろう? 一対多数だからといって、卑怯とは言わないよな?」

手刀を放った男は、静かな声でオストラコンにそう告げる。
その戦士は、バッタを模したような仮面を身につけていた。
否、それは仮面であり仮面ではない。それは、英雄のもう一つの顔。
本郷猛が「変身」した姿、「仮面ライダー」だ。

「ククク、さすがだ。さすがだな、江田島に本郷! 七人がかりとはいえ、ゾーマ様を破っただけのことはある!
 だからこそ、その首に価値がある! 貴様ら二人を討ち取れば、俺は魔王の称号をほぼ確実に手に入れられる!」
「ほざけ! わしの首も本郷の首も、貴様のような男に取られるほど安くはないわ!」

不敵に笑うオストラコンに、江田島が接近して蹴りを見舞う。
両腕を交差させてそれを防御するオストラコンだが、蹴りを受けた両腕は激しい衝撃と痛みに襲われた。

(ガードしてこれか……! つくづく魔物以上の化け物だな!)

心の中で悪態をつきつつ、オストラコンは後ろに飛んで距離を取る。

「メラミ! メラミ! メラミ!」

今度はメラゾーマよりランクを落とした、中級火炎呪文を連射するオストラコン。
だがそれも、江田島の鉄拳の前にことごとく弾かれる。

(数で押しても通用しないか! それなら……ぐおっ!)
「雷華崩拳!」

次の策に切り替えようとしたオストラコンの脇腹を、壮絶な痛みと電撃が襲う。
死角から一気に接近したネギの魔法拳が、彼に炸裂したのだ。

「この場にいるのは、英雄のお二人だけではないということを忘れてもらっては困りますね。
 ガーディアンアカデミーが誇る教師陣全てが、あなたの敵なのです」

ネギがそう言い放つのと前後して、教師たちがオストラコンを取り囲んでいた。
そのいずれもが、一騎当千の強者ばかり。もはやオストラコンに、勝利の可能性は残されていないかに見えた。
だが、彼の顔からは未だ余裕が消えてはいなかった。

「仕方ない……。切り札はもう少し後まで取っておきたかったが……。
 認めよう、貴様らは強い。だが、だからこそ地獄を見ることになる!」

意味深な言葉を呟くと、オストラコンは懐から何かの薬を取り出した。
そして、それをすぐさま飲み込む。その瞬間、彼の体から溢れる邪悪なオーラが一気にふくれあがった。

「くっ!」

放置すればこちらが不利になると判断し、追撃を放とうとするネギ。
だが彼が攻撃態勢に入る前に、オストラコンはネギの眼前にまで戻ってきていた。

(速さが……違う!)

次の瞬間、オストラコンの拳がネギを大きく吹き飛ばしていた。

「ネギ先生!」

思わず包囲網を解き、ネギに駆け寄る教師たち。その様子を見て、オストラコンの顔には歪んだ笑みが浮かぶ。

「見ろ! これが『善滅丸』の力だ! 魔界の薬師が調合したこの薬は、飲んだ者の力を数倍にまで跳ね上げる!
 副作用も決して小さくないが、それも些細なこと! この圧倒的な力なら、貴様ら全員を血祭りに上げてお釣りが来る!」

薬の作用もあってか、異様なまでに高揚した口ぶりでオストラコンは叫ぶ。
だが、彼の言葉を真っ向から否定する声がその場に響く。

「いや……そんなものは力じゃない」

声の主は仮面ライダー・本郷猛。彼はゆっくりとした足取りで、オストラコンに近づいていく。

「薬なんかに頼って手に入れた力なんか……本当の力とは言わないさ。
 努力して、血と汗を流して、自分の体に染みついた力こそが……本当の強さだ」
「ハーッハッハッハッハ! 片腹痛い! よりによって貴様がそれを言うか、本郷猛!
 力を得るために、自分の体を機械に置き換えたのは誰だ! 紛れもない貴様だろう!」
「たしかに……今の俺の体は、大部分が機械だ。だが、それは安易に力を得ようとした結果ではない。
 俺の力は、あくまで努力により鍛え上げたものだ」
「ぬかせ! しょせん貴様の力も、機械の体に頼ったものだろうがぁ!」

目を血走らせながら、オストラコンは本郷に殴りかかる。しかし、本郷はその一撃をたやすくかわして見せた。
さらに連撃を放つオストラコンだったが、その攻撃はことごとく本郷に回避されてしまう。

「なぜだ! スピードも充分すぎるほど上昇しているというのに! なぜ当たらない!」
「わからないのか……。それが労せずして手に入れた力と、体に染み付いた力との差だ」

静かに言い放つと、本郷はカウンターの蹴りを放つ。その一撃は、吸い込まれるようにしてオストラコンの腹に突き刺さった。

「好機か!」

オストラコンの動きが止まったのを見て、江田島が本郷に並ぶ。

「一気にいくぞ。合わせられるか、本郷!」
「誰に言っている」
「ふはは! そうであったな!」

短く言葉を交わすと、江田島と本郷は共に走り出す。
なんとか体勢を立て直したオストラコンだが、二人のあまりのスピードに何も反撃の策が打てない。

「わしがガーディアンアカデミー校長……」
「ライダー……」

二人は、何の合図もないというのに同時に拳を振り上げる。

「江田島平八である!」
「パンチ!」

そして、彼らの拳は同時にオストラコンの体に命中した。
二人が放ったのは、何の変哲のないただのパンチ。
だが、その破壊力は善滅丸で強化されたオストラコンの肉体ですらたやすく打ち壊す。

「がはあっ!!」

口から血をまき散らしながら、オストラコンは講堂の床を転がっていく。

(何だ、何だこの強さは……! 俺は魔将軍の地位を得られるほどの力を持っていたはずだ!
 それをさらに強化して……。なぜあんなごく普通の攻撃に屈する!!)

おのれが倒されたことに納得できず、心の中でわめき散らすオストラコン。
そこに、江田島が歩み寄る。

「貴様は……」

江田島が蹴る。オストラコンが吹き飛ぶ。


「貴様は……」

江田島が蹴る。オストラコンが吹き飛ぶ。

「七英雄を舐めた!!」

そして、脳天を叩き割るべく手刀が振り下ろされる。
だがオストラコンも、最後の力を振り絞ってその攻撃を回避する。
結果、江田島の手刀はオストラコンの脳天を叩き割りはしなかった。
その代わり、その一撃はオストラコンの右腕を肩もろとも胴体から切り離した。

「がああっ……!」
「ふむ、外したか。だが、今度こそ……」

悶絶するオストラコンを憮然とした表情で見下ろしながら、江田島は今一度右手を振り上げる。
だがその手が下ろされる前に、その場を異変が襲った。

「む! これは!」

江田島が見たのは、黒い球体。そう、オストラコンたちがこの場に乗りこんでくるときに発生した次元の歪みだ。
それが、今はオストラコンのすぐ後ろに出現しているのだ。

「悔しいが認めよう、人間の英雄たちよ。俺の力は、貴様らの足元にも及ばん。
 だが覚えていろ。俺はいつの日か貴様らを超える力を手に入れ、今日の雪辱を晴らす!」
「逃がすものか!」

この場でオストラコンの息の根を止めようと、江田島は改めて手刀を振り下ろす。
しかし、その一撃が届く前にオストラコンの体は黒い球体の中に消え去っていた。

「クックックック……。ハーッハッハッハッハ!!」

出現したときと同じ高笑いを残し、オストラコンは消え去った。

「逃がしてしまったか……。すまんな、本郷。せっかく総理たる貴様も戦ってくれたというのに」
「いや、謝る必要はない。追い払えただけでも上出来だ」

ばつが悪そうな表情で、すでに変身を解いた本郷に向かって言う江田島。
それに対し本郷は、穏やかな声で返す。
だがその声にわずかな悲しさが混じっていることに、江田島は気づいていた。

「あのようなゲスの言うことなど気にするな。貴様が安易な理由で肉体を機械に置き換えたのでないことは、わしがよく知っている」
「ああ、そうだな。ありがとう、江田島」

自分を気遣う江田島の言葉を受け、本郷は笑みを浮かべる。

「さて、それより新入生たちよ。戦況はどうなっておる」
「もう全滅させたみたいですね。いやあ、頼もしい連中ですわ」
「なるほど、さすがはわしが見込んだ精鋭たちといったところか」

ななこからの報告に、江田島はまさに「破顔」と言うべき笑顔を見せた。

「新入生諸君、ご苦労であった! これにて最初の授業を終了とする!」


続く
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ガーディアンアカデミー第1話 「入学式」(前編)

2010-01-07 01:57:47 | 二次創作
ネギ・スプリングフィールドは、「天才」と呼ばれる男である。
かつて9歳という今でも破られぬ最年少の若さでアカデミーに合格した彼は、そのまま何の問題もなく優秀な成績で卒業。
10年間ガーディアンとして活動し数え切れぬ実績を残した後、教師としてアカデミーに戻ってきた。
そんな彼が、その日は珍しく緊張していた。
今日はアカデミーの入学式。ネギは、その司会進行役を任されたのである。


◇ ◇ ◇


ガーディアンアカデミー・講堂。この場所には現在、20人の新入生と教員たちが集まっていた。
ずらりと並んだ20人の若者は、年齢も出身地も能力も千差万別。
また、この場における反応も千差万別。
緊張に顔をこわばらせている者もいれば、余裕がにじみ出る大物感溢れる者もいる。

「続きまして、当アカデミー校長でいらっしゃいます江田島平八先生よりお言葉をいただきます」

そんな新入生たちの耳に届くのは、マイクに増幅されたネギの声。
そのアナウンスに合わせ、一人の男が壇上に上がる。
一本の毛髪もない禿げあがった頭。それとは対照的な、常人以上に濃い眉とひげ。
全身から放たれる威圧感が、ただでさえ大きな体をさらに大きく見せている。
彼こそこの世界で暮らす者で知らぬ者は皆無と言ってもいい、伝説の七英雄の一人。
江田島平八、その人であった。
壇の中央にたどり着いた江田島は、一つ咳払いをする。
そして、あらん限りの声で叫んだ。


「わしがガーディアンアカデミー校長江田島平八である!!」


その一言だけ残すと、江田島は満足そうな表情で壇を下りる。

「ありがとうございました」

わけがわからずきょとんとする新入生たちをよそに、ネギは平然と式を進行させる。
どうやら、この江田島の挨拶はいつものことらしい。

「続きまして、来賓代表の挨拶です。内閣総理大臣、本郷猛様、お願いします」

続いて壇上に上がった男に、新入生の間からはざわめきが発生した。
それも無理からぬことである。
その男は江田島と同じ七英雄の一人にして、現在ジパングの政界でトップに立つ者。
仮面ライダー・本郷猛だったのだから。
現職の総理が挨拶に来るという事実が、いかにこの世界でアカデミーの存在が重要視されているかを物語っていると言えよう。

「えー、新入生の皆様、ご入学おめでとうございます」

よく通る声で、本郷は挨拶を始める。だがその直後、講堂に異変が起きた。

「おい、なんだあれ……」

最初にそう言ったのは誰だったか。異変には、すぐにその場の人間全てが気づく。
講堂の天井すれすれに出現した黒い球、それは徐々に大きさを増していく。
やがてそこから、大量の魔物があふれ出してきた。黒い球の正体は、こことどこか別の場所を繋ぐ次元の歪みだったのである。

「敵襲!?」
「そんな……アカデミーの対魔結界が突破されたんか!?」

「クックックック……。ハーッハッハッハッハ!!」

騒然となる講堂内に、狂気を孕んだ高笑いが響き渡る。
同時に、魔物の群れの中から鎧とマントを身にまとった銀髪の男が飛び出してきた。
その男は、他の魔物達とは雰囲気がまったく異なっていた。彼が特別な存在であることは、誰の目にも明らかであった。

「お前がボスか」
「その通りだ。我が名はオストラコン! 魔将軍・オストラコンだ!」

自分をにらみつけながら静かな声で尋ねる本郷に対し、男は堂々と名乗りを挙げる。

「聞いたことがあるぞ。祖国を裏切り、魂を悪魔に売り渡して魔物に転生した男、オストラコンの噂を。それが貴様か」

続いて、江田島がオストラコンに問う。オストラコンはそれにも、喜々として答えた。

「その通り。脆弱な人間をやめ、強大な魔物の力を手にしたのがこの俺だ!
 江田島平八、そして本郷猛。貴様らの首、その他の雑魚もろともこのオストラコンと配下の魔物300匹がもらい受ける!」
「誘惑に負け、力を手にするために人間をやめたか……。そんな相手に、この首をやるわけにはいかないな」

どこか切なげに呟くと、本郷は拳を固める。そのまま彼とオストラコンがぶつかり合おうとしたその時、無数の閃光が彼らの周辺に降り注いだ。

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル
 光の精霊100柱 集い来たりて敵を討て
 魔法の射手・連弾・光の100矢」

閃光の正体は、ネギの攻撃魔法。魔物の群れに襲いかかった百の矢は全て命中し、怪物たちの異形の体を消し炭に変える。

「何……!」
「これで、あなたの戦力は残り200です」

いきなりの攻撃で戦力を大きく削り取られ、わずかに動揺をのぞかせるオストラコン。
そこに、冷静沈着なネギの言葉が浴びせられる。

「ご無事ですか、校長、総理」
「心配しなくても、まだ何もされちゃいないさ」

自分たちの身を案じるネギの言葉に、本郷は穏やかな口調で返した。

「ここは僕たちにお任せください。お二人は避難を……」
「馬鹿者がーっ!!」

続いてネギは、二人に避難を促そうとする。だが最後まで言い終わらぬ内に、江田島の鉄拳が彼の頭を殴りつけていた。

「ひゃう! 何するんですか、校長!!」
「仮にも相手は、厳重に張り巡らされた対魔結界を破れるほどの手練れ! 貴様のような若造の手に負えると思ったか! わしと本郷も戦うぞ!!」
「し、しかし!!」
「わしがガーディアンアカデミー校長江田島平八である!!」

ネギの心を、殴られたとき以上の衝撃が襲う。江田島の言霊に対抗することなど、彼の実力では不可能であった。
ネギが沈黙したのを確認すると、江田島は今一度声を張り上げる。

「聞こえるか、新入生諸君! これを諸君の最初の授業とする!
 頭はわしと教員たちで抑える! その代わり、二百の雑魚は諸君らのみで殲滅せよ! 以上!
 わしがガーディアンアカデミー校長江田島平八である!!」

講堂全体を振るわすようなその声は、当然新入生たちの耳にもしっかりと届いていた。

「古泉君、聞いた?」

江田島の言葉を受け取った涼宮ハルヒは、たまたま近くにいた友人・古泉一樹に話しかける。

「ええ、もちろん。新入生20人で200匹の魔物を倒すとなると、単純計算で一人当たり10匹撃破がノルマになりますね」
「……楽勝ね」
「ええ、仰るとおりです」

二人の顔に浮かぶのは、共に不敵な笑み。
ハルヒは愛用の剣を抜き、古泉は両手にエネルギーを溜める。

「突撃ィィィィィ!」

ハルヒの声を合図に、二人は魔物の大群へと飛び込んだ。


後半に続く
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新SS企画 「ガーディアンアカデミー」 プロローグ

2010-01-02 18:59:36 | 二次創作
無数の大陸が存在する、とある星。
この星の海は激しく荒れ狂い、大陸同士の交流を阻んでいた。
それ故、おのおのの大陸はまったく異なる独自の文化を発展させていくことになる。
やがて一つの大陸で、他の大陸に渡れるほどの航空技術が生まれた。
それをきっかけに、各大陸の文化は混ざり合い爆発的な発展を遂げた。
しかし、華々しい発展はある時を境に閉ざされることになる。
大魔王ゾーマ。
異世界より現れたその暴君は、おのれの僕である魔物達を操り世界各地で暴虐の限りを尽くした。
大魔王の出現により、世界は恐怖と絶望に満たされた。
されど、いつまでも一方的に蹂躙されているほど人類も脆弱ではなかった。
各大陸で、腕に覚えのあるものが魔物を討つべく立ち上がった。
そしてついに、七人の戦士がゾーマを討ち取ったのである。

仮面ライダー・本郷猛。
妖怪・八雲紫。
波紋戦士・ジョセフ・ジョースター。
男・江田島平八。
勇者・オルテガ。
吸血鬼・アーカード。
道士・太公望。

ゾーマを倒したこの七人は、「七英雄」として世界中からたたえられることになる。

しかし、ゾーマが潰えても世界に平和は訪れなかった。
世界中に放たれた魔物達は、主を失ってもその活動を停止しなかったのだ。
未だ人間に被害をもたらす魔物達に対し、無力な人々を守るべく強者たちは戦いを続けた。
やがて魔物と戦う者たちは、「ガーディアン」と呼ばれるようになる。
ゾーマ打倒から十年後、かつての英雄の一人である江田島は、故郷のジパングにガーディアンを養成する教育機関を設立する。
「ガーディアンアカデミー」と名付けられたその学校には、世界中から優秀な人材が集まり、そして巣立っていった。
いつしか、ガーディアンアカデミーを卒業することは指折りのステータスと見なされるようになった。
そして、アカデミー設立からさらに二十年後……。


【ジパング西部・とある街】

静かな街を、一人の快活そうな少女が走る。
その顔に浮かぶ笑みは、彼女に何かうれしい出来事が訪れたのだろうと容易に予想させる。
やがて少女は、とある民家に駆け込んでいった。

「キョン! いる?」
「おお、ハルヒ。俺もちょうどそっちに行こうと思ってたところだ」

少女に呼ばれて出てきたのは、どこにでもいそうな平凡な顔立ちの少年。
キョンと呼ばれた彼の顔にも、かすかに笑みが浮かんでいる。

「その顔だと、あんたも合格通知来たみたいね!」
「ああ、まさか合格するとは思わなかったけどな」
「有希とみくるちゃんと古泉君も合格したそうなのよ! すごいと思わない?
 この街で試験を受けた五人全員が合格なんて!」
「ほう、たしかにそれはすごいな。長門や古泉が優秀なのは知っているが、朝比奈さんもか」
「まあそんなわけで、この春からも一緒にいることになるわ。ちゃんと私についてきなさいよ?」
「はいはい、わかったよ」

キョンの表情は、苦笑い。だがその口調には、どこか楽しそうな色が混じっていた。


【とある孤城】

薄暗い城の深部。一人の男が椅子に腰掛けている。そして彼の視線の先には、部屋の入り口をふさぐように立っている女性がいた。

「行くのか」
「はい」

短い男の言葉に、女もまた短く答える。

「私が三十年前にゾーマを打ち倒したのは、正義やなんだといった綺麗な感情からの行動ではない。
 ただやつが気に入らなかっただけだ。それはわかっているのだろうな?」
「もちろんです。あなたは私の師匠であり、支配者であり、父であるのですから。
 ですが、私はあなたではありません。私は、あなたとは違う道を歩きたい」
「そうか……」

女の言葉に、男は小さく溜め息を漏らす。

「ならば、止めはせん。行ってくるがいい、セラス・ヴィクトリア」


【ジパング・東京近郊】

「す、すげえ……」
「突撃ホーンを、鎖一本でしとめやがった……」

市街地の外れから、ざわめきが起きる。その中心にいたのは一人の青年と鎖でがんじがらめにされた獣型の魔物。
そして、腰を抜かした老婆だった。
ことの発端は、ガーディアンが取り逃がした一匹の魔物が街に侵入したことにあった。
当然住人たちは避難するが、一人の老婆が逃げ遅れる。
老婆に魔物が襲いかかろうとしたまさにその時、突如現れた一人の青年が瞬く間に鎖で魔物を捕縛してしまったのである。

「本当にありがとうございます、お若い方……。ぜひとも何かお礼を……」
「いえいえ、当然のことをしたまでです。お礼などいただけませんよ」

泣きながら感謝の言葉を口にする老婆に対して、青年はさわやかな笑顔で言い放つ。

「ああ、そうだ。お礼でしたら、道を教えていただけないでしょうか。
 ガーディアンアカデミーまでの道のり、わかりますか?」
「それなら……」
「私が案内しますよ」

老婆の声を遮り、群衆から一人の少女が一歩歩み出た。

「君は……?」
「今度アカデミーに入学する者です。あなたもそうでしょう? “Chain”のジョウさん?」
「え……。なんでその名を!」

名乗ってもいない自分の名前を言い当てられ、青年は驚きの表情を顔に浮かべる。

「その若さであの鎖捌き、噂に聞くアンドロメダ星座の聖闘士、ジョウさんしかいないでしょう。
 ジョウさんも今回の試験を受けていたと聞き及んでおりましたし」

可憐な顔立ちに笑みを浮かべながら、少女はジョウに近づいていく。

「名乗り遅れました。私、フラグビルドといいます。よかったら、アカデミーまで同行させていただけませんか?」


【ガーディアンアカデミー・事務員室】

夜の校舎に、カタカタとキーボードを叩く音が響く。
音の発生源は事務員室。そしてキーボードを叩きパソコンに文字を入力しているのは、目の下に隈を作った青年だった。

「なんや、まだ仕事やってたんか」
「ああ、黒井先生。どうかしました?」

そこへ、一人の女性がやってくる。彼女の名は、黒井ななこ。
アカデミーのOGであり、現在はこの学校で教鞭を執っている。

「いや、別に用はないねんけどな。ただ、こんな時間まで働いとるご苦労なやつの顔を見に来ただけや」
「好きで働いてるわけじゃないっすよ。新入生が入ってくるこの時期は、やるべき事が多いんだから仕方ないじゃないですか」

ななこの言葉に、パソコンの前の青年はいかにも不機嫌そうに返す。

「新入生かー……。今年は人数少ないって聞いたけど、中身はどんな感じなん?
 うちは今年、入学試験には関わってへんから知らへんのやけど」

相手の機嫌など意に介することなく、ななこは質問を青年に投げかけた。
青年は一つ溜め息を漏らしたものの、律儀に返答を行う。

「たしかに今年の合格者は、20人と例年より少なめです。ですが、そのぶん質は過去最高クラスと言っていいと思いますよ。
 今や最強のガーディアンとなった勇者アルスの再来とまでいわれる涼宮ハルヒ。
 七英雄の一人であるアーカードさんの愛弟子、セラス・ヴィクトリア。
 CLAMP国の王子にして史上初の筆記試験満点を達成した妹之山残。
 ジパングの剣術使いでは若手ナンバー1との呼び声高い明神弥彦。
 試験官をやった先生たちの期待値が高いのはこの辺りですが、その他の合格者もかなりの実力者揃いっすよ」
「ほうほう、なるほど。そりゃ教えるのが楽しみやなあ」

返ってきた答に、ななこは嬉しそうに目を細めた。

「よし、なんや気分がようなってきたから、飲みにでも行くか! 朔、お前もつきあえ!」
「だから、まだ仕事が終わってないんですってば……」

こちらの都合をまったく考えていないななこの発言に、朔と呼ばれた男は大きく溜め息をつくのであった。
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