リスタート前のカオスロワ外伝用に書いたけど、お蔵入りになった話。
冒頭部分は、ほぼそのまま実際に投下したハルヒ登場話に流用してます。
涼宮ハルヒは、ビルの谷間で立ちつくしていた。
たしかに、自分は「非日常」を望んでいた。
だが、それは決してこんなものではない。
自分が望んでいたのは、宇宙人や未来人と楽しく遊べる日々だ。
こんな血みどろの「非日常」など、願い下げである。
「ぶっ壊してやるわ。こんな誰一人楽しめない、最低のゲーム」
自らに言い聞かせるように、ハルヒは声に出して呟く。
だがその声は、かすかに震えていた。
彼女とて多少エキセントリックなところはあるが、普通の高校生なのだ。
いつ殺されるかわからないという状況に、恐怖を感じないわけがない。
「とにかく、まずは現状把握ね! どんな武器があるのかによって、今後の行動方針も変わってくるし」
地べたに腰を下ろし、ハルヒは自分に支給されたデイパックに手を突っ込む。
「さて……まずは……? ん? 何よこれ」
ハルヒの手がつかんだのは、白い箱状の物体だった。
中央部には溝があり、そこに何かのカードを差し込むようになっているらしい。
だが、肝心の使用用途がハルヒにはさっぱりわからなかった。
「おもちゃかしら? この状況じゃあ、ちょっと役に立ちそうにないわね」
眉間にわずかながらしわを寄せつつ、ハルヒはそれをデイパックに戻そうとする。
だがその時、彼女の正面から声が飛んできた。
「おい、そこのお嬢ちゃん」
反射的に、ハルヒは顔を上げる。そこには、端整な顔立ちを仏頂面に歪めた青年が立っていた。
(え? いつの間にこんな近くに……)
戸惑うハルヒだったが、青年はお構いなしに言葉を続ける。
「お前が持っているそれは、もともと俺のものだ。返してもらえるか?」
「いやだと言ったら?」
青年の要求に対し、ハルヒは無理に不敵な笑みを作りながらそう答えた。
そもそも見ず知らずの人間を信用するに足る根拠など、どこにもない。
そのうえ万が一この謎の物体が強力な武器だった場合、それを渡してしまえば自分が危険になるかもしれない。
ハルヒの判断は、ある程度理にかなったものであった。
もっとも、理にかなった行動が常に最適だとは限らないのが世の中というものなのだが。
「だったら……力ずくで奪うか」
淡々と呟くと、青年は突如としてハルヒの顔面目がけて回し蹴りを放った。
そのままハルヒの顔を砕くかと思われた右脚は、しかしその寸前でぴたりと止まる。
「なんてな。冗談だ、冗談。こっちはお前に危害を加えるつもりはない。
だからおとなしく渡してもらえると助かるんだが……って」
青年の言葉は、途中で途切れた。話を聞かせるべき相手であるハルヒが、白目を剥いて失神していることに気づいたのである。
「しまった。やりすぎたか……」
◇ ◇ ◇
「いやー、悪かった悪かった。俺も気づかないうちに気が立ってたみたいでな。ついやってしまった」
「そんな誤植した編集者みたい名乗りで謝られても、こっちは納得いかないわよ!
本気で死ぬかと思ったんだから!」
数分後、そこには飄々とした態度で謝る青年と、顔を真っ赤にして怒鳴るハルヒの姿があった。
「……まあいいわ。あたしが気絶してる間に殺さなかったってことは、少なくとも今すぐあたしに危害を加える気はないってことよね?
いちおうはあなたのこと、信頼してあげるわ」
「……そりゃどうも」
ハルヒの言葉に、青年はあきれ顔で返す。
「とりあえず、自己紹介ぐらいはしておくわね。あたしは涼宮ハルヒ。県立北高校の1年生よ」
「俺は門矢士。通りすがりのカメラマンだ」
「通りすがりの……。変な名乗り方するのね。っていうか、カメラマンってテレビ局かなんかの?」
「そっちじゃない。写真家の方だ」
「あー、そっち。こんな状況じゃなければ、一枚お願いするところなんだけどねえ」
「まあお願いされたところで、カメラも没収されてるから撮れないけどな。
……さて、おしゃべりの時間はここまでだ」
「え?」
ふいに、士の目に鋭い光が宿る。視線を動かした彼につられてハルヒが同じ方向を見ると、そこには異様な姿の人物が立っていた。
シルクハットにタキシード。それだけなら珍しくはあるが、現実離れしているというほどではない。
だがシルクハットの下にあるのは人間の顔ではなく、醜悪な昆虫の顔だった。
「ちょ……何よあれ! 着ぐるみ? いや、でもそれにしてはリアルで……」
たじろぐハルヒを意に介することなく、怪人は少しずつ二人に近づいてくる。
やがて、その口から野太い声が放たれた。
「俺はGOD悪人軍団、カブト虫ルパン! ディケイド、その命もらい受けるぞ!」
「え? でぃけいど?」
「フン、過去の組織の亡霊が……。いいだろう、相手してやるよ」
不敵な笑みを浮かべながら言い放つと、士はどこからともなく件の物体を取り出す。
「あー! それ、いつの間に!」
「教えておいてやろう。こいつはディケイドライバーというんだ」
士がディケイドライバーを腰に当てると、そこからベルトが飛び出し彼の腰に固定される。
さらに士は一枚のカードを取り出し、ドライバーの中央部にそれを差し込んだ。
『KAMENRIDE DECADE!』
電子音声が発せられたかと思うと、士の体は瞬く間に漆黒の鎧に包まれていく。
さらにその鎧の一部が、マゼンタに染まる。
その姿こそが、門矢士のもう一つの姿だった。
「これって……まさか仮面ライダー?」
大きく変化した士の姿を見て、ハルヒはうわごとのように呟く。
彼女は、うわさ話として聞いたことがあった。
古代から蘇った凶悪な怪物を、人間になりすまし社会に溶け込む悪の宇宙人を、鏡の中から現れるモンスターを、人知れず倒している正義の味方がいると。
その名は、「仮面ライダー」だと。
「門矢さん……。あなた、何者?」
「なんだ、もう一度自己紹介しなきゃいけないか? 通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ!」
◇ ◇ ◇
ディケイドとカブト虫ルパンは、一進一退の攻防を繰り広げていた。
「ああもう、何やってるのよ! 正義の味方なら、そんな雑魚っぽいやつちゃっちゃとやっつけちゃいなさいって!」
「お前がそうやってギャーギャー騒ぐから、気が散るんだろうが!」
「言ってるそばから、隙だらけだぞ!」
ハルヒに気をとられたディケイドの胸に、カブト虫ルパンの正拳が突き刺さる。
足下をふらつかせるディケイドだったが、なんとか踏みとどまった。
「仕方ない、一気に勝負を決めるか……。カブト虫にはカブト虫だ!」
新たなカードを取り出したディケイドは、それをドライバーにセットする。
『KAMENRIDE KABUTO!』
再び電子音声が流れ、ディケイドの体を六角形にかたどられた光のパネルが覆っていく。
その光が消えたとき、ディケイドはまったく違う姿に変貌していた。
赤と黒のプロテクターに、カブト虫を模した角。
「カブト」と呼ばれる仮面ライダーに。
「すごい! また変身した!」
歓声を上げるハルヒを無視して、カブトとなったディケイドは怒涛の連撃をカブト虫ルパンに叩き込む。
「ぬうっ! このっ!」
カブト虫ルパンも負けじと反撃に出るが、その攻撃は空を切る。
「これで終わりだ」
短く呟くと、ディケイドはさらなるカードをドライバーに投入した。
『FINAL ATACK RIDE KAKAKAKABUTO!』
「はあっ!」
刹那、タキオン粒子を纏った超高速の回し蹴りが放たれる。
それをまともに受けたカブト虫ルパンの体は大きく吹き飛び、悲鳴すら上げる間もなく粉々に吹き飛んだ。
◇ ◇ ◇
「さて……これからどうする?」
戦いが終わり、変身を解除した士は駆け寄ってきたハルヒに尋ねる。
「どうするって……。まあ最終目標は、この殺し合いとやらをぶち壊すことね。
でもその前に……友達を見つけないと」
「友達か……」
「ええ。最初のあの部屋で、一人見つけたわ。ひょっとしたら、他にもいるかもしれない。
ただでさえ危険な状況なのに、さっきみたいな化け物までいるとなったらうかうかしてられないわ。
早く合流して、安全を確保しないと」
「そうか。それじゃまあ、頑張れ」
「ちょっと、どこ行くのよ!」
会話を打ち切って立ち去ろうとする士だったが、ハルヒは慌ててその襟をつかむ。
「どこにって……。別にどこでもいいだろう。お前と俺が一緒にいる必要性もないんだし」
「あんたねえ、危険地帯に一般市民を置き去りにしていく正義の味方がどこにいるのよ!
ちゃんと守りなさいよ!」
「俺は仮面ライダーなのはたしかだが、正義の味方を名乗った覚えはないんだがなあ……」
「うるさい! 弱いものを守るのは、強いものの義務でしょうが!」
「めんどくさいお嬢さんだなあ……。まあいい。たしかに、ここで見捨てて死なれても目覚めが悪いしな。
しばらく一緒にいてやるよ」
折れた士に対し、ハルヒは無言で顔をほころばせた。
「それじゃ、さっさと行くぞ。はぐれるなよ?」
「はいはーい!」
「そういえば、マシンディケイダーもないんだったか……。どこかにバイクがあればいいんだがなあ……」
愚痴を漏らしながら歩き出す士の後ろを、ハルヒも付いていく。
「そういえば、あんたは誰か知り合いいないの?」
「確認できたのは一人だな。南光太郎、俺と同じ仮面ライダーだ」
「仮面ライダーって、一人じゃないんだ……」
「10人はいるぞ? 正確な数は俺も知らないがな」
「そんなに!? あーもう、なんでそれだけの数がいながら、今まで遭遇できなかったのよ!」
「つくづく変わったやつだな……」
愛らしい顔を歪めて地団駄を踏むハルヒを見ながら、呆れた表情を浮かべる士。
だがその表情は、すぐに引き締まったものへと変わる。
(どこの組織だか知らないが……。こんな一般人まで巻き込んでおいて、ただで済むと思うなよ?
この悪趣味なゲーム、俺が破壊してやる!)
世界の破壊者・仮面ライダーディケイド。その新たな戦いが、今始まった。
【千代田区/一日目・日中】
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考]
基本:バトルロワイアルの破壊
1:士に付いていく
2:キョンと合流
【門矢士@仮面ライダーディケイド】
[状態]健康
[装備]ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:バトルロワイアルの破壊
1:ハルヒを守る
2:可能なら光太郎と合流
3:バイクの入手
※南光太郎と面識があります
【支給品解説】
・ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド
仮面ライダーディケイドの変身ベルト。カードホルダーであるライドブッカーも付属。
『KAMENRIDE DECADE』のカードをセットすることで、ディケイドに変身可能。
さらに別のカードを使えば、クウガ~キバの歴代平成ライダーにも変身できる。
今回は士以外でも使用可能。ただし、使いこなせるとは限らない。
冒頭部分は、ほぼそのまま実際に投下したハルヒ登場話に流用してます。
涼宮ハルヒは、ビルの谷間で立ちつくしていた。
たしかに、自分は「非日常」を望んでいた。
だが、それは決してこんなものではない。
自分が望んでいたのは、宇宙人や未来人と楽しく遊べる日々だ。
こんな血みどろの「非日常」など、願い下げである。
「ぶっ壊してやるわ。こんな誰一人楽しめない、最低のゲーム」
自らに言い聞かせるように、ハルヒは声に出して呟く。
だがその声は、かすかに震えていた。
彼女とて多少エキセントリックなところはあるが、普通の高校生なのだ。
いつ殺されるかわからないという状況に、恐怖を感じないわけがない。
「とにかく、まずは現状把握ね! どんな武器があるのかによって、今後の行動方針も変わってくるし」
地べたに腰を下ろし、ハルヒは自分に支給されたデイパックに手を突っ込む。
「さて……まずは……? ん? 何よこれ」
ハルヒの手がつかんだのは、白い箱状の物体だった。
中央部には溝があり、そこに何かのカードを差し込むようになっているらしい。
だが、肝心の使用用途がハルヒにはさっぱりわからなかった。
「おもちゃかしら? この状況じゃあ、ちょっと役に立ちそうにないわね」
眉間にわずかながらしわを寄せつつ、ハルヒはそれをデイパックに戻そうとする。
だがその時、彼女の正面から声が飛んできた。
「おい、そこのお嬢ちゃん」
反射的に、ハルヒは顔を上げる。そこには、端整な顔立ちを仏頂面に歪めた青年が立っていた。
(え? いつの間にこんな近くに……)
戸惑うハルヒだったが、青年はお構いなしに言葉を続ける。
「お前が持っているそれは、もともと俺のものだ。返してもらえるか?」
「いやだと言ったら?」
青年の要求に対し、ハルヒは無理に不敵な笑みを作りながらそう答えた。
そもそも見ず知らずの人間を信用するに足る根拠など、どこにもない。
そのうえ万が一この謎の物体が強力な武器だった場合、それを渡してしまえば自分が危険になるかもしれない。
ハルヒの判断は、ある程度理にかなったものであった。
もっとも、理にかなった行動が常に最適だとは限らないのが世の中というものなのだが。
「だったら……力ずくで奪うか」
淡々と呟くと、青年は突如としてハルヒの顔面目がけて回し蹴りを放った。
そのままハルヒの顔を砕くかと思われた右脚は、しかしその寸前でぴたりと止まる。
「なんてな。冗談だ、冗談。こっちはお前に危害を加えるつもりはない。
だからおとなしく渡してもらえると助かるんだが……って」
青年の言葉は、途中で途切れた。話を聞かせるべき相手であるハルヒが、白目を剥いて失神していることに気づいたのである。
「しまった。やりすぎたか……」
◇ ◇ ◇
「いやー、悪かった悪かった。俺も気づかないうちに気が立ってたみたいでな。ついやってしまった」
「そんな誤植した編集者みたい名乗りで謝られても、こっちは納得いかないわよ!
本気で死ぬかと思ったんだから!」
数分後、そこには飄々とした態度で謝る青年と、顔を真っ赤にして怒鳴るハルヒの姿があった。
「……まあいいわ。あたしが気絶してる間に殺さなかったってことは、少なくとも今すぐあたしに危害を加える気はないってことよね?
いちおうはあなたのこと、信頼してあげるわ」
「……そりゃどうも」
ハルヒの言葉に、青年はあきれ顔で返す。
「とりあえず、自己紹介ぐらいはしておくわね。あたしは涼宮ハルヒ。県立北高校の1年生よ」
「俺は門矢士。通りすがりのカメラマンだ」
「通りすがりの……。変な名乗り方するのね。っていうか、カメラマンってテレビ局かなんかの?」
「そっちじゃない。写真家の方だ」
「あー、そっち。こんな状況じゃなければ、一枚お願いするところなんだけどねえ」
「まあお願いされたところで、カメラも没収されてるから撮れないけどな。
……さて、おしゃべりの時間はここまでだ」
「え?」
ふいに、士の目に鋭い光が宿る。視線を動かした彼につられてハルヒが同じ方向を見ると、そこには異様な姿の人物が立っていた。
シルクハットにタキシード。それだけなら珍しくはあるが、現実離れしているというほどではない。
だがシルクハットの下にあるのは人間の顔ではなく、醜悪な昆虫の顔だった。
「ちょ……何よあれ! 着ぐるみ? いや、でもそれにしてはリアルで……」
たじろぐハルヒを意に介することなく、怪人は少しずつ二人に近づいてくる。
やがて、その口から野太い声が放たれた。
「俺はGOD悪人軍団、カブト虫ルパン! ディケイド、その命もらい受けるぞ!」
「え? でぃけいど?」
「フン、過去の組織の亡霊が……。いいだろう、相手してやるよ」
不敵な笑みを浮かべながら言い放つと、士はどこからともなく件の物体を取り出す。
「あー! それ、いつの間に!」
「教えておいてやろう。こいつはディケイドライバーというんだ」
士がディケイドライバーを腰に当てると、そこからベルトが飛び出し彼の腰に固定される。
さらに士は一枚のカードを取り出し、ドライバーの中央部にそれを差し込んだ。
『KAMENRIDE DECADE!』
電子音声が発せられたかと思うと、士の体は瞬く間に漆黒の鎧に包まれていく。
さらにその鎧の一部が、マゼンタに染まる。
その姿こそが、門矢士のもう一つの姿だった。
「これって……まさか仮面ライダー?」
大きく変化した士の姿を見て、ハルヒはうわごとのように呟く。
彼女は、うわさ話として聞いたことがあった。
古代から蘇った凶悪な怪物を、人間になりすまし社会に溶け込む悪の宇宙人を、鏡の中から現れるモンスターを、人知れず倒している正義の味方がいると。
その名は、「仮面ライダー」だと。
「門矢さん……。あなた、何者?」
「なんだ、もう一度自己紹介しなきゃいけないか? 通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ!」
◇ ◇ ◇
ディケイドとカブト虫ルパンは、一進一退の攻防を繰り広げていた。
「ああもう、何やってるのよ! 正義の味方なら、そんな雑魚っぽいやつちゃっちゃとやっつけちゃいなさいって!」
「お前がそうやってギャーギャー騒ぐから、気が散るんだろうが!」
「言ってるそばから、隙だらけだぞ!」
ハルヒに気をとられたディケイドの胸に、カブト虫ルパンの正拳が突き刺さる。
足下をふらつかせるディケイドだったが、なんとか踏みとどまった。
「仕方ない、一気に勝負を決めるか……。カブト虫にはカブト虫だ!」
新たなカードを取り出したディケイドは、それをドライバーにセットする。
『KAMENRIDE KABUTO!』
再び電子音声が流れ、ディケイドの体を六角形にかたどられた光のパネルが覆っていく。
その光が消えたとき、ディケイドはまったく違う姿に変貌していた。
赤と黒のプロテクターに、カブト虫を模した角。
「カブト」と呼ばれる仮面ライダーに。
「すごい! また変身した!」
歓声を上げるハルヒを無視して、カブトとなったディケイドは怒涛の連撃をカブト虫ルパンに叩き込む。
「ぬうっ! このっ!」
カブト虫ルパンも負けじと反撃に出るが、その攻撃は空を切る。
「これで終わりだ」
短く呟くと、ディケイドはさらなるカードをドライバーに投入した。
『FINAL ATACK RIDE KAKAKAKABUTO!』
「はあっ!」
刹那、タキオン粒子を纏った超高速の回し蹴りが放たれる。
それをまともに受けたカブト虫ルパンの体は大きく吹き飛び、悲鳴すら上げる間もなく粉々に吹き飛んだ。
◇ ◇ ◇
「さて……これからどうする?」
戦いが終わり、変身を解除した士は駆け寄ってきたハルヒに尋ねる。
「どうするって……。まあ最終目標は、この殺し合いとやらをぶち壊すことね。
でもその前に……友達を見つけないと」
「友達か……」
「ええ。最初のあの部屋で、一人見つけたわ。ひょっとしたら、他にもいるかもしれない。
ただでさえ危険な状況なのに、さっきみたいな化け物までいるとなったらうかうかしてられないわ。
早く合流して、安全を確保しないと」
「そうか。それじゃまあ、頑張れ」
「ちょっと、どこ行くのよ!」
会話を打ち切って立ち去ろうとする士だったが、ハルヒは慌ててその襟をつかむ。
「どこにって……。別にどこでもいいだろう。お前と俺が一緒にいる必要性もないんだし」
「あんたねえ、危険地帯に一般市民を置き去りにしていく正義の味方がどこにいるのよ!
ちゃんと守りなさいよ!」
「俺は仮面ライダーなのはたしかだが、正義の味方を名乗った覚えはないんだがなあ……」
「うるさい! 弱いものを守るのは、強いものの義務でしょうが!」
「めんどくさいお嬢さんだなあ……。まあいい。たしかに、ここで見捨てて死なれても目覚めが悪いしな。
しばらく一緒にいてやるよ」
折れた士に対し、ハルヒは無言で顔をほころばせた。
「それじゃ、さっさと行くぞ。はぐれるなよ?」
「はいはーい!」
「そういえば、マシンディケイダーもないんだったか……。どこかにバイクがあればいいんだがなあ……」
愚痴を漏らしながら歩き出す士の後ろを、ハルヒも付いていく。
「そういえば、あんたは誰か知り合いいないの?」
「確認できたのは一人だな。南光太郎、俺と同じ仮面ライダーだ」
「仮面ライダーって、一人じゃないんだ……」
「10人はいるぞ? 正確な数は俺も知らないがな」
「そんなに!? あーもう、なんでそれだけの数がいながら、今まで遭遇できなかったのよ!」
「つくづく変わったやつだな……」
愛らしい顔を歪めて地団駄を踏むハルヒを見ながら、呆れた表情を浮かべる士。
だがその表情は、すぐに引き締まったものへと変わる。
(どこの組織だか知らないが……。こんな一般人まで巻き込んでおいて、ただで済むと思うなよ?
この悪趣味なゲーム、俺が破壊してやる!)
世界の破壊者・仮面ライダーディケイド。その新たな戦いが、今始まった。
【千代田区/一日目・日中】
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考]
基本:バトルロワイアルの破壊
1:士に付いていく
2:キョンと合流
【門矢士@仮面ライダーディケイド】
[状態]健康
[装備]ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:バトルロワイアルの破壊
1:ハルヒを守る
2:可能なら光太郎と合流
3:バイクの入手
※南光太郎と面識があります
【支給品解説】
・ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド
仮面ライダーディケイドの変身ベルト。カードホルダーであるライドブッカーも付属。
『KAMENRIDE DECADE』のカードをセットすることで、ディケイドに変身可能。
さらに別のカードを使えば、クウガ~キバの歴代平成ライダーにも変身できる。
今回は士以外でも使用可能。ただし、使いこなせるとは限らない。