中ノ沢温泉は安達太良山の山腹に立地する温泉で、山頂から見ると西側に当たる。源泉は、沼尻からの引き湯である。吾妻や安達太良山周辺には他に酸性の硫黄泉もいくらかあるが、天ぷら饅頭の日乃出屋で揚げたてを食べたくて、ついつい寄ってしまう。
浴室は男女別の内湯と、混浴の露天に分かれており、行き来には一度服を着ないといけない。露天は御婦人でにぎわっていたため、内湯だけ利用した。洗い場と十数人サイズの浴槽があるだけのシンプルな浴室で、懸濁しているが底まで見通せる程度の湯が静かにかけ流されていた。湯温は熱め、飲泉も可能で酸味があった。
(2021 年 7 月)
◆源泉情報◆
源泉名:沼尻元湯
泉質:含硫黄-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩・塩化物泉
湧出量:13400 l/min
泉温:68.3℃
成分:pH2.1、溶存物質 2662 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。
カルシウムイオン | 231.5 (28.20) | 硫酸イオン | 1025 (51.15) |
アルミニウムイオン | 78.8 (21.39) | 塩化物イオン | 582.5 (39.38) |
マグネシウムイオン | 74.5 (14.97) | 硫化水素イオン | 274.5 (6.78) |
総鉄イオン | 11.7 (1.16) | フッ素イオン | 18.4 (2.32) |
マンガンイオン | 4.3 (0.38) | チオ硫酸イオン | 6.1 (0.26) |
水素イオン | 7.9 (19.11) | メタケイ酸 | 155.4 |
硫酸 | 5.5 | 遊離硫化水素 | 98.7 |
分析日:2014 年 7 月 2 日
那須といえば関東では著名な避暑地であり、御用邸の他、那須ハイランドパークのようなレジャー施設があることでも有名である。奈良時代から続く湯本温泉のほか、江戸、明治、大正と新たに発見された温泉が茶臼岳山腹に点在し、那須温泉郷を形成しているが、引き湯の温泉や新たに掘り当てた源泉を使用しているところでは、那須温泉を名乗ることが多い。源泉那須山は、お菓子の城那須ハートランド内に併設された日帰り温泉施設だ。
内湯は大きな檜風呂。無色透明の湯で満たされているが、オーバーフローしている様子は見受けられない。やや消毒臭がした。口に含むのは遠慮したが、分析表によると微塩味があるそうだ。露天も檜の浴槽だ。こちらはチョロチョロとオーバーフローしているが、循環もしている。いずれにしろ、あまり特徴のない湯であった。
(2020 年 11 月)
◆源泉情報◆
源泉名:泉の湯
泉質:ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉
泉温:52.2℃
湧出量:162.0 l/min
成分:pH7.7、溶存物質 3925 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。
ナトリウムイオン | 1157.0 (93.12) | 塩化物イオン | 1226.1 (63.28) |
カルシウムイオン | 63.3 (5.85) | 硫酸イオン | 579.6 (22.08) |
メタケイ酸 | 84.4 | 炭酸水素イオン | 478.3 (14.34) |
メタホウ酸 | 317.0 | ヒ素 | 0.760 |
分析日:2010 年 3 月 23 日
※2011 年 8 月に廃業しました。
玄関から声をかけると、女将さんが出てきてくれ「ウチは小さな浴槽しかないけどそれでもいいか」、「ちょっと広めのもあるから、先に小さい方に入って、その後、広い方で寛ぐとよい」などいろいろと説明をしてくれた。600 円の入浴料を払うのに 1000 円札を出したら「今の若いのは金持ちね。お釣り持ってくるから待っていて」と。後で知ったことだが、話好きの名物女将だったよう。
浴室は男女別ではなく、貸切で使用するようだ。生活感あふる脱衣所で、なにか民家の風呂を借りているような感覚になる。
浴室を戸を開けると、澄んだ深緑色の湯が丸い湯舟に湛えられていた。なんとも美しい色だ。硫黄の香が立ち込め、水面には油膜が浮いていた。パイプから注がれた湯は、湯舟の縁の細い切れ込みから注がれた分だけかけ流されていたが、浸かると全周からあふれ出した。やや熱めの湯で、黒い湯の花が舞い、口に含むと苦味とアブラ臭がぶわっと広がる特徴的な湯だった。大変に温まりがよく、この浴室で出たり入ったりを繰り返し、だいぶ時間を使ってしまったため、もう一方の浴室はほとんど記念入湯のような駆け足の入湯となってしまったが、浴室の隅の湯舟は 1 人でも足は延ばせないような小ぶりであった。
特徴的な湯、使い込まれた浴室の雰囲気と大満足だったのだが、「小さい方に入ってから広い方の浴槽」の指図を無視してしまったため、湯上りは女将にとやかく言われることになった。
(2009 年 4 月 12 日)
とある温泉地の源泉配湯中継基地で、余剰分が側溝に捨てられている。民家のすぐそばなので、ポリタンクに汲んで持ち帰ることにした。自宅で熱交換で温め、他の採取源泉と合わせて入浴した。現地での評価は無色透明無味無臭、53.1℃。
すぐ近くにちょろちょろと小川というにも小さな水の流れがあったのだが、少しぬるかった。配当所の湯が民家で常時かけ流されているなどしており、やはり余りが捨てられているのだろうか。
(2021 年 4 月)
◆源泉情報◆
源泉名:不明
とある温泉地の源泉配湯中継基地で、第一配湯所でブレンドされた 3 源泉が引かれており、余剰分が側溝に捨てられている。面しているのが車通りの少ない道路なので、電動石油ポンプでポリバスに汲み上げようとも考えたが、カーブの先にあって危険と判断し、ポリタンクに汲んで持ち帰ることにした。
事前調査で側溝の幅と深さを確認し、ホームセンターでちょうどいい大きさだった塗料用のバケツを購入。捨て湯をバケツに貯め、バケツから電動石油ポンプで 20 L のポリタンクへ汲み上げる。しかし、湯温が高かったために石油ポンプのホースに支障をきたしてしまったため、結局、バケツと漏斗でポリタンクに汲むことになった。自宅で熱交換で温め、他の採取源泉と合わせて入浴した。現地での評価は無色透明無味無臭、52.0℃。
(2021 年 4 月)
とある温泉施設の跡地に、いまでも大量の源泉が捨てられているとのことで、現地調査に赴いた。当該の温泉施設は 2012 年に廃業しており、現在は更地になっている。有名な温泉地にあり、幾度となくその前を通っていたのだが、源泉が捨てられているとは全く知らなかった。
源泉は、砂利敷きの駐車場の最奥にあり、ドバドバと用水路に捨てられていた。湯は透明だが、温泉成分により用水路は赤く染まっていた。かなり高温で、とてもその場にタライを持ち込んで浸かれるような代物ではなかったので、漏斗をつかって 20 L のポリタンクに汲んで、自宅まで持ち帰って入浴した (他の採取源泉と合わせ、熱交換で加温)。現地での評価は、芒硝味、弱塩味と記録。
ネット情報によると、営業していたころの当該施設は、この源泉を加水、加温、循環かけ流し併用で使用しており、やや塩素臭の気になる湯使いであったそう。手を加えていない源泉に触れることができ、満足を覚えたが、その後、近くの足湯施設でも同じ源泉を使用していることがわかった。わざわざ採取する必要はなかったか?
(2021 年 4 月)
◆源泉情報◆
泉質:ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉
泉温:70.4℃
成分:pH6.3、溶存物質 1530 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg)。
ナトリウムイオン | 310.21 | 塩化物イオン | 338.3 |
カルシウムイオン | 78.7 | 硫酸イオン | 294.6 |
メタケイ酸 | 156.1 | 炭酸水素イオン | 155.7 |
メタホウ酸 | 31.7 | 遊離二酸化炭素 | 130.9 |
分析日:不明 (2010 年以前)
内牧温泉は、阿蘇カルデラの北部に位置する温泉地で、街中にホテルや旅館、共同浴場が点在している。明治期の発見とされ、松山ののち熊本で 4 年間教鞭をとった夏目漱石も訪れている。
8 人ほど入れる内湯と水風呂、露天にも湯舟が 2 つあり、いずれも湯の投入量が多く、完全かけ流し。インターネット上では、芒硝や硫黄の味や臭いがあるとの記述も見られたが、あまりくせのない湯で、MTMM と記録した。ひょっとすると 2016 年の熊本地震で泉質に変化が起きているのかもしれない。兎角、かけ流し量が多くて気持ちの良い湯であった。
(2021 年 3 月)
◆源泉情報◆
泉質:単純温泉
北近畿タンゴ鉄道の天橋立駅のすぐ脇にある日帰り温泉施設である。外観は瓦屋根の 2 階建で、昭和初期頃の家屋のような佇まいであるが、2003 年に開業したそう。開業当初は炭酸水素塩泉だったようだが、2010 年時点では塩化物泉であった。内湯のほか、露天に壺湯などがあり、塩味のある湯が、循環で使用されていた。
当温泉へは、電車を利用して天橋立を観る“ついで”で立寄ったのだが、これが京都府内で最初の入湯となった。駅近で、電車も 1 時間に 1 本程度なので、待ち時間を利用してさっと入浴するのがいいだろう。
(2010 年 8 月)
◆源泉情報◆
源泉名:天橋立温泉
泉質:含放射能・鉄 (II)-ナトリウム-塩化物泉
湧出量:80.1 l/min
泉温:32.2℃
成分:pH6.87、溶存物質 16270 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。
ナトリウムイオン | 5058 (77.49) | 塩化物イオン | 8667 (89.28) |
マグネシウムイオン | 495.9 (14.37) | 硫酸イオン | 1192 (9.06) |
カルシウムイオン | 364.3 (6.40) | 炭酸水素イオン | 241.6 (1.45) |
鉄 (I) イオン | 36.4 (0.46) | 臭素イオン | 30.5 (0.14) |
総鉄イオン | 6.8 (0.07) | ラドン | 37.4 nCl |
マンガンイオン | 6.7 (0.08) | ストロンチウムイオン | 5.4 (0.04) |
分析日:2004 年 10 月 19 日
那須湯本は 1915 m の茶臼岳山腹に点在する那須温泉郷の中で最も歴史のある温泉で、奈良時代には都から小野朝臣らが湯治に訪れるなど、その名の知られた温泉であったことがうかがえる。九尾の狐伝説で有名な殺生石のすぐ近くにあるが、このお話は江戸時代の読本や浄瑠璃のお話である。
松川屋は那須街道から 1 本道を折れ、山の高低差をうまく利用した立地にあり、湯本の温泉街を、さらには平野部まで見渡せる景観が売りとなっている。20 人は余裕で入れる広々とした内湯は、湯口が 2 ヵ所あり、鹿の湯と行人の湯の混合泉が静かにかけ流されていた。仕切りにより大小に分けられていたが、小さい方はやや熱く、黄色っぽく、大きい方は適温で、青白い色に濁っていた。透明度は 12 cm ほど。展望抜群の露天風呂は 2~3 人サイズのこじんまりとしたもので、こちらもかけ流し。
那須街道沿いには鄙びた趣のこじんまりとした民宿が多く、いずれも素晴らしいが、広々とした風呂がいいのなら松川屋をお勧めする。このサイズの湯舟を満たして十二分な存在感を示す那須の湯はやはり名湯である。
(2020 年 11 月)
◆源泉情報◆
源泉名:鹿の湯・行人の湯混合泉
泉質:酸性-単純硫黄泉
泉温:53.7℃
成分:pH2.4、溶存物質 975.4 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg)。
カルシウムイオン | 56.2 | 硫酸イオン | 493.7 |
マグネシウムイオン | 25.6 | 硫酸水素イオン | 66.2 |
アルミニウムイオン | 21.4 | 塩化物イオン | 69.1 |
鉄 II イオン | 4.6 | メタケイ酸 | 186.9 |
マンガンイオン | 1.5 | 遊離硫化水素 | 88.5 |
分析日:2018 年 11 月 13 日