那須湯本は 1915 m の茶臼岳山腹に点在する那須温泉郷の中で最も歴史のある温泉で、奈良時代には都から小野朝臣らが湯治に訪れるなど、その名の知られた温泉であったことがうかがえる。九尾の狐伝説で有名な殺生石のすぐ近くにあるが、このお話は江戸時代の読本や浄瑠璃のお話である。
松川屋は那須街道から 1 本道を折れ、山の高低差をうまく利用した立地にあり、湯本の温泉街を、さらには平野部まで見渡せる景観が売りとなっている。20 人は余裕で入れる広々とした内湯は、湯口が 2 ヵ所あり、鹿の湯と行人の湯の混合泉が静かにかけ流されていた。仕切りにより大小に分けられていたが、小さい方はやや熱く、黄色っぽく、大きい方は適温で、青白い色に濁っていた。透明度は 12 cm ほど。展望抜群の露天風呂は 2~3 人サイズのこじんまりとしたもので、こちらもかけ流し。
那須街道沿いには鄙びた趣のこじんまりとした民宿が多く、いずれも素晴らしいが、広々とした風呂がいいのなら松川屋をお勧めする。このサイズの湯舟を満たして十二分な存在感を示す那須の湯はやはり名湯である。
(2020 年 11 月)
◆源泉情報◆
源泉名:鹿の湯・行人の湯混合泉
泉質:酸性-単純硫黄泉
泉温:53.7℃
成分:pH2.4、溶存物質 975.4 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg)。
カルシウムイオン | 56.2 | 硫酸イオン | 493.7 |
マグネシウムイオン | 25.6 | 硫酸水素イオン | 66.2 |
アルミニウムイオン | 21.4 | 塩化物イオン | 69.1 |
鉄 II イオン | 4.6 | メタケイ酸 | 186.9 |
マンガンイオン | 1.5 | 遊離硫化水素 | 88.5 |
分析日:2018 年 11 月 13 日