THE LION 復讐に燃えるリビアのテロリスト。4月頃にも書いたけど
また取り上げちゃった。
ここのところMICHAEL CONNELLYの犯罪スリラーであるHARRY
BOSCHモノばかり読み耽っていました。日本でもそうですが、アメリカ
の場合でも、この作家にはこの登場人物と大体組み合わせが決まって
います。例えば横溝正史だと金田一耕介とか、アガサクリスティだと
ポアロとか。コナンドイルならご存知シャーロックホームズという具合
です。
この図式は定番のようでアメリカの現代犯罪シリーズものも大抵この
スタイルを踏襲しています。流行作家のJAMES PATTERSONだとALEX
CROSSという黒人刑事が登場します。この役はモーガン・フリーマンが
主演をして映画化されています。COTTON MALONEと来ればSTEVE
BERRYのシリーズに出てきますし、ボーン・コレクターならジェフリー・
ディーヴァーが作家のリンカーンライムシリーズです。数え挙げたら
この手のモノは昔からいっぱいあります。まあHARRY BOSCHなんか
はさしずめレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウというところ
でしょうか。イメージが良く似ています。
こう言うのを書き出すとキリがないのですが、昔昭和30年代の中頃に
「マンハント」とか「ヒッチコックマガジン」という雑誌が発行されていた
ことがありました。その時にマイナーながらもアメリカの翻訳モノが
紹介されていました。メイビス・セドリックなんていう女探偵(探偵だった
と思う)はすごい印象に残っています。それこそハードボイルドでした。
もう覚えているひともいないでしょう。色気とガンで攻めまくるストレート
で刺激の強いモノでしたね。大藪晴彦も登場しています。ちょいと
話が逸れますけど。
ベストセラーの人気作家は大抵人気ヒーロー(ヒロイン)を抱えています。
その多くが刑事や捜査官、弁護士とかプロファイラーとか犯罪を捜査する
側の人間というのが大体共通した主人公ですね。
読者はそのヒーローに夢中になり、そのキャラクターがしまいにはとう
とう存在するかのように、読者の心の中を満たしていき、現実と虚構の
中を行ったり来たりし始めます。実際に起きた出来事と架空の世界の中
のリアリズムに酔いしれるのです。
僕のご贔屓の作家であるMICHAEL CONNELLYがロスアンジェレスを
中心とした米国西部が舞台であるの対して、もうひとりのご贔屓は東部の
ニューヨークをバックグラウンドとするNELSON DEMILLEです。
この作家の主人公はJOHN COREYという人物で、第一作PLUM ISLAND
(実際に現存する島)に初めて登場するNYの殺人課の刑事です。
この作品は言わばNY近郊のローカルな一事件でありましたが、その後の
作品では国際的なテロとか飛行機爆破事件とかに関わって来て、世界的
な犯罪レベルにまでその内容を大きく発展させています。それらはTHE
LION'S GAME, NIGHT FALL, WILD FIREといった作品群に反映されて
います。世界的な規模のテロ事件というのはもともとNELSON DEMILLEの
得意とする題材ではありますので、こういう方向に向かうのは彼らしいと
いえば彼らしい感じがします。JOHN COREYのこの4作は連続した物語と
いっても良く、出来れば製作順に読むほうが面白さが増します。
この中で唯一未解決になっているのがTHE LION'S GAME で、米国に侵
入したリビアのテロリストのストーリーなのですが、前回で(邦題は「王者
のゲーム」)COREYの必死の抵抗にあったテロリストのアサドは復讐に燃え
て再び米国に侵入して来ます。これを知ったCOREYは果たしてどう対応する
のか? 読者が待ち望んだ続編が最近発表されています。まだハードカバー
なのでちょっと買えませんが。
随分前にJOHN COREYの登場する第一作を読んだ時にはまだ次の作品が
発表されておらず、シリーズ化されそうな予感を抱きつつ次期作品を密かに
待ったものでしたが、その後の作品で今やJOHN COREYの存在は大きくなり、
アメリカの読者のみならず世界的な読者を巻き込んでのベストセラーになり
つつあります。ヴィジュアル的にはダイ・ハードを想像したら良いですかねえ。
アクションにプラスして、東部的なハイブラウな会話も人気のあるところかも
知れません。嫌味のない下品さもNYっ子のCOREYの持ち味ですし、地元の
作家ですから東部の読者に合うのでしょう。
面白そうだな、と思って手にした一冊がその後シリーズを重ねてだんだん
とベストセラーになっていく過程を見るのはある意味愉快な感じがします。
まだそれほど知られていない主人公が10年くらい経つと有名な人物に
変わっていくのは気分のよいものです。誰もまだ関心も示さないときから
読んでいて、後になって話題になるというのは、何か得をした気分にも
なります。
というワケで東海岸の一方の雄であるJOHN COREYが登場する5番目の
シリーズ、THE LION、今一番読みたい本です。
以前にも同じ内容で取り上げましたがまた書いてみました。ハードカバー
からなかなかペーパーバックになりません。
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