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銭湯の時代

2011-12-13 23:19:47 | その他
何十年経ってもついこの番号。空いていたためしがない。


久しぶりに家の近くの銭湯に行った。銭湯代は現在都内で450円。

家風呂と違い広々として開放感に溢れ、手も足も思い切り伸ばせて
何だか気持ちが良い。

この銭湯はサウナもあり、小規模ながらも露天風呂もあり水風呂に
さらには近づくとピリピリとする電気風呂まである。

ウーンと唸りながらたっぷりと浸かり、あ~、極楽といいながら
ホッカホッカになって家に戻った。大きなお風呂は気持ちが良い。
体がとても温まるし良く眠れて疲れが取れる気がする。

僕の子供の頃は家から歩いて10分以内に少なくとも銭湯が4軒は
あった。もっと歩けば更に2軒あった。それが今じゃ1軒しかない。

当時は夕刻に行くとすでに混雑していた。ごった返していて芋を洗う
ような状態の時も珍しくなかった。

現在の銭湯はロッカー形式だが、当時は竹で編んだ籠の中に着ている
モノを入れた。今から思えば無用心だがそれでたいしたトラブルも
出なかった。銭湯に行くのに貴重品など持って行くようなことは
しないし、銭湯代と風呂から出た後の楽しみの飲み物代かアイスキャン
ディーを買う小銭くらいしかない。

また銭湯は子供にとって社交場でもあり遊び場でもあった。
午後3時のオープンと同時に仲の良い子供ら同士で行き、洗い場と
浴槽で遊ぶ。当時の浴槽は深いのと浅いのとの2つで成り立ち
この間の仕切りの下のほうはお湯が行き来するように、下から
40センチくらい立ち上がっている。これを潜って通過するのが
楽しみであり小さな冒険だった。

フッと大きく息を詰めて底まで潜り、狭い仕切りの下を通り抜けて
向こう側の浴槽に出る。慣れて来るとモノの10秒とかからないが
早く上がろうとして焦ると背中が仕切りにつかえ慌ててしまい
お湯を飲む破目になる。銭湯で溺れたなんて恥ずかしくて誰にも
言えないし子供としてカッコ悪い。

お湯をかき回すための長い板があった。これを奥の覗き窓のある入口の
階段にかけて斜めにして上から石鹸をする。すべり台にするのである。
裸だから良く滑る。これが面白くてキャーキャー言って楽しむのだが
あまり派手に騒ぐと番台から怒鳴られるのが関の山で兼ね合いが難しい。
まだ誰もいないガランとしたところで子供の声はよく響く。怒られない
程度に遊ぶのにはちょっと要領がいる。

先週行った銭湯は自宅から15分くらいのところで場所がら相撲取りも
良く来る。いつもは空いているのだかどうしたわけかこの日は結構混んで
いた。早い時間帯に行ったせいだろうか。

たっぷりと暖まったので脱衣場で休んでいると、兄弟らしい子供が
2,3人浴槽から上がって来て、裸で「ママ~?」「おか~さん~」と
甲高い声で叫んでいる。ややあって女の脱衣場の方から「何~に?」と
返事があった。「ジュース欲しい!」「はいよ~」と仕切り壁を挟んで
親子の会話。いかにも下町の銭湯だねえ。大昔に見た光景がそのまま
そこにあった。テレビを見ている他の客もあまり気にもかけない。
こんなことはいまだに銭湯ではごく普通の出来事なのだ。番台もよく
したもので子供にジュースを渡している。いいねエ、こーゆーの。
子供は銭湯の達人である。


半世紀前の子供は下足札の番号もこだわった。お気に入りの番号札を
競ったのだ。立教から巨人に入団したプロ野球の長島の人気が凄く
背番号3番と同じ下足札が人気だったが、いつ行っても使われていて、
何だよ~、また駄目だァ ということが多かった。

ジイサンもバアサンも親も子供も皆銭湯に行った。当時自宅に風呂を
もっている家は少なかったし銭湯は社交場でもあった。モウモウと
した湯煙の中でごった返している昭和の銭湯は活気があった。

浴槽の上の絵は富士山と相場が決まっているが、最後の記憶にある
のは榛名富士だった。あそこの風呂屋はこの山、こっちの風呂屋は
あの湖とそれぞれ違っていた。熱い風呂に唸りながら浸かっている
ジイサンがいたり、浪花節を張り上げるオッサンに、全身見事な彫り物
を背負った御仁もいた。これらは全部当時あったりまえの光景だった
ものだ。今じゃあこちらもこういう連中と同じような年齢になったって
ことかも知れないな。


また銭湯へ行こう。そういえば昔はいたサンスケがいないね。
これはやっぱり廃ったかな。銭湯がない今時分じゃああゆうサービスは
成り立たないのだろう。









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