「『期待通り』じゃないほうが、より多くの人に興味を持ってもらえるのかなって」(前同『月刊エンタメ』)
4期生に合流すると、セレクション期間から視線を送り合っていた掛橋沙耶香と「友達」になった。ボカロやアニメといった趣味が一緒で、性格も合ったからだ。ふたりが共通して推している先輩が堀未央奈だった。
「未央奈さんは自分の個性でファンの方を巻き込んで、抗えないくらいの結果で返してくれる。そんな堀さんのストイックさを尊敬してます」(『EX大衆』2021年3月号)
林にとって転機となったのが、2020年12月6日に開催された「4期生ライブ2020(配信限定)」だ。林は『自分のこと』をソロ歌唱した。オーディションで見せた変化球のイメージと異なり、林の歌声はまっすぐ伸びて、視聴者の心に刺さった。『自分のこと』のオリジナルメンバーだった中元日芽香のことを、林はこう語っている。
「ブレずに超王道のスタイルを貫いて活動してきたことがすごいなと思うんです。私は自信を持って『王道をやりたい』と言えず、バラエティキャラみたいになっているところもあるので。自分のやりたいことを突き詰めるまっすぐさがほしいんです。『自分のこと』を歌ったことで、もっと自分に素直になろうという感情が芽生えました」(『EX大衆』2021年2月号)
2021年10月、初めて参加した(28thSG)アンダーライブで先輩たちと近い距離で接したことから、林はステージでも自然体でいられるようになった。
「迷っていた時期もあるんですけど、自然な自分に落ち着きました。同期や先輩たちと関わることで成長できたと思います。今の自分が一番好きです」(『EX大衆』2021年12月号)
そして、11月20日と21日に行なわれた「真夏の全国ツアー2021」の東京ドーム公演で、林の魅力が11万人のファンに伝わった。全メンバーがソロで歌い繋ぐ『きっかけ』で、これが最後のライブとなる高山一実のひとつ前の重要なパートを任され、見事に大役を果たしたのだ。
2022年8月28日、「真夏の全国ツアー2022」参加中の林はブログにこう綴った。「『丸くなったね』これも周りから言われるだけでなく、自分でも思うところです。尖っていたと言うのか、あの頃の私は子供にも程があったなと」「あの頃の私にとって乃木坂という枠はとても広く感じていて、自分がなんだかわからなくなったときもありました」「先輩と何気ない会話を共にしたり、ふざけてみたり、そんな今の私がいることを知ったら、当時の私は『嘘だ!!』と余計にイガイガしてしまうかもしれません。本当に変わったと思います」
ブログを更新した翌日、神宮球場のステージに立った林は『孤独な青空』をセンターで歌い、そのアカペラソロパートで多くのファンの心を震わせた。その声はメンバーの心にも届き、5期生の中西アルノは涙を流した。
「強張っていたものがスッと溶けていって、気づいたらボロボロ泣いてました」(中西アルノ・『EX大衆』2022年11月号)
30thSG アンダーライブの大阪公演2日目(10月4日)、林は自ら選曲して『自分のこと』を歌った。無観客だった2年前とは違い、今回はファンの前で。林にとっての決意表明だったのかもしれない。
林は、11月5日に更新されたブログで『自分のこと』を選曲した理由を綴っている。
「当時は当時で思い入れがあって大切に歌わせていただきましたが、 2年という時間は凄いですね。歌詞が 2年前に比べて真っ直ぐに刺さる、そんな感覚でした。乃木坂加入前から自分が支えられていた曲だったけれど、乃木坂に入ってからの方がこの曲の重みを実感していて、この2年の成長を見てもらいたいと思って選曲致しました」
「シニカル」と前述したミオヤマザキの『芸能界』だが、最後は、余計な装飾は外して自分自身を貫くという、というシンプルな答えにたどり着く。きっと林も「答えはシンプルなんだ」と気づいていたはず。だけど、遠回りしたからこそ、林は人間としてブ厚くなり、その歌声は説得力をともなった。林がこれから見せてくれるであろう未来がワクワクして楽しみになってきた。
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