小説 ショートショート集「みちくさ」新しいお話『お寺の石』をアップしました!!
『お寺の石』
家を出て、駅に向かう途中
いつも通り過ぎるお寺がある。
そのお寺は裏手に小高い丘を背負っている。
毎朝、お寺を掃除をしている住職さんに会った。
「おはようございます。」
私が先に声をかけることもある。
掃除の手を止めて、住職さんが挨拶を返してくれる。
「おはようございます。お気をつけて行ってらっしゃい。」
とても気持ちの良い朝にしてくれる住職さんだ。
「ありがとうございます。行ってきます。」
私ばかりではなく、お寺の前尾を通る皆に、
いつも朝に声をかけてくれる。
年配の小柄な方で、にこやかな住職さんだ。
時折、門前や、通り道の低い垣根越しで会うたびに、
挨拶や世間話を楽しくしていた。
ところが、ここしばらくのことだけれど、
その住職さんが、少し元気がないように見えた。
お顔の色が白っぽいというのか、あまり血色がよくないようだ。
私の通学路は、お寺の裏手の山のほうからきて、
お墓を過ぎて本堂があって、
門前に行く道を毎日のように歩いている。
本堂の中は見えないけれど、
それ以外のお寺の全体が見える感じなのだ。
朝見かけた時にも裏手の石に向かって、
元気のない顔をして立ち尽くしていた。
何を見ているのだろう?
住職さんの見ている山のほうを見てみた。
…はて?
あんな所にあんな大きな石があったかな?
翌日も また翌日も同じ場所に住職さんはいた。
なぜなのだろう?
どうかしたのだろうか…
ある日、帰宅途中にお寺の横を通り掛かると
「ドスン!!」
大きな鈍い音がした。
何かが倒れたようだ。
垣根越しから、その音のした方を見てみた。
見ると大きな石が倒れていた。
あの住職さんが眺めていた石だ。
お寺から住職さんが飛び出してきた。
「…あぁ…ついに…」
そう住職さんが言ったのを聞いた。
住職さんの顔色は、かなり悪かった。
声をかける間もなく、
中からやってきた人たちが住職さんを室内に連れていった。
体の具合が悪かったのか…
あんなに元気よさそうだったのに。
それになんというのか、かなり老けたように見えた…
それほど年寄りには見えなかったのになぁ…
翌朝、また通学途中に見ると、
職人さん達が倒れた石を運びだしていた。
山の一部のその大きな石が倒れた場所の穴に、
他の石の頭が見えていた。
石が倒れたあの日から一週間ほど過ぎたろうか、
その寺では盛大なお葬式がとり行われていた。
住職さん亡くなったのか…
胸が重苦しい悲しさでいっぱいになった。
檀家さんらしい人が門から数人、話ながら出てきた。
「…やっぱり手ごろな大きさになると、
ここの住職は交替になるなぁ」
…え?どういう意味だろう?
驚いた私は、その人たちは見知らぬ人だが、
何が手ごろな大きさになると、なのか聞いてみた。
「すみません、それ…どういう意味なんですか?」
すると、そのおじさん達が、
ちょっと顔を見合わせながら言った。
「もう、ずっと昔からの事なんだけれどな、
この寺の住職がやってくると、
裏山から石が、竹の子の様に生えてくる。
それが墓石に手ごろな大きさになると、
住職交替時期っていうことらしくて、
で…住職さんが亡くなって、新しい住職さんになるようなのだよ。
ちょっと不気味な話なんだけれどね。」
なんて話なんだろう…
何も言えない気分になった。
いつも通り過ぎるお寺がある。
そのお寺は裏手に小高い丘を背負っている。
毎朝、お寺を掃除をしている住職さんに会った。
「おはようございます。」
私が先に声をかけることもある。
掃除の手を止めて、住職さんが挨拶を返してくれる。
「おはようございます。お気をつけて行ってらっしゃい。」
とても気持ちの良い朝にしてくれる住職さんだ。
「ありがとうございます。行ってきます。」
私ばかりではなく、お寺の前尾を通る皆に、
いつも朝に声をかけてくれる。
年配の小柄な方で、にこやかな住職さんだ。
時折、門前や、通り道の低い垣根越しで会うたびに、
挨拶や世間話を楽しくしていた。
ところが、ここしばらくのことだけれど、
その住職さんが、少し元気がないように見えた。
お顔の色が白っぽいというのか、あまり血色がよくないようだ。
私の通学路は、お寺の裏手の山のほうからきて、
お墓を過ぎて本堂があって、
門前に行く道を毎日のように歩いている。
本堂の中は見えないけれど、
それ以外のお寺の全体が見える感じなのだ。
朝見かけた時にも裏手の石に向かって、
元気のない顔をして立ち尽くしていた。
何を見ているのだろう?
住職さんの見ている山のほうを見てみた。
…はて?
あんな所にあんな大きな石があったかな?
翌日も また翌日も同じ場所に住職さんはいた。
なぜなのだろう?
どうかしたのだろうか…
ある日、帰宅途中にお寺の横を通り掛かると
「ドスン!!」
大きな鈍い音がした。
何かが倒れたようだ。
垣根越しから、その音のした方を見てみた。
見ると大きな石が倒れていた。
あの住職さんが眺めていた石だ。
お寺から住職さんが飛び出してきた。
「…あぁ…ついに…」
そう住職さんが言ったのを聞いた。
住職さんの顔色は、かなり悪かった。
声をかける間もなく、
中からやってきた人たちが住職さんを室内に連れていった。
体の具合が悪かったのか…
あんなに元気よさそうだったのに。
それになんというのか、かなり老けたように見えた…
それほど年寄りには見えなかったのになぁ…
翌朝、また通学途中に見ると、
職人さん達が倒れた石を運びだしていた。
山の一部のその大きな石が倒れた場所の穴に、
他の石の頭が見えていた。
石が倒れたあの日から一週間ほど過ぎたろうか、
その寺では盛大なお葬式がとり行われていた。
住職さん亡くなったのか…
胸が重苦しい悲しさでいっぱいになった。
檀家さんらしい人が門から数人、話ながら出てきた。
「…やっぱり手ごろな大きさになると、
ここの住職は交替になるなぁ」
…え?どういう意味だろう?
驚いた私は、その人たちは見知らぬ人だが、
何が手ごろな大きさになると、なのか聞いてみた。
「すみません、それ…どういう意味なんですか?」
すると、そのおじさん達が、
ちょっと顔を見合わせながら言った。
「もう、ずっと昔からの事なんだけれどな、
この寺の住職がやってくると、
裏山から石が、竹の子の様に生えてくる。
それが墓石に手ごろな大きさになると、
住職交替時期っていうことらしくて、
で…住職さんが亡くなって、新しい住職さんになるようなのだよ。
ちょっと不気味な話なんだけれどね。」
なんて話なんだろう…
何も言えない気分になった。