『理科系の作文技術』

2011-07-24 21:35:49 | お奨めの本
木下是雄著『理科系の作文技術』中公新書

 1981年初版で、今年で70版を記している。

 たまたま読んだ 井上ひさし著『日本語教室』新潮新書の本文の冒頭に出てきた本だ。「素晴らしい本ですので、ぜひ買って読んでみてください」とあった。

 著者の木下氏は物理学の教授だ。自分の学生に英語で論文を書かせようと指導してもうまく行かなかった。実は日本語を知らないから英語をかけなかったことが分かったそうだ。この本の中では、他人に読んでもらうものを「仕事の文書」と呼び、メモから原著論文や論説に到るまでの書き方について述べている。最後は学会講演の要領についても説明している。「理科系」となっているが、仕事全般に共通の記述の仕方だ。目指しているのは無駄なことを省いて論理の通った構成の文章なので、結果的に英語にもしやすいものになる。

 eメールが使われ、スライドもPCでパワーポイントで簡単に作れる今とは、書かれた時代が異なる。でも、全般の内容は、井上ひさしがいうように「素晴らしい」。すでに、いろんな人が薦めているロングセラーだ。理系、文系に関わらず、今の時代こそ、読んでおくべき本だ。

 
 日本語の記述に関連することで、通訳の視点から少し話をする。通訳の学習では、日本人の日本語の使用の傾向や特徴を勉強する必要がある。話者の口から出てきた日本語はそのままでは訳せないことが多い。実際、通訳研究の中でも、日本語に関連した論文もある。大東文化大学大学院の通訳プログラムの修了生の中に、通訳の観点から、日本人話者の発話の特徴を修士論文のテーマにした者もいた。実務に就いたとき、とても有用であったようだ。
 
 
 

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