持って行く本その他

2011-06-12 10:10:08 | 国際会議の通訳
 午後、ダーバンへ出発する。香港まで4時間、その後、ヨハネスブルグまで13時間、そしてダーバンへ1時間。中継も含めて20時間ぐらい。往きは会議資料の読み込みので終わる。帰りのために持っていく本を選んだ。
 アスキー新書の『看護崩壊』と『医療崩壊の真実』。この2つの本は、ネットでもいろいろな人が紹介している。

 もう1つは、Lynn McDonald(2010):"Florence Nightingale at First Hand", Continuum UK.
 秋に、フローレンス・ナイチンゲールのシンポジウムの通訳をする予定だ。そのための準備の1つとして読む。実はこの通訳をとても楽しみにしている。
 
 ナイチンゲールの『看護覚え書』(Notes on Nursing)は看護を学ぶ者は必ず最初に学ぶものだ。「看護とは」と説明される最後の「患者の生命力の消耗を最小にするように整えること」の部分は、私の頭の中に、今でもすぐに取り出せるように記憶されている。

 私が通訳者になって、驚いたのは、医師がナイチンゲールに関心をもっていることだった。ある小児科の大学教授は、邦訳されている著作をほとんど読んだと言っていた。医師が持つ「看取り」への関心と、ナイチンゲールの医療へ大きな見方への興味のようだった。

 看護を1つの専門職に引き上げただけでなく、ナイチンゲールにはいろいろな側面がある。国際的な看護の文献や会議で現在、よく言われるのは、「イノベーター」、そして「ファイター」。19世紀半ば、英国陸軍の野戦病院の兵士の死亡率を、換気や清潔など基本的な生活状況の改善で激減させた。それまで全く使われていなかった数字を使って告発し、英国政府に改善させたのだ。死亡者を母集団で割った簡単な統計だったが、今日、看護研究で積極的に使われる高度な統計解析も、実は最初に使ったのがナイチンゲールだった。統計を根拠にした記述をエビデンスにして政府に掛け合い、病院環境の改善に予算を配分させた。当時の軍を始めとした政府は男性社会。貴族出身であったのでそれなりの働きかけのルートは持っていたが、それでもすごい実行力である。
 強烈なロビイストという人もいる。
 
 国際的な看護の文献や会議では、いかに研究成果を看護のための政策変更に使っていくのか、議論されることが多い。また、そのような研究テーマが取り上げられる。先日のICNのダイアナ・メイソンがいっていた「研究、それだけでは十分ではなく政策変更に使われなければ」ということだ。そんなことは誰もしていない19世紀半ばにやってのけたのがナイチンゲールだ。そのために、メディアをどう使おうかと考えた人でもあった。

 この本の作者は、看護学者ではない。社会学者だ。世界に散らばるナイチンゲールの資料をほとんど収集して分析している。だから、とても関心がある。帰りの飛行機の中で読みきることはできないだろうけど、持って行くことにする。
 今度のブログの更新は、21日夜帰ってきて以降になる。
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