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靴紐の結べない女1

加奈子は電車で通勤している。毎朝7時7分、家から12分歩いた駅から乗り込み通勤 その日は大雨でいつに無く混んでいた、学生や会社員でいっぱいだった、通勤時間帯なので小さい子連れやお年寄りの乗客は見当たらない。

加奈子は通勤の混雑に対応するため真っ白なスニーカーをいつも愛用している。皮紐のついたバックスキンのおしゃれなやつだ。うちを出る時にきつく結んだ この革紐がほどけている。雨水も靴の先に浸みている、いつも前から2両目の入り口付近に乗り込んで吊革を持とうとする頃に雨の日で無くても左の靴紐がほどけて来る。混んでいる電車の中で屈んで結び直す訳にもいかず気にしつつも踏まれない様40分先の駅まで乗り継ぐ。


その日は強い雨が降って床は乗客の持ち込む雨水で汚れていた、二つ目の駅でたまたま目の前の座席に座っていた中年の男性が席を立ち降りて行った、靴紐も気になっていたのでその席に加奈子は座った。

混雑した乗客の合間、タイミングを見ながら靴紐を結び直そうとするがなかなかそれが出来ない。
次の駅で乗客が又なだれ込んで来た、前かがみなどできる状態ではなくなった、ふと目の前を見ると場違いと思えるお年をめしたおばあさんが乗客から押されながら加奈子の靴紐を見下ろしている。

加奈子は座った状態に恐縮さから胸が痛い、思い切ってそのお婆さんにどうぞと言いながら席を立った、
お婆さんはいいですよ。あなたが座ってなさいと言いながら座ろうとしない。

加奈子は混雑した車内でおばあさんに座って欲しいと願った、お婆さんは靴紐のことも有り座ろうとしない。そこで加奈子は私は次の駅で降りるからどうぞとお婆さんに声をかけ、次の駅で降りた。

お婆さんはありがとうございましたと言いながら席に座った。


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