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靴紐の結べない女2

加奈子は今まで一度も降りたことのない駅で降りた、素早く靴紐を結び直し降りた電車の後方次車輌の扉から乗り込み扉の脇に佇んだ、殆どの乗客は加奈子のその様子には気づかない、

又加奈子も誰にも気付かれたく無い、お婆さんは雨の降る中混雑していた電車の中で辛かったのか、
ホッと息を吐いた、おじいさんの持病が悪化し大きな病院まで薬をもらいに行くため朝早くから出かけたらしい。しばらくすると、うとうとし始めている。

加奈子は靴紐もしっかり結んでお婆さんへ席も譲り雨が降っているにも関わらず少しだけ爽やかな気分になった。しかし隣の乗客の濡れた傘から滴り落ちる雨水が加奈子の靴に垂れている。身動き出来ない状態でどうしようもない、又憂うつになってくる。

次の駅はまちの駅、乗客はかなり降りるはず、駅に着くと乗客の半数近くが降りる。多少乗り込む客もあるものの座席に座ることが出来た。一安心したところで靴先の水濡れが気になって来た、中まで浸み込んでいる。ソックスも濡れている。替えのソックスを持って来てないことを後悔。

周りの乗客の中にもびしょ濡れの人もいた、そろそろ降りる駅、まだ雨は止んでいない、降りる身支度をしながら定期カードの位置を確認する、扉が開き降りようと扉まで歩いて行くと先ほどのお婆さんが前の車両から降りてホームを歩いて来た。

やばい、見つかってはいけないととっさに思い、やり過ごそうと車内で立ち止まった、車掌の笛がホームに鳴り響き扉がゴロゴロとモーター音を出す。扉が閉まるぅ!、加奈子は勢いよくホームへ飛び出した。

お婆さんと鉢合わせ状態でぶつかってしまった何しとんじゃい、我!
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