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クロノ太陽・・・ 完

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健一だよ。」と答えた。
「君はもとの世界に帰れたのかい?」
「帰りました。けどその後、死んだみたいです。」
「すまない。俺がそのままその時代に居れば、君は死ぬことはなかったのに。」
「いいえ、僕はあなたに感謝しています。僕の大切な人たちを救ってくれたのですから。」と言うとその光はしだいに弱くなりはじめた。
「もう往かなければなりません。ほんとうにありがとう。・・」
すると光は消え、健一は再び眠りについた。
 ものの十分ぐらいで目が覚めた。たしかにさっきは時代を超えた健一にあったと思ってはみたが夢だったような気もした。だが確かにこの時代に帰ってきたことは紛れもない事実だ。
 診察の時間がきて、MRIなどの検査をすることになり検査室へ、午後からは検査の結果を聞いた。特に問題ないとのことで明日、退院の運びとなった。
「また、気になることがあれば一週間後、通院してください。」と医師が言った。明日退院ともなれば、いろいろ大変かと思ったが、病室の荷物はすでに片付けられておりガランとしていた。
「看護師さん!俺の荷物は?」と尋ねると、
「奥さんが片付けておられましたよ。」とかえってきた。
「なんと気が早いのか・・・」健一はこれまでの出来事は夢で現実には何もなかったような気がしてきた。そう、何一つ証拠がないのだから夢だったと思うほうが合理的ではあった。
 そして翌日。健一が退院の準備をしていると車椅子に乗った老人と付き添いの人が尋ねてきた。年齢は90歳を超えているようであった。だが高級のスーツに身を包み、付き添いとは言っても、まるでボディーガードのようにみえた。
「何か御用ですか?」と健一が尋ねると、老人は目に涙をためながら答えた。
「健一君、私だ。柳川だよ。柳川中佐だよ!」弱々しい声だったがはっきりとした口調で言った。一瞬、健一の頭の中が真っ白になった。そして夢と思い込もうとしていたことが現実としてここに現れたのであった。
「あなたが柳川中佐だとすると、どうして僕がここに居るとわかったのですか?」と健一は疑問に思った。
「まず、私が君と同じ名前の人を探して二十年、そして、二週間前の事故を新聞で見た。私の部下に調べさせたら、どうも昭和十六年十二月八日の事故と同じくその後、落雷で意識不明とのこと。私はこの人物だと直感した。」
「でも僕は昭和二十年八月九日に原爆で吹き飛ばされたことは知っていましたか?」
「ああ~、君が飛び出した後に古屋巡査が後を追い、私は熱線と爆風を壕の中で収まるのを待ち、君が倒れているので病院へ、だが君は意識が少しあったが私のことは知らないと泣いていた。そして息を引き取った。このとき私は君が未来に帰ったと確信したんだよ。それから君の言ったことを信じて実行してきて柳川コンツェルンを築き上げた。全ては君のお陰だ。」
「では、僕があの時代いたのは事実だったのですね。僕は夢でも見ているのかと思いました。」
「では、もうひとつの証拠にこの時計に見憶えがあるだろう。」と山本長官から貰った時計を健一に手渡した。
「大丈夫だよ。それは私が長官に貰っていた物で君のしていた物はうちの財団の博物館に原爆の資料として保管しているから放射能に汚染されてはいない。」
「これで確信が持てました。ありがとうございます。」
「とんでもない、君のお陰で莫大な財産と地位、名誉も得ることが出来た。感謝しているよ。それとこれは些少ながら君への感謝の気持ちだ。取っといてくれたまえ。」と柳川は小さな包みを健一に渡した。
「今日は君に会えて嬉しかったよ。困ったときはいつでも尋ねてきたまえ、ああ~、それにもうひとつ芙美のことだが二十年前に亡くなった。君にもう一度会いたがっていたよ。では失礼するよ。」
「お元気で。」と二人はお互いの存在を確認するかのように再会し、別れた。健一はさっき貰った包みの中を確認すると一枚の小切手と手紙が入っていた。手紙にはいくらでも好きな金額を書いてくれと記してあった。
 そんなところに妻の喜代が帰ってきた。
「誰かお客さんだった?」
「うん、古い知り合いだよ。」と言うだけだった。
「今日は退院祝いにパァ~と外で食べるか?」
「いいわね!」と、
「でも、お酒は控えてね。退院しても、まだ糖尿は治っていないんだから。」
「わかったよ。でも、もぐらを一杯だけ飲ましてくれ。それだけでいいよ。」喜代は、「はいはい。」といって病院の支払いを済まし町にでた。
 町はすでにクリスマス一色になっていた。
「なあ!俺、会社55歳で辞めてもいいかな?」
「ええ~、あなたの人生でしょう。好きにしていいわよ。」
「何か、そうアッサリ言われると気が抜けちまったよ。」と二人は笑いながら歩いていると歳末助け合いの寄付を募る人たちがたくさんいた。健一は柳川に貰った小さな包みをそっとその中に入れた。
「ありがとうございます!」学生のボランティアの子が元気に声をかけてくれた。
「珍しいわね。あなたが寄付なんて?」
「今日は気分がいいから!」と答えてふたりは夜の師走の町に消えていった。

終わり。






長い間・・・・・ありがとうございました。改めて読んでみると素人の作品の割には面白く出来ていました、次の作品も おねだりして読んでみたいと思います。

次回からは ばおばぶの作った作品「きらりと輝く海の下で」・・・・童話を掲載します。
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