小さな鯖に関するよしなしごと。
いや、これは結構大事な話。そして、長い長い話。
少し前に直売所で販売する魚を仕入れに定置網に行ったときこと。
今日は直売所でも人気のイワシが網に入ったと聞き、期待していた。
ところが、選別が終わるとそれはイワシではなく小さな鯖だった。
このサイズの鯖は人気が無い。
漁師さんが値段がつかないのでいくらでも持って行っていいという。
このサイズの鯖は侮蔑の意味も込めて「ローソクサバ」と呼ばれ、市場では非常に安く流通する。
水産加工会社や養殖業者の餌原料などに使われている。
安くても市場に出荷すればいいと思うだろうが、ここは離島。
最寄りの産地市場である境港までの運賃と発泡スチロールと氷の経費を引くと、
出荷すればするだけ赤字になる。
大量に仕入れる加工業者などへ出荷する魚種では、1tタンクにまとめて水氷をして出荷する
ことが可能だが、これは市場担当者が売れると判断した場合に限る。
なおかつ、物流の問題もある。
海士から本土へは運送業者の定期便は毎日なく、出荷量が少ない場合はフェリーに荷物だけを載せることになるのだが、
荷役の時間とマンパワーの都合でタンクを直接のせることが出来ない。
つまり、タンク出荷するにはトラックの運賃を出しても利益を見込める量の荷物があるということが条件になるのである。
魚が獲れた段階では出荷できるかどうかが確定しないのである。
こんな事情で、悲しい話だが獲った魚を海に帰さざるを得ないケースがある。
この話は「離島は大変だね」とか「何とかできたらいいのにね」という感想を呼びやすい。
なんとかししたいと思っていた自分ですら、納得はしないまでもその現状を受け入れつつあった。
しかし、大量の海に帰される(もう生きていない)鯖を目の当たりにし、
海に帰すと口にした漁師さんの目を見た時、本当になんとかしなきゃと思った。
資源の持続可能な利用という観点から見ると、小さな鯖はとらずに大きな鯖だけを取るべきだと思う。
しかし、小さな鯖が逃げれるように網目を大きくすると細長い体型の金になる魚であるアジやイワシ、
カマスやトビウオなどみんな通り抜けて行ってしまう。
漁業者が自分だけ資源管理に配慮をすることにインセンティブを持てない(が見えにくい)現状では、
新しい網を購入するという多額の投資をして水揚げが下がる見込みの変更を行うということは現実的ではない。
ではどうするべきかを考えた時、獲れた資源を無駄にせず活用して体力を蓄え、
理想に向かって動いていくことが必要だと思った。
と、小難しい話を書いたが簡単に言うと
獲れてしまった魚を捨てるのはもったいないし辛すぎるので、その資源を利用して生産性の向上につとめつつ、
中長期的には資源保護とさらなる「質の漁業」への転換によって利益確保と事業の持続を目指すということである。
これまで「あすあま(明日の海士をつくる会)」ではこういった未利用資源の活用とその周知を目的として
島内の各イベントに出店してきた。
ビアガーデンでは小さな鯵をカレーフライにしたり、時期外れの白いかをマリネするなどして好評を得た。
キンニャモニャセンターの創業祭ではカワハギの「かーすっぽバーガー」。
昨年の産業文化祭では鯵を使った「たねてん」。
これまでの経緯を踏まえ、今後は未利用資源を活用する仕組みづくりを目指して取り組むことを目標にし、
引続き周知と提案をすることにした。
だがその前に、根本的な部分で自分が感じた「なんとかしなきゃ」をメンバーで共有すべく、
定置網漁に同行させていただくことをお願いした。
AM5:45崎漁港集合。
漁場に向かう男たちの背中。
ブリッジで舵を取るのは元大工さん。
朝焼けと海。
漁場につき、ロープで船を固定。
2艘で網を手繰りながら狭めていく。
うわー、大漁じゃー!
どっさー!!!!!!!!!!!!!!!!
港に戻って選別作業。この日はタンク出荷。
獲物を狙うゲストたち。
選別が終わった小さいサイズの鯖が次々とタンクに入れられる。
サバどっさり。
小さくても美味しいし、捌くのが簡単なのも鯖のいいところ!
開いて塩して。
しめ鯖と、塩鯖と、味噌煮と、おすそ分けと。
この日一番の大きさの鯖を酢で〆た。
この時期の大きい鯖ならそろそろ脂がのっているはずだがこちらは控えめ。
それでも十分美味しい。
脂を楽しむよりも出汁の出やすさや身の香りを引き立てる調理法がむきますね。
今年の産業祭では、この鯖を使ってツナ(ツナはマグロの英語表記)的なものを作って
美味しく食べていただこうと思っています。
未利用資源についてお知らせするペーパーも作りますので
ぜひこの機会に一緒に考えてください。
宜しくお願いします。