前回の続き。
2022年の3月終わりごろ、私たちは約11年半暮らした島を離れて
岡山県の吉備中央町という町に移り住むことにしました。
その変化にはいくつかの側面がありますが、まずは仕事に関していうと、
「ワイン農家」になることを目指して新しい生活を始めます。
畑でブドウを育て、そのブドウでワインを醸造する。
そして出来上がったワインを自ら販売していきたいと考えています。
とはいえ、そのワインが出来上がるのは早くても5年後。
いろいろなことを学びながら、キャリアがスタートする頃には40代も半ば過ぎ。
そこから一生続けることになる仕事を、今から始めようとしています。
ワインを造りたいと思った一番大きなきっかけは、2019年に3か月だけ暮らしたフランスで見た光景でした。
地域の中にワイナリーがあり、友達が集まり、美味しいフードと音楽がある。
ワインを通じて国籍も年齢も性別も関係なく人と人がつながれる瞬間は本当に輝いていました。
もちろんそれだけではありません。
海士町で魚の仕事をしてきた中で、自分の関心が「いかに旨い魚を食べるか」から「地域の食」へと
広がってきたことを実感していたのです。
その結果が「給食」だったり、「まるどマーケット」でした。
地域に暮らす人がそれぞれの特技を発揮して作り出した「食べ物」が、さらに混じりあってその「地域の食」を作っていく。
今度はその様々な食を包み込む存在である「酒」、それもワインを造ってみたいと思ったのです。
「地域の食」には土地の風土が大きな影響を与えることは間違いないのですが、その上に築かれた人の営みにこそ
面白みがあるなーと思っています。
そして、「職人」的な働き方の面白さに気がついたことも大きな変化でした。
水産加工の仕事では、先人たちが積み上げてきた知識を踏まえたうえで、最も美味しくなる仮説を立てます。
その結果を観察し、(要するに食べるわけですが)また仮説を立てて検証する。
いつまでも終わりのない探求が、どうやら好きみたいです。
ワインは原材料が「ブドウ」だけ、たった一つという究極にシンプルなお酒です。
しかし、だからこそ「営み」が大切になってくる。
そんなところにワクワクしています。
まだまだ先の長い話ですが、将来の夢は「ワイナリーに併設したB&B的な宿(シャンブルドット)で
お客さんと一緒に地域の食を味わいながら旅の話を聞くこと」です。
30歳の時、海士町に来る前に夢見ていた景色は
「仕事帰りに釣り糸を垂れ、釣った魚を捌いて妻と晩酌をする」でした。
この夢は100回くらい実現したので、そろそろ次の夢に向かって行きたいと思います。