12月12日(日) 「天使の記憶」(ナンシー・ヒューストン著)
物語は1957年のパリから始まる。フルート奏者ラファエルは、家政婦として雇ったドイツ人娘サフィーにたちまち一目惚れしてしまう。彼女は何事にも無関心無感動な娘だったが、ラファエルは彼女と結婚する。息子エミールが誕生した後も、サフィーの振る舞いに変化はなかった。ある日、楽器修理職人アンドラーシュと出会った瞬間に、彼女は激しい恋に落ちる。密会を重ねるふたり。そうとは知らず、ラファエルは芸術家として成功する。やがて、ふたりの関係は偶然ラファエルの知るところとなり、ひとつの痛ましい悲劇が彼らを襲う。
ストーリーは典型的な三角関係。しかし読み手には、単なる三角関係以上の「物語」をこの小説のなかに見つけるだろう。それは、登場人物たちが運命的に抱えている、民族や国家の「歴史」という大きな物語なのである。そのなかにあっては、恋愛は常に第一義ではない。彼らは「大きな物語」から逃れ、自由気ままに恋愛することはできないのである。
12月14日(火) 「なぎさ」(山本文緒著)
故郷を飛び出し、静かに暮らす同窓生夫婦。夫は毎日妻の弁当を食べ、出社せず釣り三昧。行動を共にする後輩は、勤め先がブラック企業だと気づいていた。家事だけが取り柄の妻は、妹に誘われカフェを始めるが。
12月17日(金) 「自転しながら公転する」(山本文緒著)
東京のアパレルで働いていた都は母親の看病のため茨城の実家に戻り、地元のアウトレットのショップで店員として働き始めるが、職場ではセクハラなど問題続出、実家では両親共に体調を崩してしまい……。恋愛、家族の世話、そのうえ仕事もがんばるなんて、そんなこと無理! ぐるぐる思い惑う都の人生の選択から目が離せない、共感度100%小説。
12月20日(月) 「時のかさなり」(ナンシー・ヒューストン著)
ナチス統制下のドイツから、カナダ、イスラエル、そしてブッシュ政権のアメリカまで。四代にわたる六歳の子供たちが語りだす、ある一族の六十年。血の絆をたどり、絡まりあう過去を解きほぐしたとき明かされたものは、あまりに痛ましく哀しい真実だった――。フランスで二〇万部突破、魂を揺さぶってやまない最高傑作長篇。
12月23日(木) 「ブラックウェルに憧れて」(南杏子著)
医大の解剖学実習で組まれた、異例の女性だけの班。仁美、早紀、涼子、恵子は、城之内泰子教授の指導下、優秀な成績で卒業し、医療の道を歩む。だが、前途には無数の壁が……。そして教授が胸に秘めていた真実とは。現役医師が描く切実な人間ドラマ。
12月30日(木) 「最終飛行」(佐藤賢一著)
世界中的ベストセラー『星の王子さま』の作者サン=テグジュペリ。
彼は作家であると同時に、飛行機乗りでもあった。
純粋で、かつ行動的なサン=テグジュペリは、ナチスドイツ占領下でドゥ・ゴール派とヴィシー派の政治抗争に巻き込まれる。苦渋の選択の末に渡ったアメリカで書き上げたのが、自身唯一の子ども向け作品『星の王子さま』だった。そして、念願の戦線復帰が叶い、ナチスドイツとの戦闘に復帰。危険な偵察飛行を繰り返し――。
*ナンシー・ヒューストンの2作は再読です!
2021の紹介は終了です 次回からは2022
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