9月13日(金) 「ゴッサムの神々」 (*リンジー・フェイ著)
1845年、ニューヨーク。火事で顔にやけどを負ったティムは、創設まもないNY市警察の警官になった。ある夜、彼は血まみれの少女とぶつかる。「彼、切り刻まれちゃう」と口走った彼女の言葉どおり、胴体を十字に切り裂かれた少年の死体が発見される。だがそれは、街を震撼させた大事件の始まりにすぎなかった……。不可解な謎と激動の時代を生き抜く人々を鮮烈に活写した傑作。
血に濡れたネグリジェ姿で売春宿から逃げてきた10歳の少女、バード。馬車に乗った黒頭巾の男が子どもの遺体を街外れに埋めたらしいという彼女の証言によって、ティムは19もの子どもの遺体を発見してしまう。彼らの多くは、胴体を十字に切り裂かれていた……。宗派対立、アイルランド系移民排斥などを背景に、苦難に負けず「前に進みつづける」人間たちの勇姿を描いた雄篇。解説=日暮雅通
「著者フェイは当時の実話や実在の人物をアレンジしながらうまく紡いでいる。しかも単なる黎明期の警官物語でなく、深刻な社会状況を背景に、一筋縄でいかない兄弟の確執と、火傷で顔の変わってしまった主人公の思い人への心理、ニューヨークという”街”の描写などをからめた、奥の深い、バランスのとれた読みものにしている」(解説より) 興味深く読み進めることができました。
本書はすでに続編が書かれており、最終的には三部作になる予定と聞く。楽しみ待つことにする。
*1 2007年、女優をしていた27歳のときに切り裂きジャックとシャーロック・ホームズを題材にした長篇を書くという契約で、出版社から10万ドルという異例の前払い金を受け取る。その後執筆したDust and Shadowで2009年デビュー。本書は2作目でありながらMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長篇賞の最終候補作になった。シャーロキアンで、いくつかのホームズ・パスティーシュを雑誌に発表するなど精力的に活動している。
9月15日(日) 「緋色の迷宮」 (トマス・H・クック著)
15歳の息子に少女誘拐の嫌疑がかけられたとき、父親はどんな煉獄に投げ込まれるのか。まさかそんなことはという心許ない信頼と、息子が実はどんな人間なのか全く理解していなかったという恐怖……。息子だけでなく、妻、父、兄――身近な人間にも隠された秘密があるとしたら……。エドガー賞受賞作家の最新ミステリは、「雪崩を精緻なスローモーションで再現するような」と評される作風に磨きがかかる会心作。最後の最後に、想像を超えるどんでん返しが待っている!
「正直いって、辛く哀しい小説である。読後感は苦く厳しいけれど、それでも随所で語られる諦観は人生の真実を照らし、絶望感を抱く者には何がしかの慰謝を与えるし、幸福と思いこむ者にはいずれ訪れる絶望のレッスンになる。それほどクックの凝視は深く、強く、切ないのである。クックを読め!」(2009年10/29 朝日新聞から抜粋 池上冬樹評)
このミステリーがすごい 海外編
- 『過去を失くした女』 1992年 第2位
- 『熱い街で死んだ少女』 1993年 第3位
- 『緋色の記憶』 1999年 第2位
- 『夏草の記憶』 2000年 第3位
- 『死の記憶』 2000年 第7位
- 『夜の記憶』 2001年 第7位
- 『心の砕ける音』 2002年 第5位
もっと読んでみたい作家である。
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