懐中をまさぐり

2025-01-13 | 

懐中をまさぐれば

 銭は無いが時計在り

懐中をまさぐれば

 友は居ないが敬愛が在り

懐中をまさぐれば

 色慾は無いが慈愛が在る

 

俗世を捨てれば、社会に捨てられ

銭は無く、他人はあますぎると妬みを云ふ

他人の起ち上げた訳の分からぬ秩序を担ぐ、末端に成らねば、人として扱れず

愚生をお零れの分配に組み込んで下せえ、と嘆願せねば

(或いは、せめて其の格好を認めさせねば)

価値を受容されぬ

 

懐中を飽和する程の紙幣で、

もうまさぐれんよ

しかしわたくしは 道に迷うた人の為に是れに地図を書いて渡してやり、

人生に迷うた人の為には是れに詩を書いて渡してやり

愛に迷うた人の為ならば、是れにラヴレターを書いて与えてやり

銭が無い者には何も書かずに渡してやる

厖大な富を失った所で、

懐中をまさぐり、まさぐって、やっとの

一粒の飴を行き摩りのこどもにあげてやり

人は空虚と嗤うだろうが

捨てられたとて

此処をまさぐって、生きてゆきたい。



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