ハルさんの好きだった桜の木はもうない。茶道の先生もいない。だけど、茶道をずっとやっていて指導も得意だったハルさんにとって、お茶会を開くことは喜びにはならないだろうか、と考えたけど、福祉の分野は何もわからない僕にはいい考えは浮かばなかった。
「得意な子に任せる」と言ったお父さんのコトバを思い出した。でもこれはアネキの得意分野ではない。いろいろ考えて、ワタナベ君のことを思い出した。ワタナベ君が福祉学科に行っていたかどうかは思い出せないけど、彼ほど福祉に似合う人は思い当たらなかった。
幼稚園バスが来る前に、想定外の人が赤い車で来た。アネキだ。ユリナちゃんもあんなちゃんたちと同じ幼稚園に通っているけど、バスの路線がちがうはずだ。
アネキは車から降りると、まっすぐ僕のまえに歩いてきた。着ぶくれた僕となでしこの店をジロジロと眺めて、「私のPOPはこんなところに貼られているんだ」と言って笑った。
久しぶりのイラストが小さい店にはられていてガッカリしたんだろう、と僕は思った。でも、ちがうみたいだ。
「おいしい和菓子を作れるんだから、販促のしがいがあるね」とアネキは言って、ガラス戸の木の枠をなでた。
ユリナちゃんから、幼稚園生にイラストを募集した僕の話を聞いたというアネキは、店内を見回して何も貼られていない木の壁に目をつけた。
「絵もない、花もないじゃ売れない居酒屋みたいだもんね。あの壁に子供たちの絵を貼ろうよ」
「得意な子に任せる」と言ったお父さんのコトバを思い出した。でもこれはアネキの得意分野ではない。いろいろ考えて、ワタナベ君のことを思い出した。ワタナベ君が福祉学科に行っていたかどうかは思い出せないけど、彼ほど福祉に似合う人は思い当たらなかった。
幼稚園バスが来る前に、想定外の人が赤い車で来た。アネキだ。ユリナちゃんもあんなちゃんたちと同じ幼稚園に通っているけど、バスの路線がちがうはずだ。
アネキは車から降りると、まっすぐ僕のまえに歩いてきた。着ぶくれた僕となでしこの店をジロジロと眺めて、「私のPOPはこんなところに貼られているんだ」と言って笑った。
久しぶりのイラストが小さい店にはられていてガッカリしたんだろう、と僕は思った。でも、ちがうみたいだ。
「おいしい和菓子を作れるんだから、販促のしがいがあるね」とアネキは言って、ガラス戸の木の枠をなでた。
ユリナちゃんから、幼稚園生にイラストを募集した僕の話を聞いたというアネキは、店内を見回して何も貼られていない木の壁に目をつけた。
「絵もない、花もないじゃ売れない居酒屋みたいだもんね。あの壁に子供たちの絵を貼ろうよ」