On The Road

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第7話-15

2011-01-19 20:15:00 | OnTheRoadSSS
 高槻がパチンコ店に着いても、斉藤は喧騒の中でパチンコを続けていた。斉藤の横には、玉が箱で5つ積み上げられている。
 「斉藤、もう帰るぞ」と高槻が言うと、斉藤はあきらめたように手を離す。「あと1時間続けたらもう1箱は稼げるのに」

 それがパチンコの罠だと、高槻は知っている。切り上げる時期を誤ると、損をするようにできているものだ。大学時代に罠にハマって、授業料まで使い込んで親に連れ戻された奴が1人いる。
 斉藤はお世話になったという客2人に玉を1箱ずつ振る舞い、残りの玉をカートに載せた。
 超ハイテンションの斉藤と、高槻は景品交換のカウンターに並ぶ。パチンコ店に預けてあった分と合わせて、現金にして14万円ちょっととチョコレート5つの当たりだった。

 「これってやっぱり、仕事だから会社に渡すんですよね」
 斉藤は残念そうに言った。
 「決まってるだろ」高槻は無愛想に答えて、「メシをご馳走してやるから、車に乗れ」と続けた。
 ファミレスに行こう。パチンコ店のそばのラーメン店では、パチンコで儲けた客が昼間から祝杯を上げている。この店は避けようと、高槻は思った。手柄話に花が咲いて、斉藤の職場復帰を困難にする可能性がある。
 斉藤は背中を伸ばして、腰を叩いた。若者らしくない動作に、高槻は思わず笑った。


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